QCサークルの進め方とは?基本の「問題解決型」を解説

突然、QCサークルのリーダーに任命されて「何から始めればいいのか」と困っていませんか?
メンバーをまとめるのも初めて、QCの知識もあまりない。
そんな方へ向けて本記事では、QCサークルの基本的な考え方と、基本である「問題解決型ストーリー」の進め方をわかりやすく解説。あわせて、よくあるつまずきポイントや、QCサークルに用いる考え方(7つ道具)も紹介します。
QCサークルとは?
まずは、QCサークルの定義や目的などから説明します。
QCサークルの定義
現場で働く人たちが、自分たちで問題を見つけ、改善するために動く小集団活動を「QCサークル」と言います。
正式には「Quality Controlサークル」の略で、日本ではトヨタや松下電器(現パナソニック)をはじめ、多くの製造業から広がりました。
最近では製造業だけでなく、サービス業や事務職でもQCサークル的な活動を取り入れる企業が増えています。
【POINT】
・自発的な活動(上からの指示ではなく、自分たちで進める)
・小さな単位のチーム(5~10人程度)
・不良品を減らすにはどうすればいいか?作業ミスを防ぐ方法は?などの問題にチームで取り組む
・PDCAサイクルを使って進める
・「報告」や「発表会」などアウトプットする仕組みがある
QCサークルの目的
「モノづくりの不良率を下げる」といったイメージが強いかもしれませんが、QCサークルの本質はそこではありません。
ポイントは以下の2つです。
■現場の力で「職場の改善」をすること
■メンバー自身の「考える力・解決する力」を育てること
つまり、職場の課題解決を通して、組織全体を底上げしていくのが狙いです。
QCサークルの進め方は「QCストーリー」と呼ばれる
QCサークルは、ただ思いつきで改善するのではなく、「QCストーリー」と呼ばれる型(ストーリー構成)に沿って進めるのが基本です。QCストーリーは、「テーマ選定→現状把握→原因分析→対策→実行→効果確認→標準化」までを順序立てて進めるためのフレームワークのこと。以下の3種類があります。
| 種類 | 特徴 | 使う場面 |
|---|---|---|
| 問題解決型 | 問題→原因→対策→確認の流れ | 現場の問題を解決したいとき |
| 課題達成型 | 達成すべき状態から手段を組み立てる | 目標はあるが明確な問題はないとき |
| 現状維持型 | 標準を守れているか、再発しないかを管理 | 今の良い状態を維持・定着させたいとき |
問題解決型QCサークルの進め方
ここでは、最もベーシックな問題解決型QCサークルの進め方を説明します。
1. メンバーを集める
まずは、一緒に活動する仲間を集めます。大事なのは「同じ職場で、改善に前向きな人」を中心にすること。
3〜10人ほどの小規模チームが理想です。
【POINT】
・最初にキックオフミーティングを開き、目的やルールを共有する
・上司に相談し、理解と協力を得ておく
・「自分たちの手で職場をよくする」という意識を全員で持つ
2. テーマを決める
次に「何を改善するか」を決めます。
例えば、作業にムダが多い、ミスが頻発している、在庫や備品の管理に時間がかかるなど。
身近な困りごとをリスト化し、効果が大きく、自分たちの力でできるテーマを選ぶのがコツです。
【POINT】
・問題を洗い出して付箋などで可視化する
・「効果が大きい」「自分たちで対応できる」を基準に絞り込む
・「〇〇不良の削減」「△△作業の効率化」など具体的なテーマ名にする
3. 現状を把握する
選んだテーマについて、今の状態をデータで確認します。
思い込みではなく、事実ベースで「何が・どこで・どのくらい起きているか」を把握します。
【POINT】
・チェックシートでデータを集める
・現場を観察して、数値や実例を記録する
・「この作業は平均15分かかっている」「不良率が3%」など
・グラフ化して「現状のレベル(出発点)」を明確にする
4. 目標を設定する
現状を把握したら、「いつまでにどこまで改善するか」を決めます。
チーム全員が納得できる目標を立てるのがポイントです。
【POINT】
・「○月までに不良率を3%→1%に改善」など、数値で明確に
・目標は現実的なレベルに設定
・全員で話し合って合意をとる
5. 原因を分析する
なぜ問題が起きているのかを、データと事実に基づいて分析します。
ここでは「QC7つ道具」などの分析手法を使うのが定番です。
【POINT】
・特性要因図(魚の骨図)で原因を分類
・なぜなぜ分析で根本原因を追究
・パレート図で重要な原因を絞り込み
・「問題の本質を見抜く」ことがこのステップのゴール
6. 対策を立てる
特定した原因に対して、どうすれば解決できるかを考えます。
この段階では、自由な発想と実現性の両方が大事です。
【POINT】
・ブレーンストーミングでアイデアを出す
・作業手順を標準化して、誰でも同じ品質を保てるようにする
・ポカヨケ(ミス防止の仕組み)を導入する
・作業環境のレイアウトを改善する
・進捗や状態を「見える化」する
7. 対策を実行する
計画を立てたら、実際に行動に移します。
実行なくして改善なし。役割分担を決めて、チームで協力して進めます。
【POINT】
・「誰が、いつまでに、何をするか」を明確にする
・進捗を共有して問題があればその都度相談
・大きな変更は小規模で試す(スモールスタート)
・実行内容を記録する
8. 効果を確認して次に活かす
実行した対策が効果を出したかどうかを測定し、結果を評価します。
ここまでで終わりではなく、「定着」と「次への改善」が大事です。
【POINT】
・改善前と同じ方法でデータを取り、比較して効果を可視化
・成功したら標準化し、他部署にも展開
・うまくいかなかった場合は原因を再分析し、再チャレンジ
・最後に活動をまとめ、発表や共有会で成果を報告
QCサークルの進め方を端的にまとめると、仲間を集め、テーマを決め、データで現状を把握し、原因を分析して改善するという流れ。
形式的にやるのではなく、「自分たちの力で職場をよくする意識」が一番のポイントです。
QCサークルに用いる「7つの道具」と「新7つの道具」
QCサークルには、「7つの道具」「新7つの道具」と呼ばれる考え方のヒントが存在します。
QCの7つ道具
パレート図
問題を大きい順に並べて、優先順位をつけるグラフです。
不良の原因や発生頻度を棒グラフと折れ線で表し、「どこに力を入れるべきか」を判断できます。
★使う場面:不良の主な原因を特定したい/「影響が大きい要因」を見極めたい
特性要因図
問題(特性)と、その原因(要因)を体系的に整理する図です。
魚の骨の形に似ていて、原因を「人・機械・材料・方法・環境・測定」などに分類して洗い出します。
★使う場面:なぜ問題が起きているのかを整理したい/チームで原因を話し合う
グラフ
データを視覚的に把握するための基本ツール。折れ線グラフ、円グラフ、棒グラフなど目的に応じて使い分けます。
★使う場面:改善前後の比較をしたい/傾向や変化を見やすくしたい
ヒストグラム
データのばらつきや分布の様子を棒グラフで表します。「どの範囲に集中しているか」「極端な値があるか」を確認できます。
★使う場面:作業時間や寸法のバラつきを分析したい/工程の安定性を確認したい
散布図
2つの要素の関係(相関)を点で表すグラフです。原因と結果のつながりを見つけるのに役立ちます。
★使う場面:「温度が上がると不良が増える」など関係性を確かめたい/データ間の相関を探したい
管理図
工程が安定しているかどうかを継続的に監視するためのグラフです。
上限(UCL)・下限(LCL)の範囲内にデータがあれば、工程は安定と判断します。
★使う場面:品質の変動をモニタリングしたい/異常が起きたタイミングを早期発見したい
チェックシート
データを誰でも簡単に記録・集計できる表。現場での観察結果を記録し、問題の発生状況を把握できます。
★使う場面:「いつ・どこで・どんな不良が起きたか」を記録したい/データを正確に集めたい
新QCの7つ道具
QC7つ道具が「現場データの見える化」に強いのに対して、新QC7つ道具は考える力や企画力をサポートする道具です。
親和図法
意見やアイデアをグルーピングして整理する方法。
ブレストで出した意見を似た内容ごとにまとめ、問題の構造を「見える化」できます。
★使う場面:漠然としたテーマを整理したい/考えをまとめて課題の方向性を見つけたい
連関図法
原因と結果の関係を線でつなぎ、問題の本質を探る方法。
「Aが起きるとBが起きる」というつながりを明確にして、根本要因を見つけます。
★使う場面:複雑に絡み合った問題の因果関係を整理したい
系統図法
目的を達成するための手段を、階層構造で整理する図。
「どうすればできるか?」を掘り下げて、実行計画を明確化します。
★使う場面:目標達成までの具体的な道筋を作りたい
マトリックス図法
複数の要素をクロス表(マトリックス)で整理する方法です。「AとBの関係が強い・弱い」など、関連性を比較できます。
★使う場面:部署・工程・要因などの関係性を整理したい
マトリックスデータ解析法
複雑なデータを統計的に解析して、関係性を数値で示す方法。マトリックス図の進化版で、より客観的に判断できます。
★使う場面:多くの要因が絡む問題を数値的に分析したい
アローダイアグラム
作業の順序や所要時間を矢印で表し、最短ルートを分析する図です。
プロジェクトのスケジュール管理にも用いられます。
★使う場面:計画を効率よく進めたい/ボトルネックを特定したい
PDPC法(Process Decision Program Chart)
計画実行中に起こりうる問題と、その対策を事前に洗い出す方法です。
「もし失敗したらどうする?」を想定して、リスク管理を行います。
★使う場面:新しい取り組みを始める前のリスク分析/トラブルを未然に防ぎたい
QC7つ道具と新QC7つ道具は、どちらも「問題を見える化する」という目的は同じです。違うのは、QC7つ道具が「データでの分析」、新QC7つ道具が「思考の整理」に重きを置いている点。
つまり、現場改善の「分析ツール」と、組織改善の「思考ツール」という関係と捉えると良いでしょう。
QCサークルのよくある課題と解決のヒント
QCサークルを進めていると、以下のような課題にぶつかることもあります。
メンバーの「やらされ感」が強い
本来、QCサークルは現場主導の自発的活動です。
しかし、上司や会社の指示で「やらなきゃいけないもの」として始めると、目的意識が弱くなってしまいます。
結果、「とりあえず活動報告書を出すだけ」の形式的な活動になってしまうパターンです。
【ヒント】
・「現場を良くしたい」「自分たちの仕事をラクにしたい」という自分ごと化を大事にする
・メンバー全員で「なぜこの活動をやるのか」を共有してからスタートする
テーマ設定が曖昧・難しすぎる
「不良を減らす」「品質を上げる」など、曖昧なテーマのままだと具体的な行動への落とし込みができません。
逆に、難しすぎるテーマ(部署をまたぐような問題)を選ぶと、現場では手が出せなくなってしまうことに。
【ヒント】
・「自分たちで完結できる範囲」にテーマを絞る
・「効果が大きく、手が届く」テーマを選ぶ
・テーマ名を具体的にする(作業手順のバラツキ改善など)
データを取らず、感覚で進めてしまう
「たぶんこの方法がいい」「なんとなく減った気がする」では、再現性も効果検証もできません。
QCサークルの強みは「事実に基づく改善」です。データがないと説得力がなくなってしまいます。
【ヒント】
・チェックシートやパレート図で現状を数値化する
・「データで語る」文化をチームに根づかせる
・数値が取れない場合は、回数・時間・件数などの「測れる指標」を作る
会議・打ち合わせだけで終わってしまう
「話し合う」ことが目的になって、実行フェーズ(Do)が抜け落ちてしまうパターンです。せっかく分析しても、行動しなければ改善は進みません。
【ヒント】
・話し合いのたびに「次回までに誰が何をやるか」を決める
・小さくてもいいから「試してみる」を優先する
・実行結果を必ずチェックし、次の改善に活かす
成果の共有・発表がない
がんばっても誰にも知られないと、モチベーションが下がってしまいます。
社内で横展開されないのも、もったいないことです。
【ヒント】
・定期的に成果を共有する場(発表会・掲示板など)を設ける
・上司や他部署に「自分たちの活動がどう役立ったか」を見せる
・成功例だけでなく「失敗からの学び」も共有する
継続できない(やり切りで終わる)
「発表会が終わったら活動も終わり」になってしまうケースです。一度の改善で満足してしまうと、QCサークルの本来の目的である「継続的改善(カイゼン)」につながりません。
【ヒント】
・活動終了後に「次に取り組みたい課題」をチームで話す
・成功した対策は標準化(仕組み化)して定着させる
・「改善を続ける文化」を会社全体で支える仕組みをつくる
まとめ
QCサークルは、ただの改善活動ではなく現場の力で職場を変える「自発的な取り組み」です。
中でも「問題解決型」の進め方はベーシックでありながら、現場での課題にフィットする手法。
メンバー選びからテーマ設定、データを使った分析と対策の実行、そして効果検証と標準化までのステップを踏むことで、改善の再現性と納得感が生まれます。
また、QC7つ道具や新QC7つ道具といった考え方は、思考や情報の整理に役立ちます。
QCサークルを通して、チームの一体感と成長を感じながら、継続的なカイゼンを目指していきましょう。
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