工場の自動化に成功した企業の事例5つ【導入メリットやデメリット】

工場の自動化が世界中で進んでいます。工場の自動化は、各国の製造業の問題や課題を解消し、生産性向上に貢献しています。しかし、実際に工場を自動化するとなると、

  • 何から取り組めばいいのかわからない
  • 導入システムがどんな利益をもたらすのか想像できない

など、具体的なイメージを抱きづらく、ハードルが高いと感じている経営者も多いでしょう。そんなときは、実際に日本で工場の自動化に成功した企業の事例を、参考にすることがおすすめです。今回は、工場の自動化に成功した日本の企業の事例5つをご紹介します。工場を自動化するメリット・デメリットも解説するため、ご参考にしてください。

工場の自動化とは

工場の自動化(ファクトリーオートメーション)とは、工場内の生産に関わる受注、設計、生産などの各工程を、システムやロボットを導入して自動化することです。

工場の自動化には、主に以下の2種類があります。

  • ハードウェアによる自動化
  • ソフトウェアによる自動化

まず、ハードウェアによる自動化とは、ロボットを導入して人の負担を大きく軽減することです。重たいものを運ぶ運搬作業や疲労が積み重なる単純作業などを、ロボットに代替してもらうことで、作業者の負担を軽減することが可能となります。

ソフトウェアによる自動化とは、生産システムや人工知能などを導入し、手作業で行っていた作業を代替してもらうことです。こちらは自動化するだけではなく、人間の目では感知できないような異常を検知したり、高度な判断を下したりと、従業員をサポートしてくれる機能もあります。

工場の自動化では、ハードウェアとソフトウェア、両方を融合して実現していく必要があります。アナログ的な業務の多い日本の工場で自動化を進めていくのは、簡単なことではありません。しかし、工場の自動化は日本の問題点である労働人口不足や過労働などの問題を解消しながら、生産性も高めてくれる革新的な試みです。

工場の自動化に成功した日本の企業の事例5つ

工場の自動化を目指すときは、具体的な成功事例を知っておくと、計画を立てやすくなります。日本で工場の自動化に成功した企業は、すでにたくさんあります。工場の自動化に成功した日本の企業の事例5つをご紹介します。

1.協働ロボットとパレットストレージ導入で仕分けと積み荷を自動化

医療機器を製造する会社では、製品の出荷工程で重さ12kgの製品を従業員2名が手作業で仕分け・積み荷していました。重たい製品の仕分けや積み荷は負担が大きく、疲労も積み重なることが問題でした。そこで、出荷工程に協働ロボットとパレットストレージを導入。コンベアーで製品を自動仕分け→ロボットが製品をピッキング→パレットストレージが積み荷と、出荷工程の流れを完全に自動化。労働生産性は1.5倍に、必要な人数は6人から4人へと省人化にも成功しました。

参考出典:http://robo-navi.com/webroot/document/2018RobotHandBook.pdf

2.高度精密生産品の製造をロボットで代替し完全無菌化に成功

化粧品を製造する会社では、繊細なマイクロニードル製品の生産にロボットを導入しました。マイクロニードル製品の製造工程は精密かつ複雑であったため、導入前は熟練した従業員に製造を頼っており、少ない数しか生産できないことが課題でした。ロボット導入後は、労働生産性が4倍にも向上。必要な人数も、8人から2人へと大きく減少しました。無菌性にも配慮が必要でしたが、ロボットが製造することにより、完全無菌化に成功したこともメリットです。

参考出典:http://robo-navi.com/webroot/document/2018RobotHandBook.pdf

3.手作業で行っていた繊細で複雑な全ての工程をロボットで自動化

化粧用ブラシを製造する会社では、計量や接着、バリ取りなどの工程を全て手作業で行っていました。職人の高齢化や、市場競争によるコストダウンを迫られていたことなどが課題でした。そこで、手作業で行っていた全ての工程を、ロボットで自動化。労働生産性は30倍、必要な人数は6人から2人に減少しました。短納期と生産性向上が実現したのです。

参考出典:http://robo-navi.com/webroot/document/2018RobotHandBook.pdf

4.物流倉庫のピッキングと搬送を自走式ロボットに一任

物流サービス業の会社では、倉庫のピッキングを人が行っていました。自走式ロボットを導入すれば自動化できると考え、ピッキング作業の完全自動化を目指したのです。結果、ピッキング作業から搬送まで、ロボットが全て行えるようになりました。生産労働性は1.6倍に、必要な人数は18人から11人に減少しました。

参考出典:http://robo-navi.com/webroot/document/2018RobotHandBook.pdf

5.箱詰め作業を多関節ロボットで自動化し生産数が2倍に向上

印刷関連の事業を展開する会社では、人が手作業で製品を箱詰めしていました。従業員によって生産数にばらつきが生じていたため、生産数の把握が難しいこと、非効率的であることが課題でした。そこで、箱詰め作業工程に多関節ロボットを導入。箱詰め作業を自動化することで、生産数は2倍になりました。労働生産性は5倍に、必要な人数は4人から2人になり、省人化にも成功しました。

参考出典:http://robo-navi.com/webroot/document/2018RobotHandBook.pdf

工場を自動化するメリット

工場を自動化すると、品質面、コスト面、労働面など、さまざまな点でのメリットがあります。自動化の完全実現までには時間がかかりますが、得られるメリットは大きく、企業存続のために欠かせない取り組みでもあります。ここでは工場を自動化するメリットをいくつかご紹介します。

品質が安定する

人の手作業では、どうしても品質にばらつきが生じてしまいます。ヒューマンエラーによる不良品発生なども、0にはできません。

最新の機械設備やロボットを導入すれば、人の手作業による品質の不安定さから、脱却できることが大きなメリットです。ヒューマンエラーが発生する心配も少なく、自動化により安定した業務の維持管理が出来ます。手作業で取り組むよりも効率的に生産できるようになるため、高品質な製品を短時間で、無理なく多くの製品を製造できるようになります。

働き方改革を起こせる

多能工化が進むと、業務負荷の偏りも減少します。業務が集中する工程に人員投入できるようになるため、業務負荷の均等化を実現できます。特定の従業員だけ、残業や休日出勤が発生するような労働環境問題を解消でき、結果的に働き方改革を起こせることがメリットの一つです。働き方改革によって従業員の疲労負担を減らすことにより、生産性向上にもつながります。

人手不足問題を解消できる


日本の製造業では、人手不足が深刻化しています。人手不足は過労働にもつながる、重要な問題です。システムやロボットの導入で工場を自動化できれば、省人化が実現します。少ない人数で高い生産性を保てるため、人手不足問題に対処できるようになります。危険な作業や重労働を、機械やロボットに任せられるようになることもメリットです。

夜間勤務や残業、休日出勤の回数も少なくなるなど、従業員の働き方改革にもつながります。とはいえ、工場の自動化が実現したからといって、完全に人が必要なくなるわけではありません。システムや機械の点検、運営などにはまだまだ多くの人の力が必要不可欠です。

マーケティングや企画開発などにおいては、自動化による人工知能の判断だけには任せられないような業務もまだ多くあります。工場の自動化は、人と機械との業務分担を意味する取り組みです。

工場稼働率が上がる

工場が自動化すれば、365日24時間稼働が可能になります。工場内の管理も少ない人数で対応出来るようになるため、従業員の休暇などによって、生産ラインを停止せずに安定して生産出来るメリットがあります。工場の自動化では、人手不足問題の解消と工場稼働率の上昇、生産性向上を両立して目指せます。

作業環境を改善できる

工場の自動化では、機械やロボットに任せられることから積極的に推進していきます。また重労働や危険性の高い作業を機械に任せられるようになるため、従業員の負担や労災リスクが減ることも大きなメリットです。

作業環境が改善されれば、生産性が高くなり多くの場合において離職率も減少します。工場の自動化は、従業員にとっても働きやすい環境を得ることが出来ます。

工場を自動化するデメリット

工場の自動化は革新的な取り組みですが、いくつかのデメリットもあります。しかし、自動化によるデメリットを把握しておけば対策が検討できるため、事前に認識しておくことが非常に重要です。ここでは工場を自動化するデメリットをご紹介します。

設備導入のコストがかかる

工場の自動化は、システムやロボット導入が必須となります。特に大型ロボットの導入は、初期費用の負担が大きいことがデメリットです。ただし、工場の自動化が実現することによって得られるメリットを考えると、取り組む価値は十分にあります。長い目で見ると大きな利益を生む取り組みであるため、初期費用の負担だけで判断しないように長期的な目線で考える必要があります。

また、工場の自動化のための設備導入は、国の補助金を活用する手段もあります。例えば、中小企業庁と独立行政法人中小企業基盤整備機構が制度化した「ものづくり補助金」では、生産性向上につながる設備の導入を支援してもらえます。

対象条件を満たしていれば、最大1,000〜3,000万円の補助が受けられます。
※企業規模や分野などにより補助上限額や補助率は変動

他にも、国や自治体の補助金制度が適用される可能性もあるため、工場の自動化を検討するときは確認してみましょう。

人の仕事がなくなる不安が生じる

ロボットによる自動化によって、従業員は自分の仕事がなくなるのではないかという不安を感じてしまう可能性があります。その不安から、工場の自動化に反発も出るかもしれません。工場の自動化は、人を排除することを目的としているわけではありませんし、実際には自動化を運用するために、人の手も必ず必要になります。

そのため機械やロボットで代替できない分野で、人の能力が生かせるようになるため、心配はいらないことを従業員にしっかり説明して理解してもらうことです。機械やロボットとの協働によって得られるメリットを体感してもらいながら、自動化を進めていけば、反発も起こりにくく円滑に取り組みを推進できます。

工場の自動化は企業存続に関わる重要な取り組み(まとめ)

工場の自動化が世界中で推進されている理由は、各国の問題や課題を解消するだけでなく、目まぐるしく早いスピードで変動している市場のニーズに合うように、生産性を高めていけるからです。

日本の製造業では人手不足や過労動が大きな問題となっていますが、機械やロボットによって業務の省人化が実現すれば、少ない人数でも高い生産性を確保出来ます。実際に、日本の企業の事例を見てみると、工場の自動化に成功して労働問題や安全問題、コスト問題など、さまざまな課題を解消して企業利益を高めています。

工場を自動化するデメリットに、設備導入によるコスト負担がありますが、国の補助金を活用したり徐々に導入したりしておくことで、負担は軽減できます。また、工場が自動化すると人の手がいらなくなり、働きたい人が働けなくなるのではないかという懸念もありますが、その心配はありません。

工場の自動化は人の負担を和らげて、効率良く生産性を高めていくことです。
人にしかできない業務はどの業界でも必ずあるため、機械やロボットに全てを代替されると思うのではなく、業務分担をするという協働の意識を持つことが大切です。

今日のポイント

  • 工場の自動化とは工場内の生産に関わる受注、設計、生産などの各工程をシステムやロボットを導入して自動化すること
  • 工場を自動化するメリットは「品質の安定」「人件費削減」「工場稼働率の向上」「作業環境の改善」
  • 工場を自動化するデメリットは設備導入のコストがかかることと人の仕事がなくなる不安が生じること
  • 工場の自動化による懸念は国の補助金を活用したり人とロボットの協働を目指すことで解消できる
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