KY活動がネタ切れ…マンネリを打破する6つの着眼点

「KY活動のネタがもうない…」
「毎回同じような内容で、すっかり形骸化している…」
「メンバーに『やらされ感』が蔓延していて、真剣な議論にならない…」

職場の安全を守るために不可欠なKY活動(危険予知活動)。
しかし、多くの現場でこのような「ネタ切れ」や「マンネリ化」の課題が聞かれます。

本記事では、KY活動のネタ切れに悩む安全担当者や現場リーダーの方々に向けて、その根本原因から、明日から使える着眼点を紹介します。

KY活動とは?

ネタ切れ対策の前に、まずはKY活動の基本をおさらいしましょう。
KY活動(危険予知活動)とは、作業に潜む危険な要因(不安全な状態・行動)を事前に話し合い、対策を決めて行動する前に危険を回避するための活動です。
KY活動には、以下3つの目的があります。

■労働災害の未然防止
■安全意識の向上
■コミュニケーションの活性化

KY活動は、単なる「指差し呼称」やミーティングのことだけを指すのではなく、安全な職場文化を創るための根幹的な取り組みなのです。

他手法との違い

KY活動と混同されがちな言葉との違いを整理しておきましょう。

■ヒヤリハット
・事故には至らなかったものの、「ヒヤリ」「ハッ」とした体験のこと
・KY活動で話し合う具体的なネタや材料になる

■リスクアセスメント
・職場全体の潜在的な危険性を特定・評価し、体系的にリスクを低減する包括的な取り組みのこと
・KY活動は、このリスクアセスメントを現場レベルで実践する具体的な活動の一つと位置づけられる

つまり、「リスクアセスメント」という大きな枠組みの中で日々のKY活動が行われ、その材料としてヒヤリハットが活用される、という関係性です。

KY活動はなぜマンネリ化してしまうのか?

「ネタ切れ」という現象は、単にアイデアが尽きただけでなく、その背景に組織的な課題が隠れていることが少なくありません。

【原因1】危険への「慣れ」と「自分は大丈夫」という思い込み

毎日同じ作業を繰り返していると、誰しも危険に対する感受性が鈍り、「慣れ」が生じます。特に経験豊富なベテランほど、「今まで大丈夫だったから、これからも大丈夫だろう」という正常性バイアスに陥りやすく、新たな危険の芽を見過ごしてしまいがちです。

【原因2】「指摘しにくい雰囲気」があり報告がされない

「こんな些細なことを指摘したら、気にしすぎだと思われるかな…」「上司のやり方に口を出すのは気が引ける…」といった心理的安全性が低い職場では、メンバーが感じた危険や懸念を率直に発言できません。
結果として、当たり障りのないテーマばかりが挙がり、活動が形骸化していきます。

【原因3】ネタ探しの方法がワンパターン化している

ネタを探す際に「今日の作業手順」や「目の前にある機械」など、いつも同じ視点からしか危険を探していない場合、アイデアが枯渇するのは当然です。ネタ切れは、危険がなくなったのではなく、危険を見つける視点が固定化しているサインなのです。

KY活動がネタ切れなときに試したい6つの視点

では、どうすればKY活動のネタ切れを防げるのでしょうか。
ここでは、6つの着眼点をご紹介します。

【対策1】「労働災害事例」を自分ごとに置き換える

厚生労働省の「職場のあんぜんサイト」には、実際に起きた労働災害の事例が数多く掲載されています。
「他社の事故」と捉えず、「もし自分たちの職場で同じ状況が起きたら?」という視点で話し合うことで、リアルな危険予知訓練になります。

【例】
★材料搬送中に手を挟んだ事故の事例 ⇒ 「うちのラインで台車を押すときに同じ危険はないか?」
★高温設備のやけど事故の事例 ⇒ 「自分たちの炉や乾燥機の清掃時はどんな注意が必要か?」

※厚生労働省┃職場のあんぜんサイト

【対策2】「季節・天気・時間帯」を切り口に危険を探す

いつもと同じ作業でも、外部環境が変われば危険も変化します。
以下のキーワードをテーマにしてみるだけで、「その日の危険」という臨場感が増すため、議論が活発になります。

・季節:夏場の熱中症、冬場の凍結・積雪
・天気:雨による視界不良や足場の滑り、強風による飛来物
・時間帯:朝方の寝ぼけ、夕方の焦りや疲労、夜間の暗がり

【例】
★「今日は梅雨入り初日だから、原料搬入口の床が濡れて滑りやすくなっていないか?」
★「夜勤明けで注意力が落ちる時間帯だから、フォークリフトの合図忘れに気をつけよう」

【対策3】新人や若手、他部署の視点を取り入れる

ベテランが「当たり前」として見過ごしている危険も、経験の浅い新人や若手は「なぜ?」「危ないのでは?」と新鮮な視点で気づくことがあります。新人社員や若手の意見を積極的に引き出し、尊重する場を設けましょう。「何か気づいたことはない?」と名指しで質問するのも効果的です。
また、時には自分たちとは違う作業をしている他部署の人に現場を見てもらうのも有効です。

【例】
★新人に「この作業で怖いと思ったところは?」と質問して意見を聞く
★品質管理部門の人に現場を歩いてもらい、「安全上気づいたこと」をKY活動で共有する

【対策4】ベテランの「勘と経験」を言語化・共有する

ベテランが持つ「なんとなく嫌な予感がする」「ここは注意が必要だ」といった暗黙知(勘や経験)は、非常に価値のある情報です。KY活動の場で、「過去にこんな失敗があった」「この作業のコツは…」といった経験談を語ってもらい、全員の共有知に変えていきましょう。

【例】
★「この音が出たらベルトが切れそう」という経験談を新人に伝える
★「過去にこの型替えで指を挟みそうになったことがある」と体験談を共有する

【対策5】作業手順書やマニュアルを「あえて疑う」視点を持つ

「この手順は本当に最適か?」「もっと安全な方法はないか?」と、確立されたマニュアルをあえて疑ってみるのも一つの手です。古い手順のままになっていないか、現状の設備や環境に即しているかを見直すことで、潜在的なリスクを発見できます。

【例】
★「手順では一人で持つことになっているけど、重量が増えていないか?」
★「この清掃手順は古いままだけど、新しい設備に合っているか?」

【対策6】ポジティブな視点も取り入れる(安全行動の好事例共有など)

常に「危険」ばかりを探していると、気が滅入ってしまうことも。
たまには視点を変え、「〇〇さんのあの時のフォロー、助かりました」「あの時、声かけしてくれてありがとう」といった安全に関するグッドプラクティス(好事例)を共有するテーマを設定するのもおすすめです。
感謝の言葉を添えることで、職場の雰囲気が明るくなり、安全行動のモチベーション維持にもつながります。

【例】
★「昨日、材料補充で声をかけ合えたおかげで事故が防げた」
★「設備停止時に〇〇さんがすぐに非常ボタンを押してくれた」

KY活動の手法をおさらい

ネタが見つかったら、それを効果的な活動につなげるためのフレームワーク「基礎4ラウンド法」を活用しましょう。

基礎4ラウンド法

第1ラウンド:現状把握(どんな危険がひそんでいるか)

テーマとなる作業状況(イラストや現場)の中から、危険と思われる箇所を全員で洗い出します。
「〇〇なので、△△して、□□になる」のように、具体的な事象と結果を述べます。

第2ラウンド:本質追究(なぜそれが危険なのか)

第1ラウンドで出た危険の中から、重要と思われる項目を絞り込みます。
そして、それがなぜ最も危険なのか、根本的な原因(不安全な状態・不安全な行動)は何かを深く掘り下げていきます。

第3ラウンド:対策樹立(あなたならどうするか)

第2ラウンドで突き止めた原因に対して、「自分ならこうする」という具体的な対策案を全員で出し合います。
実現可能で効果的なアイデアをできるだけ多く出すことがポイントです。

第4ラウンド:目標設定(私たちはこうする)

第3ラウンドで出た対策案の中から、チームとして重点的に実施する項目を絞り込み、具体的な行動目標を設定します。
「〇〇するときは、△△を、□□するぞ、ヨシ!」のように、簡潔で覚えやすい言葉にまとめ、指差し呼称などで共有します。

1人KY

単独で作業を行う場合は、自問自答形式で「1人KY」を実践します。
作業前に少し立ち止まり、「この作業の危険は何か?」「安全に進めるにはどうすれば良いか?」と考える習慣をつけることが重要です。

まとめ

KY活動のネタ切れは、活動が形骸化しているサイン。
しかし、同時に、これまでのやり方を見直し、活動をレベルアップさせるチャンスです。

■ネタ切れの根本原因は「人」と「組織」にある
■視点を変えれば、危険の芽は無数に存在する

マンネリ化してしまったなら、「これまでのやり方で良いのだろうか?」と立ち止まり、活動のあり方そのものを見直す絶好の機会。
この記事でご紹介したアイデアから、まずは一つでも職場で試せそうなものを選んでみてください。

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