稼働率と可動率の違い|計算式と数値を上げる方法4つ

製造業において稼働率(かどうりつ)と可動率(べきどうりつ)は混合されがちですが、それぞれ違う意味を持っています。稼働率は製品の生産効率を表すもの、可動率は設備の運転効率を表すものです。

実は読み方も違いますが、どちらも「かどうりつ」と認識されていることもあり、同じものとして扱われてしまっているケースがあります。製造業において稼働率と可動率の違いを理解していないと、改善業務に取り組むときに、問題が生じる可能性があるため要注意です。

今回は、稼働率と可動率の違いを、初心者向けに解説します。それぞれの計算式や稼働率、可動率の数値を上げる方法4つも紹介するので、ご参考にしてみてください。

稼働率と可動率の違い

稼働率と可動率の違いは、何のどんな効率を表しているのかにあります。稼働率(かどうりつ)は、製品の生産効率を表すものです。生産計画での生産量または時間に対して、実際に生産された量または時間の比率を意味します。

可動率(べきどうりつ)は、設備の運転効率を表すものです。設備の正常時の生産時間に対して、実際に動いて生産をした時間の比率を意味します。

稼働率は「稼ぎ」を示す経営的な観点、可動率は設備の「動き」を示す現場的な観点です。

稼働率と可動率の計算式

稼働率と可動率は、それぞれ以下の計算式で導き出せます。

  • 稼働率=実際の生産量・時間÷生産計画の生産量・時間×100%
  • 可動率=実際の生産時間÷設備の正常時の生産時間×100%

稼働率も可動率も、100%に近いほど理想的な状態であるといえます。ただし、稼働率が100%を超えている場合は注意も必要です。
※可動率は性質上100%を超えることはありません

稼働率は需要や注文が多いと100%を超えることがあります。一時的な現象であれば、問題なく対応できるかもしれませんが、どこかにムリが生じている可能性があります。

稼働率と可動率を意識するときは、ムリが生じないように、現場の状況と需要や注文のバランスを調整することが大切です。

稼働率や可動率の数値を上げる方法4つ

稼働率や可動率が低いということは、どこかに改善の余地があるということです。100%を目指して数値を上げられるように、改善をしていきましょう。稼働率や可動率の数値を上げる方法4つを紹介します。

設備メンテナンスや点検で故障やエラーを未然に防ぐ

設備のトラブルなどは、稼働率と可動率の両方を低下させます。設備トラブルの代表的な原因の一つに、長期使用による老朽化や劣化があります。製造業において設備の老朽化や劣化は必ず直面する問題であり、深刻な場合は買い替えの検討も必要です。

しかし、設備を長期使用していないにも関わらず、停止時間などが多い場合は、日常のメンテナンスや点検不足の可能性があります。設備のトラブルを防ぐために日常的なメンテナンスや点検はとても重要で、老朽化や劣化を防ぐ役割もあります。

稼働率と可動率を上げるためには、設備の定期的なメンテナンスや点検で、故障やエラーを未然に防ぐことがとても大切です。

チョコ停やオペレータ待ちの時間を原因究明して削減する

チョコ停の多発やオペレータ待ちのロス時間も、稼働率と可動率の両方を低下させます。チョコ停やオペレータ待ちの時間は短時間であることから、あまり重要視されていません。

しかし、軽微なロス時間でも、何度も発生すれば、おのずと稼働率と可動率を低下させる大きな要因になります。そのためチョコ停やオペレータ待ちの時間が発生する、原因究明や改善を行うことが重要です。

原因が判明したら必要な対策を実施し、作業方法などを改善することで発生を抑止したり、チョコ停やオペレータ待ちなどが発生した場合に、迅速に対応できるようにしたりしましょう。

段取替えによる停止時間を改善する

段取替えによる停止時間についても、稼働率と可動率の両方を低下させます。ただし、段取り替えによる停止時間が問題となるのは、同じラインで複数品目を作っている現場の場合です。

一般的に専用ラインではなく、同じラインで複数品目を作っている現場では、次の品目を製造するための段取替えの作業は発生するため、段取替えの時間を無くすことはできませんが、その時間を短縮できるように改善することは可能です。

具体的には、部品を準備する手順の見直し、複数人による並行作業で製造環境を早く整えられるよう、工夫することで段取り替えの時間を短縮することを目標に改善活動を実施しましょう。

計画非稼働時間や臨時休業のスケジュールを調整する

計画非稼働時間や臨時休業は、稼働率を低下させます。※可動率は設備の運転効率を表すものです。

計画非稼働時間や臨時休業時は、そもそも設備を動かさないため、可動率の低下には影響しません。経営判断として工場や設備の稼動を意図的に止める場合は、本当に適切な判断かを慎重に検討するようにしましょう。適切な判断をするためには、需要に合った生産能力調整や、スケジュール調整が有効です。

稼働率と可動率の違いを理解して改善に活かそう(まとめ)

稼働率(かどうりつ)と可動率(べきどうりつ)は、意味が違います。稼働率は製品の生産効率を表すもので、可動率は設備の運転効率を表すものです。どちらも製造業において、適正な生産現場になっているかを判断できる、重要な指標になります。

稼働率と可動率は、100%に近い状態が理想的です。ただし、稼働率が100%を超えている状態は要注意です(可動率が100%を超えることはありません)。稼働率の超過状態は、需要と生産のバランスが崩れている可能性が高く、設備や従業員に大きな負荷がかかっているケースがあります。稼働率と可動率の数値を改善活動によって上げるときは、ムリが生じてないか注意しながら進めるようにしましょう。

今日のポイント

  • 稼働率は製品の生産効率を表すもので可動率は設備の運転効率を表すもの
  • 稼働率の計算式は「実際の生産量・時間÷生産計画の生産量・時間×100%」
  • 可動率の計算式は「実際の生産時間÷設備の正常時の生産時間×100%」
  • 稼働率や可動率の数値を上げる方法4つは「設備メンテナンスや点検で故障やエラーの未然防止」「チョコ停やオペレータ待ちの時間を原因究明して削減」「段取替えによる停止時間の改善」「計画非稼働時間や臨時休業のスケジュール調整」
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