労働生産性の計算式2つを初心者向けにわかりやすく解説|製造業が低い理由と向上させる方法
労働生産性の計算式は、「物的労働生産性」と「付加価値労働生産性」の 2つがあります。前者の「物的労働生産性」は、単位時間あたりの生産量を示す指標です。後者の「付加価値労働生産性」は、労働者が生み出した付加価値を示す指標です。
どちらも企業の生産性分析のために使われる指標ですが、評価対象がそれぞれ「生産量」と「付加価値」である点に違いがあります。今回は、労働生産性の計算式2つを初心者向けにわかりやすく解説します。
製造業の労働生産性が低い理由と向上させる方法も解説するので、ご参考にしてみてください。
コンテンツ
労働生産性の基本
労働生産性とは、同じ労働量や労働時間で、どれだけ多くの生産物や成果を生み出せるかを示す指標です。企業が効率的に経営できているか、従業員の能力を最大限に引き出せているかなどを分析するときに役立ちます。
労働生産性が向上すると、収益性の向上、競争力の強化、従業員のモチベーション向上などが期待できます。
労働生産性の計算式2つ
労働生産性は、「物的労働生産性」と「付加価値労働生産性」にわけられます。
それぞれの違いは、評価対象が前者は「生産量」に、後者は「付加価値」にあることです。労働生産性の計算式2つを紹介します。
物的労働生産性
物的労働生産性とは、単位時間あたりの生産量を表す指標で、生産活動の効率性を測るものです。物的労働生産性の計算式は、以下のとおりです。
物的労働生産性 = 生産量 ÷ 労働量
たとえば、生産量が160(個)で労働量が8(時間)であった場合、物的労働生産性は20で、労働時間1時間あたり20個の生産量を生み出せていることになります。
付加価値労働生産性
付加価値労働生産性とは、労働者が生み出した付加価値を労働量で割った値であり、企業がどれだけの付加価値を生み出しているかを測るものです。付加価値労働生産性の計算式は、以下のとおりです。
付加価値労働生産性 = 付加価値額 ÷ 労働量
たとえば、ある企業で5人の従業員が8時間で製造した商品の売上金額が100万円で、原材料費などの外部購入費が20万円だとします。
このときの付加価値額は80万円なので、従業員1人あたりの付加価値額は16万円になり、従業員1人1時間あたりの付加価値労働生産性は2万円になります。
製造業の労働生産性が低い理由
製造業の労働生産性が低い主な理由の一つに、長時間労働があります。加えて、デジタル化の遅れや従業員のモチベーション低下なども要因です。製造業の労働生産性が低い理由を解説します。
労働時間が長い
日本の製造業の労働生産性は、海外諸国と比較して低い傾向にあります。
公共財団法人日本生産性本部の「労働生産性の国際比較 | 調査研究・提言活動」によると、2022 年の日本の時間あたりの労働生産性(1時間当たりの付加価値)は、OECD加盟38カ国中30位でした。
参照:公共財団法人日本生産性本部 労働生産性の国際比較 | 調査研究・提言活動
日本の製造業の労働生産性が海外諸国と比較して低いことの要因の一つとして、労働時間が長いことが挙げられます。日本の製造業では、長時間労働や残業の文化が根強く残っている企業が多く見受けられます。
長時間労働は、従業員の疲労によるミスや集中力の低下を招き、結果的に生産性を低下させてしまっているケースがあるのです。
労働生産性を向上するためには、短い労働時間でより多くの成果を出せるよう、業務効率化を推進しなくてはなりません。
デジタル化が遅れている
日本の製造業は海外諸国と比較して、デジタル化、自動化、IT化が遅れている課題もあります。
経済産業省の「ものづくり白書2024」では、以下のように記されています。
“製造事業者におけるDXは、依然として「個別工程のカイゼン」に関する取組が多く、「製造機能の全体最適」を 目指す取組は少ない。また、新たな製品・サービスの創出により新市場を獲得し、「事業機会の拡大」を目指す DXの取組は更に少ない。”
そのため今後は“製造機能の全体最適に向けては、経営戦略の遂行を可能とするデジタル戦略を描くとともに、製造現場の業務 プロセスの全体像を熟知した上でのデジタル実装が求められる。”とされています。
デジタル化については「デジタル技術やツールを導入すること自体」をDXであると理解されがちであるが、本来は「データやデジタル技術を使って、顧客目線で新たな価値を創出していくこと」として認識を持つ必要があり、更に業務の効率化への取り組みを加速させる意識を持つことがとても重要となってきます。
従業員のモチベーションが低下している
製造業における従業員のモチベーション低下は、生産性や品質に大きな影響を与える深刻な問題です。製造業の従業員のモチベーションが低下する理由として考えられるのは、以下のような要因です。
- 仕事内容…単調な作業が多くやりがいがない、スキルアップの機会が少ない、など
- 労働環境…残業が多い、休憩時間が少ない、安全性が低い、など
- 評価制度…評価方法に納得がいっていない、報酬に満足できていない、など
- 人間関係…上司との関係の悪化、同僚とのコミュニケーションの不足、など
- 企業理念や将来性…企業の価値観と合わない、将来性があると思えない、など
製造業の従業員のモチベーションが低下する要因はさまざまですが、経営層が現場の声や状況を大切にして、見直す姿勢をもつことが大切です。
労働生産性の計算式を理解して分析と生産性向上に役立てよう(まとめ)
労働生産性とは、同じ労働量や労働時間で、どれだけ多くの生産物や成果を生み出せるかを示す指標のことです。労働生産性の計算式は、「物的労働生産性」と「付加価値労働生産性」の 2つがあり、前者の「物的労働生産性」は単位時間あたりの生産量を、後者の「付加価値労働生産性」は労働者が生み出した付加価値を示しています。
物的労働生産性の計算式は「生産量 ÷ 労働量」で、付加価値労働生産性の計算式は「付加価値額 ÷ 労働量」です。
日本の労働生産性は海外諸国と比較して低い傾向にあるため、要因となっている長時間労働、デジタル化の遅れ、従業員のモチベーション低下などの課題解消に努めることが鍵になります。
今日のポイント
- 労働生産性の計算式には「物的労働生産性」と「付加価値労働生産性」の 2つがある
- 労働生産性とは同じ労働量や労働時間でどれだけ多くの生産物や成果を生み出せるかを示す指標のこと
- 製造業の労働生産性が低い理由には「長時間労働」、「デジタル化の遅れ」、「従業員のモチベーション低下」などがある
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