生産管理とは?7つの業務内容と向いている人の特徴
生産管理とは、QCD(品質、原価、納期)を最適化するために、各工程を管理することです。製造業では、高品質な製品を、原価を抑えて、納期までに生産することが大前提となります。
そのため製造業では生産管理の一環として需要予測から工程管理まで、幅広く管理する必要があります。
しかし生産管理の業務内容は多く、担当する業務は多岐に渡るため、「きつい」「難しい」とよく言われ、多くの場合では敬遠されやすい業務でもあります。
そういった中で生産管理業務に能力を発揮できる方も当然、存在します。生産管理の業務が向いている人が担当すれば、適材適所の結果、企業の成長が期待できます。今回は、生産管理の基本と7つの業務内容をご解説します。
生産管理が向いている人の特徴もご紹介するため、ご参考にしてください。
コンテンツ
生産管理とは?
製造業における生産は、需要予測と生産計画の立案、原材料や資材の調達に生産の実施、品質を保つための人員や設備の調整、在庫や工程の管理など、さまざまな業務の上で成り立っています。
各業務は互いに影響し合いながら生産活動として機能するため、QCD(品質、原価、納期)を最適化するには、すべてを統括的に管理しなくてはいけません。
生産管理とは、生産活動全体を統制する管理業務全般のことを指します。
生産管理の7つの業務内容
生産管理の業務内容は、主に以下の7つです。
- 需要予測
- 生産計画
- 調達・購買計画
- 生産実施・制御
- 品質管理
- 在庫管理
- 工程管理
生産管理の7つの業務内容とフローを、食品加工の製造ラインを例にしながらご解説します。
1.需要予測
需要予測とは、さまざまなデータや要因を元にして、自社製品の受注量を予測することです。需要予測よりも実際の受注量が多い場合、在庫不足で機会損失が生じます。
反対に需要予測よりも実際の受注量が少ない場合は、在庫過多でロスになってしまいます。特に大量生産製品の場合は、市場での需要量を判断し、予測を立てた上で生産活動を開始することが、あらゆるロスの削減につながります。
参考にするのは過去の受注データや販売計画、季節による影響、国の景気、競合他社の情報などです。
食品業界では、食品生産量の約3分の1が廃棄されています。
食品ロス問題は企業の収益悪化問題だけでなく、環境問題やグローバルな問題にも関わります。
在庫不足で機会損失を生じさせないような需要予測も大切ですが、適切な需給バランスの見極めが、企業のためにもあらゆる問題解決のためにも重要です。
2.生産計画
生産計画とは、需要予測に基づいて生産する製品の種類、数量、時期などを決定し、生産活動の計画を立てることです。
生産に必要な資材や設備の調整、人員確保の計画なども行います。
生産活動では生産計画に沿って製造を進めていくため、とても重要な業務です。食品加工の生産計画は、スケジュールにゆとりを持って立てることが大切です。
食品には消費期限があるため、無理のある生産計画により、生産の遅れやトラブルが生じると、調達した原材料が使えなくなってしまう可能性があります。
結果的に生産計画の立て直しになることもあるため、生産計画の立案には消費期限などを考慮した緻密な計画の立案を要します。
3.調達・購買計画
調達・購買計画とは、生産に必要な資材や原材料を、生産計画通りに仕入れられるよう手配することです。
必要な資材や原材料を計画通りに仕入れられなければ、生産をスタートすることができません。しかし、供給不足を恐れて必要以上の数量を仕入れてしまうと、資材や原材料のロスが生まれます。
生産計画通りに、バランス良く安定した資材や原材料を調達・購買できるような、購買計画の立案をする必要があります。食品加工では、品質の高い原材料を予定通りに確保することが前提となります。
原材料の状態や価格、仕入れられる量は季節や市場の状況によっても変動します。仕入先の状況を常に把握し、安定的に仕入れられる調達・購買計画を立てる必要があります。
4.生産実施・制御
生産実施・制御とは、生産計画通りに仕入れた資材や原材料を使い生産活動を行い、もしもイレギュラーな事柄が発生したときには、必要に応じて製造ラインを制御することです。
イレギュラーな事柄とは、内部、外部的な要因でさまざまな事例があるとは思いますが、主に災害の影響による受注量の変更や急な飛び込み注文などが挙げられます。
実際に食品業界では、稀に異物混入や容器破損などのトラブルなどがあります。
生産計画通りの生産実施をしながらも、問題が生じたときはスピーディかつ無理なく制御できる管理体制を整えておくことが重要です。
5.品質管理
品質管理とは、適切な手順で製品が製造されているかを確認し、高い品質を保てるように検査や調整をすることです。
品質検査では、資材、仕掛け品、部品、完成品などを、それぞれ細かい項目でチェックします。不良品発生の原因究明や改善なども、品質管理に含まれる項目です。
特に生産する製品が食べ物である食品加工業では、高い品質を保つことがとても重要です。品質管理の不備により、時として人の命に関わることもあります。
食品加工の品質管理では、消費期限や製造環境の温度などをはじめ、あらゆる項目を徹底して管理しなくてはいけません。
6.在庫管理
在庫管理とは、正しい在庫数を把握し、いかに効率良く消費できるか管理することです。調達・購買計画と連携しながら、適正在庫を保つことも重要になります。
また、需要予測よりも受注量が大幅に多くなったり、生産計画に対して遅れが生じたりする可能性もあります。
想定外の事態が起きても適正在庫を保ち、修正を行うには、日頃の徹底した在庫管理がキーポイントとなります。
食品加工の在庫管理では、重要な要素である消費期限別に管理をするケースが多く見受けられます。このような管理を行うことが、原材料の廃棄ロスを減らすために特に有効です。
7.工程管理
工程管理とは、各工程に標準リードタイムを設定するなど、生産全体の効率化を目指して管理することです。
生産活動では、複数の工程が互いに影響し合いながら存在しているため、それぞれの工程を適切に管理することが、生産全体の効率化につながります。
食品加工の工程管理では、各工程の環境が適切であるかのチェックも欠かせません。食品は鮮度が重要で、温度や保管方法など少しの違いによって、状態が変化します。
標準リードタイム通りに進んでいるかどうかだけでなく、適切な環境が整っているかも管理します。
生産管理業務が向いている人の特徴
生産管理の業務は、製造業の企業の発展と成長、競争力向上のためにとても重要です。製造業におけるキーマンである生産管理業務が向いている人の特徴をご紹介します。
定量的な判断ができる
生産管理は、需要予測や生産計画の立案に必要なデータを分析したり、製造量や製造ラインの作業時間を計算したりと、多くの数字に触れる業務です。
数値や数量で適切な答えを導けるような、定量的な判断ができる人に向いています。また、ロジカルシンキングが得意な人にもおすすめです。
例えば不良品が発生したときには、感情的な判断ではなく、論理的に原因を追求して改善案を考える場合に有効になります。
俯瞰的な視野でのマネジメントが得意
生産管理では、製造プロセス全般の管理を行うことになります。工程一つ一つに気を配りながら、全体の生産工程を俯瞰的に視野で管理しなくてはいけません。
管理する立場として、時には生産計画の一部を変更し、目先の納期を守るために工程を柔軟に調整できるような能力も求められます。
統制力とコミュニケーションスキルがある
生産管理は、さまざまな部門との関わりが多い業務です。ときには、営業部や生産技術部など異なった部門間の意見による板挟み状態になることもあります。
各部門を説得したり交渉を持ちかけたりしなくては解決できないこともあるため、コミュニケーションスキルが高いことが重要な資質となります。
生産管理は、製造プロセスの全般の司令塔としての役割を担っています。的確な指示を出して従ってもらえるような、統制力も求められる業務です。
生産管理業務が向いていない人の特徴
生産管理業務が向いていない人の特徴は、感覚的で物事を俯瞰的に判断するのが苦手な人です。生産管理には定量的な判断力と論理的思考がないと、担当するのは難しくなります。
また、生産管理は管理者かつ統制者のポジションになるため、受け身でコミュニケーションスキルに自信がない人も向いていません。
しかし、生産管理業務だけでは製造業は成り立ちません。人には適材適所がありますので生産管理業務にいなくとも、他の分野の業務で力を発揮できる可能性が十分にあります。
実際に生産管理業務は難しく、人がアナログ的に管理するのは現実的ではない側面もあります。そのため多くの企業では生産管理システムを導入し、人による生産管理業務の負担を軽減しています。
生産管理システムを導入すれば、属人的な管理方法に頼ることなく、効率的に生産管理業務ができることが最大メリットです。
生産管理が担当する業務は幅広い(まとめ)
生産管理は製造業の発展や成長、競争率を高めるために重要な業務です。
生産管理の目的はQCD(品質、原価、納期)の最適化で、高品質な製品を、原価を抑えて、納期までに生産する必要があります。
生産管理が担当する業務は幅広く、需要予測と生産計画の立案、原材料や資材の調達に生産の実施、品質を保つための人員や設備の調整、在庫や工程の管理など、多岐に渡ります。
そのため、生産管理は難しくきつい業務だと言われていますが、中には向いている人もいます。生産管理が向いているのは、定量的な判断と俯瞰的な視野でのマネジメントを得意とし、統制力とコミュニケーションスキルがある人です。
上記のような特徴を持っている人に生産管理業務を任せれば、力を発揮してくれるでしょう。複雑な生産管理業務の負担を軽減するために、生産管理システムを導入する手段もあります。
今日のポイント
- 生産管理とは、QCD(品質、原価、納期)を最適化するために、各工程を管理すること
- 生産管理の7つの業務内容は「需要予測」「生産計画」「調達・購買計画」「生産実施・制御」「品質管理」「在庫管理」「工程管理」
- 生産管理業務が向いているのは定量的な判断と俯瞰的な視野でのマネジメントを得意とし、統制力とコミュニケーションスキルがある人
- 生産管理業務が向いていないのは感覚的で物事を俯瞰的に判断するのが苦手で、受け身かつコミュニケーションスキルに自信がない人
関連記事
-
QC7つ道具を初心者向けに解説!覚え方や使い方を5ステップで紹介
2022年7月4日
-
工場のヒヤリハットの原因4つ!対策と改善案のネタ切れに役立つ事例も紹介
2024年4月5日
-
業務改善で問題点の洗い出しをする方法3つ!重要な理由と注意点もご解説
2022年3月3日
-
カイゼンは時代遅れ?トヨタ式の基本や進め方・具体例3つを紹介
2022年7月19日
-
生産性向上の代表的な課題5つと対処法|製造業における重要性
2024年6月13日
-
労働生産性を上げるには労働環境の見直しが大切【向上させる4つの方法と低い理由】
2023年9月12日
-
改善点とは?製造業における意味と洗い出すときに必要な7つの視点
2023年5月23日
-
生産管理システムを製造業の中小企業が自作する方法3つとメリット・デメリット
2022年2月14日
-
生産性の計算式4つを初心者向けに徹底解説【エクセルでの算出方法も】
2022年12月27日
カテゴリー
- IT化
- QCD
- QCサークル
- コスト削減
- コンサルタント
- スマートファクトリー
- ボトルネック工程
- 中小企業
- 労働生産性
- 合理化
- 品質担保
- 品質管理
- 在庫管理
- 工場IoT
- 工場効率化
- 工程管理
- 工程管理システム
- 投入資源
- 業務効率
- 業務改善
- 生産ライン
- 生産性向上
- 生産管理
- 生産管理システム
- 経費削減
- 製造業
- 製造業 DX
- 製造業IoT
- 見える化
- 設備管理
新着コラム
-
2024年10月25日
製造業のDX事例を10個ご紹介!各企業に分けて徹底解説
-
2024年10月25日
製造業のDX推進に役立つツールを徹底解説!DXツールを導入するメリットとは?
-
2024年10月25日
製造業におけるDXの課題とは?DXの取組事例や進めるための手順をご紹介!
-
2024年10月3日
個別最適と全体最適とは?両方のバランスを上手くとる方法4つとそれぞれの特徴を解説!
-
2024年10月3日
製造業の利益率の目安とは?計算方法5つや向上させる方法を解説!
-
2024年10月3日
部分最適とは?メリット3つとデメリットを徹底解説!進めるポイントも
-
2024年9月2日
製造業における教育計画を立案するときの手順6ステップ!重要性と具体例
-
2024年9月2日
業務標準化の事例5選!目的・進め方・メリット・デメリットを徹底解説
-
2024年9月2日
業務の見直しの具体例7つ|基本・手順・アイデア出しの方法を解説
-
2024年8月15日
労働生産性の計算式2つを初心者向けにわかりやすく解説|製造業が低い理由と向上させる方法