工場を見える化する目的とメリット4つ!具体的な方法や事例・課題も解説

工場を見える化するメリットは、現場の状況を正確にしっかりと把握できるようになることです。製造業の現場では多くの人が働き、それぞれが複雑な工程を請け負っています。工場が長年に渡って稼働する過程では、さまざまな業務が属人化・ブラックボックス化したり、非効率な業務形態のまま改善されずに進行されていたりと、隠れた課題や問題が潜んでいるものです。

工場の見える化は、現状を把握しやすい環境作りを行い、隠れた課題や問題を浮き彫りにする事で改善を進めやすくするための取り組みです。今回は工場を見える化する目的とそのメリット4つを解説します。工場を見える化する方法や課題、事例についても紹介するため、ご参考にしてください。

工場の見える化とは

工場の見える化とは、製造現場の業務内容やデータを客観的に捉えられるように、明確にすることです。具体的には、生産管理板を設置して進捗状況を一目でわかるようにしたり、在庫管理システムを導入して、リアルタイムでの在庫数把握を実現したりします。

しかし、工場の見える化の目的は現状把握をすること自体ではなく、そこから発覚する課題や問題の解消に取り組むことです。また、見える化と似た言葉に「見せる化」があります。意味を混合されがちですが、見せる化の目的は、業務内容やデータを常に見られるような状態にすることです。

見せる化によって得られるメリットは、遠隔での監視やモニタリングが容易になることであり、課題や問題を浮き彫りにしたり、改善に努めたりする活動までは含まれません。そのため可視化に近い意味合いを持っています。工場の見える化は、ただの可視化ではなく、製造現場の生産性向上を最終目的とした取り組みであることをしっかりと認識する必要があります。

工場を見える化する目的とメリット4つ

工場を見える化する最終的な目的は、工場全体の生産性向上にあります。実現すればさまざまなメリットを、経営視点でも従業員視点でも受けられます。ここでは具体的な工場を見える化する目的とメリット4つについて解説します。

工場の課題や問題が浮き彫りになる

工場を見える化すると、現場の状況を正確に把握できるようになります。現場の「ムダ」「ムリ」「ムラ」などの課題を発見し、改善策を考えられることが大きなメリットです。

例えば、設備機械の稼働データを集めて分析したり、故障が起きたらブザーが鳴るように設定し、原因究明をすぐにできるようにしたりします。

業務プロセスを社内共有しやすくなる

工場を見える化すると、客観的なデータや数値で業務プロセスを説明できるようになります。業務プロセスを、社内共有しやすくなることもメリットの一つです。業務プロセスを社内共有して標準化すれば、生産性や品質の安定性も保てるようになります。そのため工場の見える化では、抽象的な業務プロセスを誰もがわかるような状態にすることを目指します。

属人化とブラックボックス化を阻止できる

製造業の現場の大きな課題は、業務の属人化とブラックボックス化です。工場が見える化できていない状態では、各工程で独自のやり方が進行し、定着しているケースが多く見受けられます。属人的な業務進行は一見、効率的のように思いますが、特定の従業員に依存するため、欠勤や不測のトラブル時に対応できなくなることがリスクとなる場合があります。

業務のブラックボックス化も同様に、引き継ぎが難しかったり、業務形態変更がスムーズにできなかったりする問題があります。工場の見える化を行うと、業務プロセスに透明性が生まれるため、属人化とブラックボックス化を阻止できることがメリットです。

生産ラインに関する判断と意思決定がスピーディーになる

工場を見える化すると、トラブルが起きたときに迅速に対処できるようになります。各工程の状態や進捗状況などをすぐに把握できるため、生産を止めるかどうかといった重要な決定を、スピーディーに下せるようになることがメリットです。今後の対策についての判断や意思決定もスムーズになり、工場全体の生産性が格段に向上します。

工場を見える化する方法

工場を見える化するときは、「人の作業」と「生産設備」の両方で進めていきます。特に、人の作業には3Mが潜んでいる可能性が高いため、改善効果の期待値は高くなります。ここでは工場を見える化する方法を解説します。

人の作業の見える化

従業員の作業時間や作業内容は、意外と管理が行き届いていないものです。作業時間や作業内容を見える化すると、生産性の出来高を把握できるようになり、ばらつきも明確になります。

作業時間や作業内容の管理は、製造日報やチェックリストの記入を義務付けることで実施可能ですが、見える化するためには少し工夫が必要です。製造日報や各種チェックリストの紙データを電子化し、タブレットで記入・閲覧できるようにしたり、音声入力システムを活用したりすると、作業者の負担や管理・分析が容易になります。見える化では、いつでも誰でも知りたい情報を、把握できる状態にすることが大切です。

生産設備の見える化

生産設備の見える化では、既に稼働しているさまざまな設備の数値を取得できるようにします。具体的な方法は、生産設備にセンサやカメラを取り付けてIoT化することです。生産設備をIoT化できれば、画像を自動認識したり、ログから数値を簡単に取得したりできるようになります。生産設備の故障やエラーも、事前に予測しやすくなるメリットもあります。

工場を見える化するときの課題


工場の見える化は、大きなプロジェクトになることがあります。既存の設備ややり方を尊重しながら、従業員に負担をかけないように進めていくことが大切です。工場を見える化するときの課題について解説します。

古い設備からのデータ移行

工場の見える化では、古い設備からのデータ移行が必要になります。
やはりその場合、課題は古い設備はデータがデジタル化されていないケースが多いことです。設備にIoTセンサなどを取り付けたり、カメラを設置して画像認識したりといった、デジタル化のための補強が必要になります。

費用や時間のかかることであるため、工場の見える化の大きなネックになることが問題です。このような費用面の問題を解決するなら、補助金制度の活用がおすすめです。国や自治体では、製造業をサポートするための補助金制度が、いろいろな形で提供されています。IoT化は国をあげて推進されている取り組みでもあるため、まずは補助金のサポート受けられないか確認してみてください。

根拠数値にばらつきが生じる

工場の見える化では、各部署の評価指数(KPI)も見える化する必要があります。この問題は、各部署で計算方法が異なるケースがあり、根拠数値にばらつきが生じてしまうことです。根拠数値を見える化するためには、誰が見てもわかるように、計算方法を統合させなければなりません。プロジェクトチームなどを立ち上げ、根拠数値の計算方法を統一できるよう取り組みましょう。

工場の見える化の事例

工場の見える化に成功し、課題や問題の改善や生産性向上を実現できた企業はたくさんあります。工場の見える化の事例をご紹介します。

遠隔モニタリングシステムの開発で生産ロスを見える化

自動車部品の製造会社では、遠隔モニタリングシステムを開発して、工程を監視するセンサや設備からの信号を自動で収集できるようにしました。生産にかかった時間や停止時間を24時間記録できるようになったため、生産ロスの見える化に成功したのです。見える化によって明確になった生産ロスの原因を対策することで、生産性が30%向上しました。
参考出典:https://www.emdustrial.net/the-secret-to-improving-productivity/#i-3

センサの新設で温度や重量を見える化して記録

マンホール蓋枠の製造会社では、電気炉と注湯機を更新するときにセンサを新設しました。費用の工面には、中小企業向けの補助金を活用しています。

センサの新設により、電気炉の温度や注湯機の重量を記録することが可能になりました。記録したデータの解析を重ねた結果、最適な条件で溶湯が自動的に実行できる独自のシステムの構築に成功し、省エネと品質向上を実現したのです。
参考出典:https://www.emdustrial.net/the-secret-to-improving-productivity/#i-3

異常や呼び出しをリアルタイムに表示する電光表示板を設置

有名な事例ですが、トヨタ自動車では昔から見える化に取り組んでいます。代表的なものが「アンドン」で、工程内の異常や呼び出しの情報を電光掲示板によってリアルタイムで表示できるようにしました。生産進捗や稼働率も表示されているため、アンドンを見るだけでさまざまな情報を取得できます。
参考出典:https://www.emdustrial.net/the-secret-to-improving-productivity/#i-3

工場の見える化は多くの課題や問題の解消につながる(まとめ)

工場の見える化は、隠れた課題や問題を浮き彫りにするだけでなく、改善策を立てやすくしてくれます。「見せる化」や可視化とは違い、製造現場の生産性向上を最終目的とした取り組みです。また業務の属人化やブラックボックス化を阻止できるメリットもあります。

工場を見える化するときの課題は、古い設備からのデータ移行や根拠数値にばらつきが生じることですが、補助金の活用によるIoT化やプロジェクトチームの立ち上げなどで解消できます。工場の見える化に取り組むときは、日本の企業の成功事例を参考にしながら、自社に合ったやり方と目標で進めていきましょう。

今日のポイント

  • 工場の見える化とは、製造現場の業務内容やデータを客観的に捉えられるように明確にすること
  • 工場を見える化する目的とメリットは「工場の課題や問題が浮き彫りになる」「業務プロセスを社内共有しやすくなる」「属人化とブラックボックス化を阻止できる」「生産ラインに関する判断と意思決定がスピーディーになる」こと
  • 工場を見える化するときは、「人の作業」と「生産設備」の両方で進めていく
  • 工場を見える化するときの課題は古い設備からのデータ移行と根拠数値にばらつきが生じること
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