労働生産性の指標は何に役立つ?IT導入補助金を受ける条件や5つの生産性指標

労働生産性の指標は、自社の業務効率性や、生み出している付加価値の量を、知りたいときに役立ちます。経営資源の活用を適切に実施できているかどうかを数値としてわかるため、企業の経営にとっては欠かせない分析です。労働生産性の指標を活用すると、客観的に企業の生産能力を表せるメリットもあります。

自社の経営方針に活かすのはもちろん、補助金などを受けるときの要件として、使われることもあるのが特徴です。今回は、労働生産性の指標は何に役立つのかを具体的に解説します。

  • IT導入補助金を受けるために必要な労働生産性の要件
  • 労働生産性をさらに深く分析できる5つの生産性指標

についても解説するため、ご参考にしてみてください。

労働生産性とは

労働生産性とは、従業員1人あたりまたは1時間あたりに生産できる成果を数値化したものです。労働生産性は、以下の2種類があります。労働生産性を算出することにより、企業の経営状況や課題がみえてきます。

①付加価値労働生産性:生み出した成果に対しての付加価値を表す

【従業員1人あたりの付加価値労働生産性を求めたいときの計算式】

付加価値額÷従業員数

【労働時間1時間あたりの付加価値労働生産性を求めたいときの計算式】

付加価値額÷(従業員数×労働時間)

②物的労働生産性:成果に対しての生産量や金額などを表す

【従業員1人あたりの付加価値労働生産性を求めたいときの計算式】

生産量÷従業員数

【労働時間1時間あたりの付加価値労働生産性を求めたいときの計算式】

生産量÷(従業員数×労働時間)

労働生産性の指標は投入した労働に対する成果がわかる

企業利益を追求するためには、少ないコストで多くの成果を生み出す必要があります。特に製造業では人員不足が深刻化しているため、少ない従業員と短い労働時間で、多くの生産数や付加価値を生み出すことが求められます。

労働生産性の指標は、投入した労働に対する成果を明確にできるため、生産性を向上させるのに必要な課題や改善点が見つかることがポイントです。客観的なデータになるため、競合他社と比較したり自社の前年比を割り出したりと、参考となる分析の一つとなります。

IT導入補助金を受けるために必要な労働生産性の要件

IT導入補助金とは、ITツールを導入する経費の一部を補助してくれる制度のことです。主に中小企業や小規模事業が対象で、自社の課題やニーズに合った、ITツールを導入することが条件で、IT導入補助金を受けるための申請の要件には、労働生産性の伸び率向上があります。

具体的には補助金を受けてITツールを導入することで、労働生産性が1年後に3%、3年後に9%以上、もしくは、これらと同等以上の数値目標を作成しなくてはいけません。

IT導入補助金の申請要件における労働生産性の計算式

労働生産性=粗利益(売上―原価)÷(従業員数×1人あたりの労働時間(年平均))

IT導入補助金の制度利用を検討するなら、あらかじめ現状の自社の労働生産性を算出し、現実的な生産性向上計画を立てることが大切です。

参考出典(IT導入補助金2022):https://www.it-hojo.jp/overview/

労働生産性をさらに深く分析できる5つの生産性指標

労働生産性は、付加価値や生産量などを成果として計算する指標です。

しかし、生産性は労働力や成果だけでなく、場合によっては有形固定資産を効率的に活用できているか、また設備投資額が適切であるかなどで判断する必要もあります。ここでは労働生産性をさらに深く分析できる5つの生産性指標を紹介します。

労働分配率

労働分配率とは、付加価値額のうち、給料など人件費の割合を表す指標です。

計算式

労働分配率=(人件費÷付加価値)×100

労働分配率の指標分析は難しく、高すぎると利益を圧迫し、低すぎると従業員から、不満が生じやすい問題があります。企業利益をしっかり確保しながらも、従業員にとって納得できる給料を支払えている状態が、理想的です。

設備投資効率

設備投資効率とは、生産設備がどれだけ付加価値を生み出しているかを表す指標です。

計算式

設備投資効率 =(付加価値額 ÷ 平均有形固定資産)× 100

設備投資効率の数値は大きいほど、資産生産性が高いということになります。反対に数値が小さいと、投資した設備に対して、十分な利益が得られていないことになります。

有形固定資産回転率

有形固定資産回転率とは、有形固定資産(土地や設備など形がある資産のこと)から効率的に売上が発生しているかを表す指標です。

計算式

有形固定資産回転率 = (売上高 ÷ 有形固定資産) × 100

有形固定資産回転率の数値は大きいほど、有形固定資産における生産性が高いということになります。

労働装備率

労働装備率とは、従業員1人あたりにおける、設備投資額の割合を表す指標のことです。

計算式

労働装備率 = (有形固定資産 ÷ 従業員数) × 100

従業員1人あたりに、有形固定資産がどれくらい割り当てられているのかを示します。ただ、労働装備率は業界によって数値が大きく異なり、分析できる意味も違ってきます。

例えば、地方の大規模な工場では、土地や設備が多く数値が高くなりますが、デスクワークが主流の都心のオフィス企業では、数値は低くなる傾向にあります。労働装備率の指標を参考にするときは、同業種の似た規模感の企業と比較するようにしましょう。

売上高付加価値率

売上高付加価値率とは、売上高に占める付加価値額の割合を表す指標のことです。

計算式

売上高付加価値率=付加価値額÷売上高

売上高付加価値率の数値は大きいほど、売上に対して付加価値が高いということになります。新製品の売上に対する、付加価値の割合を把握したいときなどに役立ちます。

労働生産性の指標は自社の経営分析に役立つ(まとめ)

労働生産性の指標は、自社の業務効率性や、生み出している付加価値の量を把握するのに欠かせません。企業にとって労働生産性を向上させることは、利益追求に直結します。客観的なデータとなるため、IT導入補助金などの申請要件に関わることもポイントです。

労働生産性の指標は①付加価値労働生産性②物的労働生産性がありますが、生産性の指標はそれだけではありません。生産設備がどれだけ付加価値を生み出しているかを表す「設備投資効率」や、従業員1人あたりにおける設備投資額の割合を表す「労働装備率」などの指標もあります。

自社の経営分析をするときは、何を知りたいのかによって、生産性の指標を使い分けて分析することが大切です。

今日のポイント

  • 労働生産性の指標は自社の業務効率性や生み出している付加価値の量を知りたいときに役立つ
  • 労働生産性とは従業員1人あたりまたは1時間あたりに生産できる成果を数値化したもの
  • 労働生産性や人時売上高との違いは扱う成果にあり、人時生産性が対象とするのは粗利益
  • IT導入補助金を受けるためには労働生産性が向上する見込みがあることを示す必要がある
  • 労働生産性をさらに深く分析できる5つの生産性指標は「労働分配率」「設備投資効率」「有形固定資産回転率」「労働装備率」「売上高付加価値率」
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