事例から学ぶ工場の安全対策!製造業の労災件数も紹介

製造現場での「労働災害」は、毎年多くの人が被害を受けている深刻な問題です。
機械に巻き込まれる、転倒する、作業中に無理な体勢を取る。
これらはどれも、実際に多く発生している事故の一例です。

本記事では、令和5年における製造業の災害件数や傾向を踏まえて、現場での安全対策、そして企業事例を紹介します。

製造業における労働災害の件数(死亡・死傷)

令和5年の厚生労働省のデータをもとに、製造業における死亡災害・死傷災害の件数や事故の傾向を見ていきましょう。

業種別の死亡災害

業種 死亡件数
食料品製造業 21
金属製品製造業 20
化学工業 14
輸送用機械等製造業 13
窯業土石 11
鉄鋼業 10
合計 138

 

表によると、食料品製造業での死亡災害が最も多く21件。
次いで金属製品製造業が20件、化学工業が14件となっています。
比較的「重厚長大産業」と言われる鉄鋼業や窯業土石も、それぞれ10件、11件と高水準。
合計で138件と、業種を問わず死亡災害が発生していることがわかります。

業種別の死傷災害

業種 死傷件数
食料品製造業 8,363
金属製品製造業 4,037
化学工業 2,118
輸送用機械等製造業 1,972
一般機械器具製造業 1,724
合計 27,194

 

死傷者数の合計は27,194件と死亡災害よりも高く、その中でも食料品製造業が8,363件と突出しています。
次点は金属製品製造業(4,037件)で、その差は約2倍。
さらに化学工業(2,118件)、輸送用機械(1,972件)、一般機械器具(1,724件)と続きます。

次に、死亡災害、死傷災害における事故の種類を見てみましょう。

死亡・死傷災害における事故の種類

事故の種類 死亡件数 死傷件数
はさまれ・巻き込まれ 50 6,377
転倒 21 5,823
動作の反動・無理な動作 10 3,191
墜落・転落 9 2,870
切れ・こすれ 8 2,327

 

最も死亡件数が多いのは、「はさまれ・巻き込まれ」事故で50件。
次に多いのは「転倒」21件、「動作の反動・無理な動作」10件と続きます。
つまり、機械などに巻き込まれる事故が致命的な結果につながりやすいことがわかります。

死傷件数で見ると、こちらも「はさまれ・巻き込まれ」が6,377件で最多。
続いて「転倒」5,823件、「動作の反動・無理な動作」3,191件と、負傷リスクの高い動作が上位を占めています。
「切れ・こすれ」も2,327件あり、他の事故種と比べて件数は少ないものの、無視できないリスクです。

※参照元:厚生労働省┃令和5年労働災害発生状況の分析等

工場における労働災害の要因

労働災害のほとんどが「不安全な状態(物的要因)」と「不安全な行動(人的要因)」のどちらか、あるいはその両方が原因で発生しています。

【不安全な状態(物的要因)】
・物自体の欠陥
・防護装置の欠陥
・物の置き方、作業箇所の欠陥
・保護具、服装等の欠陥
・作業環境の欠陥
・部外的、自然的不安全な状態
・作業方法の欠陥

【不安全な行動(人的要因)】
・安全装置等を無効にする
・安全装置の不履行
・不安全な放置
・危険な状態を作る
・機械装置等の指定外使用
・運転中の機械、装置等の清掃、注油、修理、点検等
・保護具、服装の誤り
・危険場所等への接近
・その他の不安全な行為
・運転の失敗
・誤った動作

※参照元:厚生労働省┃労働災害はなぜ発生するのか

例えば、「床に油がこぼれてる(不安全な状態)」と「そこを見ずに歩いた(不安全な行動)」が重なると、転倒事故が起こります。
この2つの原因を生む根底には「安全衛生管理の欠陥」があるとされています。

それでは、労働災害を防ぐにはどうすれば良いのでしょうか。
対策を次で紹介します。

工場で労働災害を起こさないための工夫

安全衛生教育の徹底

安全衛生教育は、従業員がつい無意識に「やってはいけないこと」をしないようにするための土台作りです。
ただ単に「気をつけて」「注意して」というだけでは行動は変わりません。
具体的には、雇い入れ時や作業内容の変更時に、機械の危険性や安全装置の使い方、正しい作業手順、点検の要領、応急処置法まで、一つひとつ丁寧に教える必要があります。
そして大切なのは「一度やって終わり」にしないこと。
現場の状況や作業の切り替わりに合わせて、週に一度、月に一度、あるいは毎日の作業開始前などに繰り返し復習や実技訓練を入れることで、意識は継続的に高まっていきます。

現場での安全衛生活動の仕組み化

次に、安全衛生活動です。
これは現場に根ざした具体的な取り組みで、不安全な状態を自分たちで見つけ、改善していくことを狙いとします。
代表的な活動には以下のようなものがあります。

活動 内容
朝礼などのミーティング 作業前に指示や注意事項を共有
健康チェックや意欲アップにもつながる
KY活動(危険予知活動) その日の作業に潜むリスクをあらかじめ考えて、チームで対策を決める
作業手順の明文化 作業手順をルール化して、個人のやり方にバラつきが出ないようにする
リスクアセスメント どんな危険があるかを表にまとめて見える化
改善策までセットで考える
ヒヤリ・ハット報告 実際に起きた「危なかった!」を共有
似た状況を防げるようにする
安全パトロール 定期的に現場をチェックして、危ない場所がないかを第三者目線で確認
4S活動 転倒防止や作業ミスの防止に効果的
「指差し呼称」も注意力アップに有効

一番大切なのはトップの本気度

どれだけ仕組みを作っても、現場が「どうせ形だけ」と思っていたら意味がありません。
だからこそ、事業主や管理者が本気で取り組む姿勢を見せることが一番大切です。
リーダーが現場に立って教育に参加したり、パトロールしたり、危険に気づいたら率先して対策を取りましょう。

工場における安全対策の事例

メルテック株式会社
メルテック株式会社では「安全はすべてに優先する」という考えのもと、全社員参加型の安全活動を実施しています。
年2回の安全大会では、安全優先宣言の唱和から始まり、危険予知(KY)促進研修や災害事例のグループ研究を通して、安全意識の向上と実践力を強化。
ヒヤリハット報告にも力を入れており、提出された内容に対して班長と課長がコメントし、掲示板で全社員に共有。
小さな気づきを全社で活かす文化が根づいています。

また、歩行帯や階段への色分け表示など、危険箇所の「見える化」による事故防止策も徹底。
現場・管理職・経営層が一体となって安全を守る姿勢が、安定した職場環境づくりに貢献しています。

※参照元:厚生労働省┃安全衛生優良企業の取組事例┃メルテック株式会社

ニッポン高度紙工業株式会社

ニッポン高度紙工業株式会社では、事故やトラブルの発生リスクが高まる「初めて・変更・久しぶり」の3H(スリーエイチ)に注目。
KY(危険予知)活動やリスクアセスメントを実施したうえで作業を行う「安全3H活動」に全社で取り組んでいます。

さらに、ヒヤリハット事例の全社共有や、各事業所の相互パトロールを通じて、情報の横展開と未然防止を図っているのも特徴。
他にも、事故の怖さや原因を実感できる安全体感教育、防火基礎教育による火災対策の強化、健康診断結果に基づく集団健康学習など、心身両面からの安全・衛生意識向上に取り組んでいる企業です。

※参照元:厚生労働省┃安全衛生優良企業の取組事例┃ニッポン高度紙工業株式会社

トヨタ自動車株式会社

トヨタ自動車株式会社では「すべての人の安全を守る」ことを基本姿勢とし、現場起点・技術活用・関係者との対話という3軸で安全衛生の取り組みを推進しています。

まず、安全知識の共有には、災害事例や健康情報を誰でも閲覧できる「安全コンテンツのWEB化」や、ルールの背景を伝える「e-安全伝承館」のWEB公開を活用していつでもどこでも学べる環境を整備。
VRによる災害体感教育も導入し、危険な作業の「怖さ」を疑似体験することで、特に若手のKY(危険予知)能力を高めています。

また、製造現場の困りごとを役員に直接相談できる仕組みや、技能系トップ同士が本音で議論する「腹落ち研鑽会」を通じて、現場主導の改善も加速。
構内で働く仕入先にも寄り添い、安全会議や動線改善、建設作業のルール共有などを通じて協働体制を築いています。

さらに発展的には、AIとモーションキャプチャーを活用した作業負荷の見える化により、エルゴノミクス評価の効率化と疾病の未然防止も促進。
技術と人の力を融合させた多面的なアプローチが、トヨタの安全文化を支えている事例です。

※参照元:厚生労働省┃安全衛生優良企業の取組事例┃トヨタ自動車株式会社

安全と効率化のために!お試し工場診断ならあおい技研

あおい技研は、製造業に特化した業務改善コンサルティング会社です。
製鉄や組立て系産業、食品、医療機器、化学系素材など携わってきた現場は80以上。
工場の課題を見つけるための「お試し工場診断」も承っております。
製造ライン増設、工場リプレースにかかるレイアウト検討やシミュレーションなどの実績もございますので、現場ならではのお悩みをぜひご相談ください。

まとめ

工場の労働災害は、「不安全な状態」と「不安全な行動」が重なることで発生しやすくなります。
機械の危険性や作業手順をしっかり学び、現場でのKY活動やパトロールを継続して行うこと。
そして何より、トップが本気で安全に向き合う姿勢を見せることが、職場全体の意識向上につながります。
実際に安全文化を根づかせている企業の事例もあるように、「仕組み」と「人の意識」の両輪で取り組むことが、安全で働きやすい現場をつくります。

製造業のDXはあおい技研

株式会社あおい技研は、製造業に特化した業務改善コンサルティングを提供し、製造現場のDX推進をサポートします。80以上の製造現場での診断や改善の経験を活かし、お客様に合ったDX戦略を提案します。

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