工場の動線は「一筆書き」が基本!ムダのないレイアウトへ改善

「工場内の移動距離が長く、作業効率が上がらない」
「フォークリフトと作業者の動線が交差し、ヒヤリ・ハットな瞬間があった」
このような現場の課題は、工場のレイアウト、すなわち「動線」を見直すことで改善できる可能性があります。動線は単なる通路ではなく、工場の生産性や安全性を決定づける重要な「血管」のようなもの。
本記事では、動線が悪いことによる弊害、良い動線の基本、現状を分析してレイアウトを改善するための手順を解説します。
コンテンツ
そもそも、動線とは?
工場における「動線」とは、人・モノ・製品・車両(フォークリフトなど)が移動する一連の流れを指します。
動線が適切に設計されている工場では、作業者は最短距離で必要な工程に移動でき、材料や製品の流れも滞りません。その結果、生産性・安全性・作業効率が向上・安定します。
逆に、動線が乱れている工場では、作業者が遠回りをしたり、フォークリフトと人が交差して危険な状況が生まれます。つまり、動線は工場運営の土台となる重要要素なのです。
工場の動線が悪いと何が起きる?
不必要な移動が多く、生産性が低下する
動線が最適化されていない場合、作業者は必要な部材や工具を取りに行くために長距離を歩くことになり、結果として「歩いている時間」が作業時間を圧迫します。
加工エリアと部材倉庫が離れている工場では、1日の移動距離が数百メートル〜数キロに達することも珍しくありません。これでは作業者の負担を増やすだけでなく、本来の作業にかける時間を奪い、生産性の低下につながります。
モノの流れが渋滞し、作業が停滞する
動線設計が不十分だと搬送物が同じ場所に集中するため、工程待ちが発生して現場のリズムが乱れてしまいます。また、フォークリフトが頻繁に出入りするエリアで動線が交錯すると、車両どうしの渋滞や通行遅延が生じ、全体作業のボトルネックになってしまいます。
ヒヤリ・ハットや事故のリスクが増える
動線が悪い工場では、人の動線とフォークリフトなど車両の動線が交差しやすく、接触事故のリスクが高まります。
特に、出入口・角・棚の死角といった見通しの悪い場所では、フォークリフトが曲がった瞬間に作業者が歩いているケースも多く、ヒヤリ・ハットが日常的に発生します。
こうした環境では作業者の心理的なストレスも蓄積し、安全性の確保が難しくなります。
「良い動線」の3つの基本
一筆書きができる(単純化)
モノや人の流れは、できるだけ「一筆書き(ワンウェイ)で進む」のが理想形です。
工程Aから工程Bへ進み、また工程Aの近くに戻ってくるような「逆流(後戻り)」や、動線同士が複雑に絡み合う「交差」は、良い動線とは言えません。モノの衝突や渋滞を引き起こし、生産管理を難しくする原因になります。
■I字型レイアウト(直線):入口から出口まで一直線に進む
■U字型レイアウト:入口と出口が同じサイドにあるが、流れ自体はUターンして一筆書きになっている
上記のように、形は違っても「流れが止まらず、一方向に進み続けるレイアウト」を目指すのが基本です。ただし、「多品種少量生産」のように工程順が製品ごとに違う場合、一筆書きが必ずしも最適なレイアウトにはならないこともあります。
運搬距離が近い(短縮化)
「運搬」そのものは、製品に1円の価値も付加しません。トヨタ生産方式で「運搬のムダ」と定義されている通り、モノを移動させている時間は、生産性がゼロの状態。そのため、工程間の距離は物理的に可能な限り近づける必要があります。
「必要なモノが、必要な時に、すぐ手の届く場所にある」状態が、最も効率的なレイアウトです。
■連続する工程同士は隣接させる
■頻繁に使う部品や治具は、作業者の近くに配置する
■平面だけでなく「高さ」も考慮し、持ち上げたり下ろしたりする動作を減らす
可視化ができる(安全性)
どれだけ効率的でも、事故のリスクがある動線は採用してはいけません。「パッと見て流れがわかる」「作業者が何をしているかが見える」ことが、安全性の面で非常に重要です。
■フォークリフトの通り道と、作業者の歩く道を明確に分ける(人車分離/歩車分離)
■通路の交差点や曲がり角に、視界を遮る高い棚や設備を置かない
■通路と作業エリアの床を色分け(ゾーニング)して誰が見てもルールがわかる状態にする
工場の動線を改善する手順
1. 現状分析(P-Q分析)
まずは「何が(Product)」「どれくらい(Quantity)」流れているかを知る「P-Q分析」を行います。この分析を行うことで、「どの製品の動線を最優先で短くすべきか」という優先順位が見えてきます。生産量の多い製品の動線を1メートル短くするだけで、月間の総移動距離は何キロメートルも削減できます。
【例】
・Aグループ(少品種・多量):専用ライン化やコンベア導入を検討
・Bグループ(中品種・中量):グループ別レイアウト(セル生産)を検討
・Cグループ(多品種・少量):機能別レイアウトで汎用性を持たせる
2. 現状の動線を可視化する
頭の中で考えていても改善案は出ません。現状の工場の図面に、実際の「モノ」と「人」の動きを書き込んで可視化します。これを「流動線図(フローダイアグラム)」と呼びます。
既存の図面がない、あるいは古すぎる場合は、以下の手順で簡易的な図面を作成しましょう。
図面の準備
工場全体が見渡せる白地図を用意します。手書きでも可能ですが、ExcelやCADが使いやすいでしょう。
動かせない制約条件として、柱や壁、出入り口の位置を正確に配置します。
設備の配置
設備や棚を配置します。将来的に動かす検討をするため、設備を紙で切り抜いて「駒」のように動かせるようにしておくと便利です。
線の種類を使い分ける
動線を描く際は、以下のように線種を分けると混乱しません。
・実線(黒):製品・材料の動き
・点線(赤):作業者の動き
・一点鎖線(青):情報(伝票・指示書)の動き
・太線:フォークリフトやAGVの動き
工程記号を使う
JIS(日本産業規格)で定められた工程図記号を使うと、誰が見ても分かりやすい図になります。
〇(加工):実際に作業を行っている場所
⇨(運搬):モノが移動している区間。この矢印が長いほどムダが多い(小さい〇で表すこともある)
▽(貯蔵):倉庫や棚での保管
D(停滞):次の工程を待っている状態(仕掛品置き場など)
□(数量検査):生産数や部品数のチェック
◇(品質検査):製品の品質チェック
3. 問題点を見つける(ムダ・停滞・危険箇所)
作成した流動線図を見ながら、問題点を洗い出します。
【例】
・交差ポイント:線が重なっている場所は、衝突事故や待ち時間が発生しやすいボトルネック
・逆行ポイント:流れに逆らって戻っている箇所はないか?
・長すぎる運搬:離れた場所に頻繁に移動している工程はないか?
・D(停滞)の多さ:モノが滞留し、通路を塞いでいる場所はないか?
4. ゾーニングとレイアウトを構想する
問題点を解消するための「あるべき姿」を構想します。まずは詳細な配置ではなく、大まかなエリア分け(ゾーニング)を行います。
【例】
・受入/出荷エリア:トラックバースの近くに配置し、物流をスムーズにする
・主通路/副通路:幹線道路となる主通路を直線で通し、そこから各作業エリアへ入る副通路を設ける
・危険物/騒音エリア:他のエリアから隔離する
5. 詳細設計とシミュレーション
ゾーニングが決まったら、設備ごとの詳細な配置を決めます。ここで重要なのが、「実際に動かしてみるシミュレーション」です。
紙の上では完璧に見えても、「作業者が材料を取るときに隣の人とぶつかる」「フォークリフトが旋回するスペースが足りない」といった問題は、現場レベルで発生します。段ボール箱などで実寸大の模型を作って検証するか、シミュレーションソフトを活用して検証しましょう。
6. 実施して改善サイクルを回す
レイアウト変更を実施します。「変更して終わり」ではなく効果検証を行い、改善のサイクルを回します。
【例】
・効果検証:変更前後で、移動距離や生産量がどう変化したかを数値で測定する
・定着化(標準化):新しい動線を作業者に守ってもらうための教育や、ライン引き、標識の設置
・微調整:実際に稼働して初めて気づく不便さを、現場の声を聞きながら調整する
まとめ
工場の動線改善は、単なるレイアウト変更ではなく「生産性・安全性・働きやすさ」を同時に高めるための基盤づくり。ポイントは次の3つです。
■一筆書きの流れを意識して、モノと人の動きを単純化する
■運搬距離を最短化し、ムダな移動をなくす
■見える化による安全確保で、安心して働ける環境をつくる
レイアウトの変更は大きな労力を伴いますが、一度最適な動線を構築できれば、その効果(効率化・安全性向上)は長く続きます。「自社だけでは分析が難しい」「レイアウト配置を相談したい」そんなお悩みをお持ちの方は、製造業専門のコンサルタント「あおい技研」へご相談ください。
製造業のDXはあおい技研
株式会社あおい技研は、製造業に特化した業務改善コンサルティングを提供し、製造現場のDX推進をサポートします。80以上の製造現場での診断や改善の経験を活かし、お客様に合ったDX戦略を提案します。
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