生産性の式5つを紹介【製造業における生産性分析の重要性と注意点】

製造業における生産性は、計算式で導き出せます。生産性の計算式は複数あるため、指標とすべき目的や内容によって使いわけなくてはなりません。

たとえば、生産性の代表的な計算式である「労働生産性」や「資本生産性」は、付加価値額を生産物として計算します。

その他の生産性の計算式には、「労働分配率」、「労働装備率」、「有形固定資産回転率」などがあり、これらは特定の項目を生産物として計算することが特徴です。

今回は、生産性の式5つを初心者向けにわかりやすく解説します。製造業における生産性分析の重要性と注意点も紹介するので、ご参考にしてみてください。

製造業における生産性とは|生産性分析の重要性

生産性とは、生産のために投入した要素の量に対して、どれぐらいの生産物が算出されたのかを確認する指標のことです。一般的には、少ない投入量で多くの生産物を算出できている状態を、「生産性が高い」と評価します。

生産性はビジネスにおいて重視するべき指標の一つであり、生産性向上を目指すことは企業の利益や発展に直結します。特に、製造業において生産性は、常に向上を目指すべき重要な指標の一つです。

製造業において生産性向上は、競争力強化、コスト削減、現代のニーズへの柔軟な対応、従業員満足度の向上などを目指すうえで、不可欠であるからです。日本の製造業の課題である、人材不足やグローバル市場での競争力強化などにも直結します。

生産性の代表的な式5つ

生産性の代表的な式には、付加価値額を生産物として計算する「労働生産性」や「資本生産性」があります。特定の項目を生産物として計算する「労働配率」、「労働装備率」、「有形固定資産回転率」なども重要な生産性の計算式です。

ここでは生産性の代表的な式5つについて詳しく紹介します。

労働生産性

労働生産性とは、投入した「労働量」に対して、どれだけの生産物や成果を出せたかを示す指標です。労働生産性の計算式は、以下のとおりです。

労働生産性(円)=付加価値額(円)÷労働者数(人)or労働時間(時間)

労働生産性の計算式を活用すると、労働者1人あたり、または労働時間1時間あたりの生産量を算出できます。労働生産性は、さらに「物的労働生産性」と「付加価値労働生産性」にわけられます。

物的労働生産性とは、生産物の数量を成果として捉える指標のことです。
たとえば、1人あたり1ヶ月200個の製品を生産した、というように表現し評価を行います。

付加価値労働生産性とは、生産物に対し、企業として生み出した付加価値を成果として捉える指標のことです。たとえば、1人あたり1ヶ月80万円の付加価値を生み出した、というように表現し評価を行います。

労働生産性の指標を活用すると、現状の労働者の業務効率度やボトルネックなどを把握でき、人材配置見直しや労働時間の適正化などに役立てることができます。

資本生産性

資本生産性とは、投入した「資本」や「保有資産」に対して、どれだけの生産物や成果を出せたかを示す指標です。資本生産性の計算式は、以下のとおりです。

資本生産性(円)=付加価値額(円)÷有形固定資産(円)

有形固定資産とは、企業が保有している土地・建物・リース資産などのことです。資本生産性の計算式を活用すると、設備や不動産などの資本が、どれくらいの生産量や成果を生み出せているのかがわかります。

資本の利用頻度や稼働率が高いほど、資本生産性は高くなります。資本生産性の指標を活用すると、資本を削減するべきか、どうすれば有効活用できるのかなどを考えるときに役立てることができるのです。

労働分配率

労働分配率とは、投入した「人件費」の割合が生み出した生産物や成果に対して適正であるかを示す指標です。労働分配率の計算式は、以下のとおりです。

労働分配率(%) = 人件費(円)÷ 付加価値額(円) × 100

労働分配率を計算すると、企業がかけている人件費が適正であるかを判断できます。経済産業省のデータによると、2022年度の製造業の労働分配率は46.6%です。

参照:2023年経済産業省企業活動基本調査(2022年度実績)の結果(速報)

労働分配率は一般的に大企業であれば約50%、中小企業であれば70~80%ほどが適正だといわれています。

労働分配率の指標を活用すると、人件費を削減するべきか、あるいは増やすべきかを考えるときに役立ちます。

労働装備率

労働装備率とは、従業員1人あたりが利用できる設備投資額を示す指標です。つまり、企業が従業員1人あたりに対して、どれくらい設備投資をしているのかがわかります。労働装備率の計算式は、以下のとおりです。

労働装備率(円)=有形固定資産(円)÷従業員数(人)

労働装備率が高いほど、設備投資が進んでいるということになります。しかし、労働装備率が高くても、労働生産性が高くなければ意味がありません。

そのため人員に見合った労働装備を充実させ、業務の効率化を進め、労働生産性を高めることで生産性向上が実現する可能性があります。

有形固定資産回転率

有形固定資産回転率とは、「売上高」と「有形固定資産」の比率をいい、企業が保有している「有形固定資産」が、どれだけの生産物や成果を出せたかを示す指標です。

つまり、土地や建物、機械設備などがどれくらい有効活用できているのかがわかります。有形固定資産回転率の計算式は、以下のとおりです。

有形固定資産回転率(回)=売上高(円)÷有形固定資産(円)

有形固定資産回転率が高いほど、有効活用できているということになります。有形固定資産回転率が低い場合は、売上高を伸ばす必要をありますが、必要に応じて保有する有形固定資産を減らすか有効活用するための改善策を講じる必要があります。

生産性分析をするときの注意点

生産性の分析をするときは、前提として適切な指標を選択するように注意する必要があります。比較対象を適切に設定したり、定期的な分析を行ったりすることも大切です。生産性分析をするときの注意点を解説します。

適切な指標を選択する

生産性を測る計算式は複数あるため、知りたい事柄に対して適切な指標を選択する必要があります。分析目的を明確化し、適切な指標を選択しなければ、問題点や改善点の特定ができなくなってしまうからです。

また、各指標は相互に関連しているため、単一の指標だけでは全体像を把握できないことがあります。分析目的に応じて、必要であれば複数の指標を組み合わせながら、生産性向上に役立てることが大切です。

比較対象を適切に設定する

生産性分析をするときは、他者との比較をすることも重要です。同業種の競合企業などのデータと比較し、自社の生産性向上のための改善案立案に役立てましょう。

ただし、各指標の適正値は、業種や企業規模によって異なりますので、比較対象を適切に設定し分析しなければ、的外れな分析結果を得てしまうことになります。

自社と類似した企業のデータと比較し、特殊な要因などがある場合は考慮するようにしましょう。

定期的な分析を行う

生産性は、短期的な変動に左右されやすい指標です。定期的かつ長期的な視点で分析することで、より正確な評価が可能になります。都度、多数の指標を照らし合わせて判断することも大切です。

生産性の式を活用して生産性向上に役立てよう(まとめ)

生産性を測るときに役立つ計算式は、複数あります。中でも、「労働生産性」と「資本生産性」の指標は代表的で、付加価値額を生産物として計算することが特徴です。

「労働配率」、「労働装備率」、「有形固定資産回転率」の指標も生産性を測るために大切な指標で、特定の項目を生産物として計算します。

生産性分析を行うときは、前提として適切な指標を選ぶ必要があります。計算式の結果は自社と類似した企業のデータと比較し、分析は定期的に行いながら、生産性向上のための改善案立案・実行に活かすことが大切です。

今日のポイント

  • 製造業における生産性は計算式で導き出せる
  • 生産性の代表的な式5つは「労働生産性」、「資本生産性」、「労働配率」、「労働装備率」、「有形固定資産回転率」
  • 生産性分析をするときの注意点は適切な指標の選択、比較対象の適切な設定、定期的な分析実施など
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