QCとQAの違いは責任・時間軸・業務範囲の3点!それぞれ解説

製造現場の改善を担うQCと、会社として品質を保証するQA。
どちらも製造業に欠かせない存在ですが、違いが曖昧で混同されることも多い領域です。

本記事では、QCとQAの違いを「責任・時間軸・業務範囲」という3つの視点から整理。それぞれの仕事内容や向いている人の特徴もあわせて解説します。

QCとQAの違いは「責任・時間軸・業務範囲」にある

QCとQAは、どちらも品質を守る仕事です。両者の違いを見る前に、それぞれの役割を簡単に押さえておきましょう。

■QC(品質管理)
・Quality Controlの略
・製造プロセスの中で、製品が基準どおりに作られているかを確認し、必要に応じて改善する
・検査、工程管理、不良対応など、現場での品質づくりを担う

■QA(品質保証)
・Quality Assuranceの略
・その製品が安全で問題なく使えることを、社外に向けて保証する
・品質基準の策定、設計レビュー、監査対応、クレーム・リコール判断など品質の仕組み全体を担う

上記の前提を踏まえ、QCとQAの違いは「責任・時間軸・業務範囲」の3つに整理できます。

責任の違い

QC(品質管理) QA(品質保証)
「製品が基準を満たしているか」を確認する 製品の安全性や品質が保証されていることを対外的に示す
責任の範囲は「現場の工程」 責任の範囲は「会社レベル」。企業としての信頼を背負う
不良が出れば現場で対処し、再発しないよう改善してい 問題が起きた場合、リコールや顧客対応まで含めて判断する

QCとQAは、同じ「品質」を扱っていても、背負っている責任の種類や範囲が異なります。
QCは現場で起きる不良や工程の乱れを見つけて改善する「作る側の責任」

QAは、製品そのものを世の中に出すときに「問題ありません」と保証する「解釈としての責任」を背負っています。
もし市場で不具合が起きれば、リコールや顧客対応まで含めて判断するのはQAの役割。QCに比べて責任の範囲が広く、会社全体の信頼を左右する立場です。

時間軸の違い

QC(品質管理) QA(品質保証)
「現在」と「直近の工程」を見る 製品が「世に出るまでの全体」を見る
サンプル検査や工程管理など現場をリアルタイムで把握 企画段階の基準づくりから、不具合対応まで長いスパンに関わる

QCとQAは、製品に携わる時間の幅が異なります。
QCが扱うのは、現在進んでいる製造工程や、直近の作業状態です。材料の受け入れ、工程のチェック、不良が出たときの対処など、リアルタイムでの品質維持が中心。現場で起きている事象をその都度改善していく、短期サイクルの仕事です。

対してQAは、製品が企画される前段階から、市場に出たあとのトラブル対応まで長期のスパンで品質を見ます。企画段階で基準を作り、設計で品質リスクをチェックし、製造後にはクレーム対応や市場の調査まで行います。

業務範囲の違い

QC(品質管理) QA(品質保証)
材料の受け入れや工程管理など製造プロセス中心 品質基準の策定やレビュー、クレーム対応など製造外も対応

QCとQAは、担当する業務範囲も異なります。
QCは、製造プロセスに集中。材料の受け入れ検査、工程ごとのチェック、製品完成後の検査、不良原因の分析など現場で起きる品質の問題に直接向き合います。

一方のQAは、より広い視点で品質を管理。品質基準をつくる、設計段階でリスクを洗い出す、外部監査に対応する、市場でトラブルが出たときの判断をするなど、現場だけではなく、会社全体の仕組みを整える役割を担います。クレーム対応やリコール判断といった対外的な仕事も含まれます。この広さの違いから、「QAがQCを内包している」関係にあります。

現代の製造業におけるQCとQAの関係性

QCとQAは別の管理業務として、分けて考えられてきました。しかし、近年ではQAの中にQCを内包している企業が多くなっています。従来は製品が完成した後の検査などの品質保証の方に重きが置かれていました。不良品を最終検品によって、市場に出回させないことが重要だと考えられていたからです。
とはいえ、膨大な量の製品を入念に最終検品するのは難しく、非効率でもあります。

そこで現代では製造過程の品質管理に力を入れることにより、そもそも不良品を発生させないことを目指すやり方が主流になってきているのです。品質保証の質を高めるには品質管理の徹底が欠かせないため、QAの中にQCを内包し、同じレベルでの管理業務として扱っている企業が増えています。

QCの仕事内容と向いている人

QCの仕事内容

QC(品質管理)の仕事は、製造工程が安定し、同じ品質の製品を安定して作り続けられる状態をつくることです。大きく「工程管理」「品質検証」「品質改善」の3つに分けられます。

工程の管理(製造プロセスを安定させる)

工程管理は、製造ラインが乱れず、決められた品質を安定して出せるようにするための業務です。作業が標準化され、設備が安定して稼働しているほど、不良品の発生は大きく減ります。
QCでは「正しい作業が、正しい手順で、正しい設備で行われているか」を日常的にチェックし、異常を早期に察知して対処します。

【例】
・作業手順書の整備と標準化
・作業者への品質教育(正しい手順や注意点の共有)
・設備の点検やメンテナンス
・温度・圧力など工程条件の管理

品質の検証(製品や工程が基準を満たしているか確認する)

品質検証は、製品や工程に問題がないか確かめるための業務です。QCは検査の結果だけを見るのではなく、「検査の仕組み自体が正しく運用されているか」まで監視します。
また、数値データの推移を見ながら工程に乱れがないかを分析し、不良の早期発見につなげます。

【例】
・原材料や部品をチェックする「受け入れ検査」
・製造途中で異常を見つける「工程内検査」
・動作・性能の最終確認を行う「完成品検査」
・出荷前に品質を確認する「出荷検査」

品質の改善(不良の原因を探り、再発を防止する)

品質改善は、不良が発生した際に「なぜ起きたのか」を突き止め、再発しないよう改善策を立てて実行する業務です。原因の分析では統計的手法や分析ツールを使うことも多く、特性要因図やパレート図、チェックシート、4M分析、5Why分析など用いて根本原因を明確にします。

【例】
・不具合の原因分析と特定
・工程や設備の問題点の整理
・改善策の立案と実施

QCに向いている人

細かい変化に気づける人

品質トラブルは、小さな違和感や数値のズレから見つかることも多いです。
工程や製品をよく観察し、「あれ?」と気づけるタイプは重宝されます。

数字やデータを見るのが苦にならない人

QCでは検査データや工程の数値を扱う場面が多々あります。
統計的な見方ができたり、数字から傾向を読み取るのが得意な人は相性が良いです。

原因を論理的に突き止めるのが好きな人

トラブル発生時は「なぜ起きたか」を深掘りして根本原因を探す必要があります。
情報を整理して筋道立てて考えるのが得意な人は強みになります。

現場の人とコミュニケーションが取れる人

黙々と検査するだけではなく、現場の従業員や他部署と連携して進める仕事も多いです。
状況を聞いたり調整しながら動ける柔らかいコミュニケーション力は必須と言えるでしょう。

ルールや手順を丁寧に守れる人

品質を守るには、決められた手順を正確にこなすことが重要。
作業を着実に積み上げられるタイプに向いている仕事です。

コツコツ継続できる人

改善活動は、すぐに成果が出ないことも。
地道に取り組めるタイプは品質管理の現場で力を発揮できるでしょう。

QAの仕事内容と向いている人

QAの仕事内容

QA(品質保証)の仕事は、製品が作られる前の企画段階から、出荷後のアフターフォローまで製品の生涯に関わる広い業務です。QCが「工程の品質を作りこむ仕事」だとすると、QAは「その品質を会社として保証する仕組みを作る仕事」。大きく、以下の4つの業務に分けられます。

仕様・品質基準の策定(上流で品質を作る)

製品を作り始める前に「何を満たしていれば品質が保証できるのか」を決めるのがQAの役割です。企画・設計・調達・製造など、複数の部署と連携しながら「ミスや不良が起こりにくい仕組み」を策定。この段階で基準が曖昧だと、製造後に問題が多発するため、QAの最も重要なプロセスの一つです。

【例】
・使用する原材料・部品の選定
・必要な強度・性能・耐久性などの基準づくり
・製造工程に求められる条件の明確化
・決めた内容を仕様書・品質基準書として文書化

製造工程の確認・監視(工程が基準通りに動くようにする)

製造段階では、決めた品質基準が正しく守られているかをチェックします。QCや生産技術と連携しながら、工程そのものが安定して品質を出せる状態かどうかを見極めます。「工程が基準を満たす仕組みを作る」という意味合いで、QAはQCよりも上流のレイヤーで動く立場です。

【例】
・製造ラインの設計・改善に関わる
・設備の選定・条件設定の確認
・作業手順書のチェック
・工程ごとの検査ポイントの設定
・不良発生時の判断・対応ルールの整備

完成品の品質確認(基準通り作られているかを最終チェック)

製品が完成したら、仕様書で決めた基準を満たしているかを最終的に確認します。QCが日々の検査を担当する一方で、QAは「基準そのものに照らして適正かどうか」を判断。必要に応じて、設計や工程に修正を促すこともあります。

【例】
・外観チェック(傷・汚れ・形状の乱れなど)
・機能検査(性能・動作・安全性の確認)
・検査データの記録・評価
・工程改善や設計へのフィードバック

トラブル対応・市場フォロー(会社としての責任を負う)

製品が市場に出た後の品質対応は、QAの大きな役割です。ここは、QAが「会社の信頼を背負う仕事」と言われるゆえん。市場でのトラブルは企業のブランドに直結するため、迅速かつ正確な判断が求められます。
また、顧客の声や市場のデータを分析し、次の製品づくりに活かすのもQAの重要な役割です。

【例】
・顧客からのクレーム対応
・不具合原因の調査と根本対策の立案
・場合によってはリコール判断
・顧客ヒアリングや市場調査
・改善内容を社内へ共有・標準化

QAに向いている人

物事を俯瞰して見られる人

QAは製品の企画から出荷後の市場対応まで、広い範囲をカバーします。
一つの工程だけでなく、全体の流れを見て判断できる人が向いています。

リスクを事前に察知できる人

「どこに問題が起きそうか」を事前に考える力が重要。
細部を見るQCに対して、QAは「未来のリスク」を見抜く視点が求められます。

ルールづくりや仕組み化が得意な人

品質基準の策定や手順書の作成など、仕組みそのものを整える業務が多いです。
物事を体系立ててまとめるのが得意な人に向いています。

他部署との調整がスムーズにできる人

QAは、設計・製造・営業・購買など、多くの部署と関わるポジションです。
相手の立場を理解しながら、必要な情報を引き出せるコミュニケーション力が欠かせません。

トラブル時に冷静に判断できる人

不具合が出たときに、事実を整理しながら最適な対応を決める必要があります。
感情に流されず、状況を客観的に見て判断できる人は強いです。

顧客視点で考えられる人

QAは「会社として製品を保証する立場」なので、ユーザーの安全性や満足度に直結する判断を下す場面が多数。
顧客の目線で「この品質で本当に問題ないか?」と考えられる人に向いています。

社内外からの信頼を得られるタイプの人

QAの判断は会社全体の信用につながるため、誠実さや説明力も重要。
日頃の丁寧な対応や、筋の通った判断ができる人が活躍しやすいです。

まとめ

QCとQAはどちらも品質に関わる仕事ですが、役割と視点が異なります。

■QCは「品質を作りこむ仕事」
製造プロセスの管理、検査、原因究明、改善活動など、現場で品質を安定させる役割

■QAは「品質を保証する仕事」
品質基準づくり、工程の監視、仕様チェック、市場でのトラブル対応など、製品全体の品質を担保する役割

両者の違いは、責任の重さ・見ている時間軸・業務範囲の広さの3つで整理できます。
また、QCは「現場での改善が得意な人」、QAは「全体を見て判断できる人」に向いているという特徴も。
製造業における品質管理と品質保証は、片方だけでは成り立ちません。
QCとQAが連携してこそ、製品の品質が守られ、企業としての信頼が生まれます。

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