QCサークル活動の進め方|4つの基本要素と成功させるポイント
QCサークルとは、職場の問題や課題の解決のための活動を、自発的に行う小集団のことです。
同じ職場内でグループを結成し、サークルメンバー全員参加で、継続的に議論や実践を行っていきます。
製造業においては、製品あるいはサービスの品質管理や業務改善をテーマ設定し、活動することが多くなっています。
QCサークル活動を行う目的は、職場の問題や課題の解決だけではありません。
- QCサークルメンバーの能力向上や自己実現
- 明るく活力に満ちた働きがいのある職場づくり
- 顧客満足度の向上と社会貢献
など、従業員一人一人の自己啓発や、職場の環境向上も重要な目的です。
日本では多くの企業でQCサークル活動が行われ、品質、コスト、納期などの改善やQCサークルメンバーの能力向上が実現しています。
今回は、QCサークルのリーダーとして基本的な知識を学びたい人に向けて、QCサークルの4つの基本要素と活動の進め方をご解説します。QCサークル活動を成功させるポイントもご紹介しているので、参考にしてみてください。
コンテンツ
QCサークルの4つの基本要素
QCサークルは、4つの基本要素で構成されています。
活動を推進して結果を出すためには、4つの基本要素の相乗効果を高めることが大切です。それぞれの要素について、詳しくご紹介します。
人
人は、QCサークル活動において最も重要な要素です。
QCサークルは職場の問題や課題の解決のための活動を、全員参加で自発的に行う小集団なため、活動の推進にはメンバーの一人一人が重要な役割を担います。
人の知力や能力をQCサークル活動で活かすためには、「熱意、士気、気力」を高める必要があります。
人が高い知力や能力を持っていても、
- 本当に困っている事柄を改善して、楽に業務を行いたいという気持ち
- ある問題に対し、原因となっている事柄について、全力で改善したいという気持ち
がなければQCサークル活動で、自発的かつ継続的に力を発揮できないからです。
QCサークル活動において人の「熱意、士気、気力」を高めるためには、
- メンバー全員が問題意識を持てる活動テーマの選定
- 社内チーム間での定期的な相互発表会の開催
- 社内外のサークル成果発表会やイベントへの参加
などが非常に効果的です。
グループ力
グループ力とは、全員参加によって集団としての大きな力を発揮することです。グループ力向上には、一人一人が自主性を持って参加していることが欠かせません。
人の知力や能力がサークル内で交わり研鑽され、相乗効果を引き起こすことが期待されているからです。
改善力
QCサークル活動の重要な目的の一つに、職場の問題や課題の解決があります。すなわち、改善力を高めることがQCサークル活動には必要不可欠です。
改善力を発揮するために最も大切なことは、QCサークル活動のテーマ選定です。QCサークル活動では、グループを結成したあとに活動テーマを決めます。
改善力を高めるためには、メンバー全員が問題意識を持てるテーマを選択することが重要です。
以下のようなテーマ設定は、メンバーのモチベーション低下を招き、改善力につながらないので気をつけましょう。
- リーダーや管理者が独断で決めたテーマ
- 実際は大きな問題ではないが何となく決めたテーマ
また、改善力を発揮するためには、早期実行と早期達成を目指すことも必要です。メンバーのモチベーション維持と早急な実行が、改善力につながります。
管理者の支援
QCサークル活動を円滑に進めるためには、管理者の支援も欠かせません。管理者は、企業目標の達成に対して重い責任を負っています。
そのため、QCサークル活動においても、活動目標達成のために適切な支援を行い、高い成果を出せるように導く責任があります。
しかし、管理者をQCサークルに直接参加させてしまうと、権限や影響の強さから、メンバーに過度なプレッシャーを与えてしまうことが懸念されます。
管理者にはあくまで支援者として、QCサークル活動のテーマや進捗状況、個人の能力向上に関心を持ってもらい、適切な指導やサポートを行ってもらいましょう。
管理者に支援をしてもらう具体的なメリットは、
- 客観的に活動内容の指導をしてもらえる
- 必要な知識と技法を教えてもらい習得できる
- トップに活動状況を伝えて理解を求めてくれる
などがあります。
QCサークル活動の進め方
QCサークル活動では、初めのステップであるグループ結成やテーマ選定がとても重要です。
発表のための形だけの活動とならないように、意味のあるQCサークル活動の推進を目指しましょう。
QCサークル活動を効果的に行っていくための進め方を、手順に沿って、解説します。
グループを結成する
まずは、QCサークルのグループ結成を行います。
メンバー選定をするときは、
- 共通の業務を担っている
- 勤務形態が一致していて予定が合わせやすい
人たちでグループを構成することが理想です。
なぜなら、共通業務を担っている人同士であれば、お互いに問題意識の高いテーマ選定ができるからです。勤務形態の一致も、定期的な活動を円滑に行うためには重要な要素です。
また、グループの人数として最適なのは、一般的には5〜7人とされています。5名以下だと人数が少なすぎて、一人一人の負担が大きくなってしまいます。
反対に、8人以上だと人数が多すぎて、一人一人の当事者意識が低くなってしまったり、意見がまとまりにくかったり、ということが懸念されるからです。
活動テーマと目標を決める
活動テーマと目標決めは、QCサークル活動の鍵を握る重要な項目です。活動テーマは、グループメンバー全員が問題意識を持てるものにします。
そのためにも、テーマ選定をするときはメンバー全員で問題点や課題を洗い出し、テーマ案を出していきましょう。
テーマ案を出すときのポイントは、「どの点に困っていて、何を解決したいのか、解決するとどうなるのか」を具体的に説明することです。
目標決めも同じように、「いつまでに、何を、どうやって達成するのか」を具体的な日時や数値で設定しましょう。
活動テーマに合ったQCストーリーを選定する
QCストーリーとは、QC(品質管理)の問題を解決するための進め方のことです。決めたテーマに合ったQCストーリーを選ぶことで、効率的に問題解決のための活動を行えます。
QCストーリーは、4種類の型に分類されます。
- 問題解決型
シンプルに「問題」を解決するための効率的な手順です。そもそも、「問題」とは現状と定常の状態(あるべき姿)とのギャップのことです。
問題解決型のQCストーリーでは、まず現状の問題の原因を突き止めて、適切な対策によって定常の状態に戻し、そのまま安定させることを目指します。 - 課題達成型
問題があまりない現状の状態から、さらに向上を目指したり新たな挑戦をしたりするための効率的な手順です。
課題達成型QCストーリーでは、「ありたい姿」を実現するための課題解決を効率的に進めることを目指します。 - 施策実行型
テーマの問題に対する解決法がすでに分かっていて、スピード感重視で改善を実現するための効率的な手順です。
問題解決型のQCストーリーと違って、問題の原因を突き止めたり対策を考えたりする手順がスキップされているのが特徴となっています。 - 未然防止型
これまでに現場で発生した事故やミスなどの原因を分析して、今後同じ事態が起きないように対策をするための効率的な手順です。
決めた活動テーマは、どのQCストーリーに当てはまるのか、判断して決定しましょう。
活動計画の立案をする
QCサークル活動を本格的に進めていくうえで、活動計画を立案することは大切です。
活動計画がなければ進捗が分からず、活動が間延びしてしまう可能性があるからです。活動計画の具体的な作成事例の代表的なものに、ガントチャートがあります。
ガントチャートとは、横軸に時間、縦軸にメンバーや作業内容を配置したグラフ図のことです。
作業内容やタスクごとに、作業開始日と作業完了日の情報を帯状グラフで管理できます。ガントチャートを使えば、QCサークル活動の進捗の可視化が可能になります。
グループ内での役割分担やそれぞれのタスクも明確になり、情報共有が円滑になることもメリットです。
改善活動を実施する
活動計画の立案が完了したら、選んだQCストーリーに沿って改善活動を実施します。リーダー主体の定期的な会合を行いながら、まずは改善活動案を導き出しましょう。
改善活動案を考えるときも、「いつまでに、何を、どうやって改善するのか」を明確にしておく必要があります。
活動のまとめを行う
QCサークル活動は、改善活動の実施で終わりではありません。
設定した活動テーマや目標に対して、どう達成できたか活動のまとめを行うことも重要な活動の一つです。
活動のまとめをするときは、
- 改善計画に対するまとめ
- 運営方法に対するまとめ
を分けて整理するようにしましょう。
今後のQCサークル活動に役立てるために、誰が見ても分かるようなまとめ資料の作成を心がけてください。
QCサークル活動を成功させるポイント
QCサークル活動を実際に行ってみると、上手くいかないこともあります。QCサークル活動を成功させるポイントについてご紹介します。
「QCの七つ道具」「新QCの七つ道具」を活用する
「QCの七つ道具」とは、改善活動を行うための手法のことです。
品質管理の改善には、データの収集と整理や分析が不可欠です。
以下のQC7つ道具を活用すれば、データの整理や分析ができ、製造現場の問題の「見える化」が可能になります。
- パレート図
- 特性要因図
- グラフ
- ヒストグラム
- 散布図
- 管理図
- チェックシート
QC7つ道具の製造現場での使用例
- グラフ
棒グラフで横軸に時間、縦軸に不良品の発生率を入れ、時間ごとの不良品発生率を可視化する。 - チェックシート
点検用チェックシートの設置。点検項目の抜け・漏れの防止に役立つ。
QC七つ道具はデータの整理や分析、可視化ができることがメリットですが、実際には実測や数値化が不可能な煩雑な問題も存在します。
この問題に対応するために登場したものが、以下の「新QC7つ道具」です。
- 親和図法
- 連関図法
- 系統図法
- マトリックス図法
- アローダイヤグラム法
- PDPC法
- マトリックスデータ解析法
新QC7つ道具では、主に言語データを扱います。
言語データを分かりやすく図や表に整理できるため、数値化が難しい煩雑とした問題の解決が可能です。
新QC7つ道具の製造現場での使用例
- 親和図法
ミーティングやアンケートで複数人から集めた課題や問題に関する発言をグループ化し、分かりやすい親和図として図式化または文章化する。 - 系統図法
設定した目標と手段をツリー状に配置していき、目的に逆行しながら見直せるように図式化または文章化する。
QCサークル活動で改善活動の実施をするときは、収集したデータの特性に応じて「QC7つ道具」や「新QC7つ道具」を活用してみてください。
目標設定は現状と目標を具体的に見えるようにする
目標設定をするときは、現状(ベンチマーク)と目標(活動結果)を具体的に見えるようにすることが大切です。
具体的な指標となる実績やロスなどを、数値で明確にすることを心がけましょう。また、目標を達成するために、目標項目は1〜2個に絞るようにしましょう。
目標項目が多すぎると対応が難しくなり、全て中途半端なまま未達成に終わってしまう懸念があるからです。
活動成果を可視化して報告と伝達をこまめに行う
QCサークル活動中は、活動成果の進捗状況を可視化して、日々確認できるようにします。
具体的には、活動計画を作成するときに使用した、ガントチャートに反映することが重要です。また、上司へのこまめな報告と伝達を行うことも大切です。
活動成果の報告については、上司との定期的なヒヤリングが重要となります。
ヒヤリング日程の設定や調整をあらかじめ完了させておき、定期的に計画通り実施できるよう努めましょう。
QCサークル活動の進め方(まとめ)
QCサークル活動を行うと、職場の問題や課題を解決できるようになります。
同時に、QCサークル活動メンバーの能力向上や、自己啓発も見込めることがメリットです。
QCサークルの活動を推進して結果を出すためには、「人」「グループ力」「改善力」「管理者の支援」といった、4つの基本要素の相乗効果を高めることが重要になります。
また、QCサークル活動を進めるうえで最も大切なのは、テーマの選定とQCストーリーの選択です。
メンバー全員が問題意識を持てるようなテーマを選定して、適切なQCストーリーを型から選んで進めていくことが、活動成功の可否を握ります。
QCサークル活動で実際に改善実施を行うときは、改善活動を行うための手法である「QCの七つ道具」「新QCの七つ道具」を活用しながら、目標に応じて取り組みを行ってみてください。
今日のポイント
- QCサークルとは、職場の問題や課題の解決のための活動を、自発的に行う小集団のこと
- QCサークルの4つの基本要素は、「人」「グループ力」「改善力」「管理者の支援」
- QCサークル活動の進め方はグループ結成に始まり活動のまとめに終わる
- QCサークル活動では活動テーマの選定と適切なQCストーリーの選択が重要
- QCサークル活動の改善活動を成功させるポイントは「QCの七つ道具」「新QCの七つ道具」を活用すること
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