コンタミ(コンタミネーション)とは?製造現場でのリスクと対策

「たった1つの小さな異物が、数千万円の損害を生む」
これは決して大袈裟な話ではなく、製造業で現実に起こり得ることです。
その原因は「コンタミ(コンタミネーション)」。
「なぜコンタミが発生したのか」「どうすれば防げるのか」、その答えを模索している方も多いのではないでしょうか。
本記事では、製造業におけるコンタミの意味から、リスク、発生原因、対策まで解説します。
コンテンツ
製造業における「コンタミ」とは?
コンタミとは、英語の「Contamination(コンタミネーション)」の略で、日本語では「汚染」や「混入」を意味します。製造業においては、「製品に対し、本来そこにあるべきではない異物や、意図しない成分が混入すること」を指します。
一般的にイメージされるのは「髪の毛」や「虫」といった物理的な異物混入ですが、それだけではありません。化学工場や食品工場における「アレルゲンの混入」や「異なる原料の混入」、医薬品製造における「微生物汚染」や「他製品の成分混入(クロスコンタミネーション)」もコンタミに該当します。
業界によって許容範囲は異なるものの、共通するのは「少しの異物が重大品質問題に直結する」という点です。特に自動車、食品、医薬品、化学、半導体などでは、コンタミ管理が生産活動の根幹といえるほど重視されています。
なぜコンタミは問題なのか?3つのリスク
コンタミが発生した際の影響は、単なる「不良品の発生」に留まりません。一度の問題がサプライチェーン全体や企業経営そのものに甚大な被害をもたらす可能性があります。ここではコンタミが製造業に及ぼす3つのリスクを解説します。
生産ラインの停止や納期遅延につながる
コンタミが発覚した場合、原因の究明と再発防止のために生産ラインを緊急停止させる必要があります。混入経路の特定、機械の分解洗浄、仕掛品(作りかけの製品)の全量検査や廃棄など、復旧までには多大な時間を要します。
この間生じる生産計画の乱れは、当然ながら納期遅延に直結。取引先への補償問題に発展するだけでなく、サプライチェーン全体に迷惑をかけるリスクがあるのです。
品質事故による製品回収(リコール)コスト
もしコンタミ製品が市場に出回ってしまった場合、製品回収(リコール)が必要となります。対象製品の輸送費、廃棄費用、返金対応、代替品の手配、そして告知のための広告費など、そのコストは莫大なもの。
特に中小規模の製造業にとっては、一度のリコール費用が会社の年間利益を吹き飛ばすほどのダメージになる恐れもあります。
ブランドイメージや社会的信用に傷がつく
金銭的なコスト以上に恐ろしいと言っても過言ではないのが、「信用の失墜」です。SNSやインターネットが普及した現代において、異物混入の情報は瞬く間に拡散されます。「部品が入っていた」「アレルギー表示にない成分が入っていた」という事実は、消費者の不安を煽り、長年培ってきたブランドへの信頼を一瞬で失墜させます。
「あの会社の製品は危ない」というレッテルを一度貼られると、ブランドイメージの回復には長い年月を要するもの。取引先との関係においても、最悪の場合は取引停止に至るリスクがあります。
コンタミの原因とは?4M+Eの視点から考える発生源
コンタミ対策を行う上で最も重要なのは「どこから入ったか」を特定することです。品質管理のフレームワークである「4M+E」を用いて発生源を考えてみましょう。
人(Man)が原因のコンタミ
よくある原因の一つとして「人」がまず挙げられます。髪の毛や衣類の繊維、汗などの生物的・物理的な異物のほか、ポケットに入っていた私物(ペンやアクセサリー)が混入することもあります。また、作業手順のミスによる原料の取り違えといったヒューマンエラーもここに分類されます。
【人由来のコンタミの例】
・髪の毛やフケ
・衣類の繊維
・汗
・作業服の汚れやホコリ
・ペンやアクセサリーなどの持ち物
・手順ミス(ヒューマンエラー)
機械・設備(Machine)
製造で用いる機械や設備がコンタミの発生源になるケースです。金属同士の摩耗による金属粉の発生、パッキンやゴム部品の劣化による破片の脱落、潤滑油の漏れなどがコンタミを引き起こします。
特に老朽化した設備や、メンテナンスが行き届いていない機械は、内部に汚れが蓄積しやすく、予期せぬタイミングで異物を吐き出すリスクが高まります。
【機械・設備由来のコンタミの例】
・金属同士の摩擦による摩耗粉(金属片)
・パッキンやゴムベルトの劣化による破片
・配管の継ぎ目のサビ
・潤滑油(グリス)の漏れ出し
材料(Material)
工場に納入された時点で、すでに原材料や資材に異物が混入していたケースです。原料自体の汚染だけでなく、梱包材(ダンボール片やプラスチック袋の切れ端)が開封時に混入することや、保管中のパレットの木屑が付着することも含まれます。サプライヤー管理が問われる領域です。
【材料由来のコンタミの例】
・納入された原料袋の表面に付着した汚れ
・段ボール片や梱包資材の切れ端など
方法(Method)
作業ルールや製造プロセス自体に問題があるケースです。例えば、清掃手順が不適切で汚れを広げてしまっている、工具の管理ルールが甘く置き忘れが発生する、メンテナンス後の確認フローが決まっていないといった「仕組み」の問題です。この場合は、正しい手順が標準化されていないことが原因です。
【方法由来のコンタミの例】
・清掃や消毒手順の甘さによる汚れ
・品種を切り替える際の洗浄時間が不足していることによる汚れ
・修理やメンテナンス後の工具の置き忘れ
環境(Environment)
製造現場の環境そのものが原因になるケースです。隙間からの虫やネズミの侵入、換気口からの砂埃や排気ガスの流入、天井の結露によるカビの発生などが該当します。また、空調の流れ(気流)が悪く、汚染区域から清潔区域へ空気が流れてしまっているケースも環境要因に含まれます。
【環境由来のコンタミの例】
・空調設備からのホコリやカビの胞子
・建屋の隙間からの虫やネズミの侵入
・天井や配管上に堆積したホコリの落下
・湿度管理不足による結露やカビの発生
製造業でのコンタミ対策
原因が特定できれば、対策が見えてきます。物理的・仕組み的にコンタミを防ぐための対策を4つ紹介します。
5Sを徹底する
「整理・整頓・清掃・清潔・躾」の5Sは、コンタミ対策の基礎中の基礎です。不要なものを現場に置かない(整理)、必要なものをすぐに取り出せるようにする(整頓)、徹底的に掃除する(清掃)ことで、異物の発生源を断ちましょう。特に清掃は、単にきれいにするだけでなく、機械の異常(ネジの緩みや油漏れなど)を早期発見するための「点検」としての役割も果たします。
【対策例】
・不要品を廃棄し、現場に私物を持ち込ませない
・工具の管理(姿置き)で紛失を即座に検知する
・清掃基準書を作成し、清掃箇所と担当者を明確にする
・始業前や終業後の5分間清掃をルーティンに組み込む
ゾーニングと動線を見直す
工場内を「汚染区域/準清潔区域/清潔区域」に明確にゾーニングし、それぞれのレベルに応じた管理を行います。人の移動(動線)やモノの流れを一方通行にするなどの工夫をすることで、汚染エリアから清浄エリアへの異物の持ち込みを防止。エアシャワーの設置や、資材の受け渡し口を分離するといった対策も効果的です。
【対策例】
・床を色分けしてエリア区分の可視化
・パスボックスを用いた物品の移動(ドアの同時開放防止)
・人やモノの動線を一方通行(ワンウェイ)にする
服装規定と入室ルールを厳格化する
人からのコンタミを防ぐため、作業着の仕様(ポケットなし、袖口のゴムなど)を見直し、帽子やマスクの正しい着用を徹底しましょう。入室時には、粘着ローラー(コロコロ)やエアシャワーの手順をルール化し、手洗いや靴の履き替えを義務付けます。また、これらのルールを形骸化させないよう、相互チェックを行う文化をつくることも大切です。
【対策例】
・専用の作業着、帽子、マスクの正しい着用(髪の毛を完全に入れる)
・粘着ローラー(コロコロ)で異物除去
・エアシャワーの設置
・手洗いの徹底や記録管理
機械・設備のメンテナンス
設備自体が異物を発生させるケースも多く、特に摩耗粉、油滴、フィルター劣化などはコンタミの原因となります。コンタミを防ぐため、「壊れてから直す(事後保全)」ではなく、「壊れる前に部品を交換する(予防保全)」へシフト。
パッキンやフィルターなどの消耗品は定期交換サイクルを定め、金属摩耗が発生しやすい箇所は定期点検項目に追加しましょう。
【対策例】
・摩耗しやすい部品の点検と早期交換
・フィルターやダクトの定期清掃と交換
・メンテナンス履歴の記録(トレーサビリティ向上)
まとめ
コンタミは業界や製品の種類を問わず、製造現場で発生し得るリスクです。異物混入の影響は不良品だけではなく、ライン停止、納期遅延、リコール、信用失墜といった経営インパクトの大きい問題へと発展するリスクがあります。
まずは、「人・設備・材料・方法・環境」を見直し、発生源を特定することが重要。対策としては、基本となる5Sの徹底はもちろん、ゾーニングによる汚染防止、厳格な服装・入室ルール、そして設備に対する予防保全を仕組み化することが、コンタミリスクを低減させるポイントです。
まずは現場を「4M+E」の視点で見直し、小さなリスクの芽を摘むことから始めてみましょう。
製造業のDXはあおい技研
株式会社あおい技研は、製造業に特化した業務改善コンサルティングを提供し、製造現場のDX推進をサポートします。80以上の製造現場での診断や改善の経験を活かし、お客様に合ったDX戦略を提案します。
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