工場にIoTを導入してスマートファクトリー化すると解決できる課題5つ
工場にIoTを導入してスマートファクトリー化する動きが、世界中で広がっています。スマートファクトリー化するメリットは、生産性を最適化するだけでなく、自動的に得られる工場内の各工程における情報を収集して、改善案の立案などに活用できることです。工場内のあらゆる動きや情報を見える化できるため、PDCAサイクルを効率良く回せるようになります。
スマートファクトリー化は、日本の製造業の課題解決にもつながる重要な試みになります。日本のものづくり産業の課題である、人手不足や技術継承問題を、AIやIoTの力で解消できる可能性を秘めています。
今回は、工場にIoTを導入してスマートファクトリー化すると解決できる課題5つをご解説します。工場にIoT導入してスマートファクトリー化した成功事例や、失敗に招く要因もまとめているので、ご参考にしてください。
コンテンツ
スマートファクトリーとは
スマートファクトリーとは、工場全体にIoTを導入して、生産性を最適化する先進的な工場のことです。ドイツ政府が提唱した「インダストリー4.0」が誕生のきっかけで、現在は日本の製造業の企業存続に関わる試みとして、注目を集めています。
工場内の各要素(機械設備、生産ライン、作業員)をネットワーク化することで、それぞれの稼働状況や動線などを、リアルタイムに把握できるようになることが特徴です。スマートファクトリーでは、IoTやAIなどの新しいデジタル技術で生産性を最適化できるため、安定した品質管理や工数削減などが見込めます。熟練作業員の技能情報をデータとして収集でき、日本の製造業の課題の一つでもある、技術継承問題の解消についても期待できることを見込めます。
スマートファクトリーは、「見える化」→「データ活用で工程を制御」→「自律制御」の三段階で進めていきます。まず、機械設備や作業員にIoTセンサーを取り付けて、リアルタイムに製造データを把握できるようにします。収集した製造データを活用すれば、工程を制御でき、改善活動をスムーズに達成することが可能です。
最終的には見える化からデータ分析、工程制御までを自動的に、AIやロボットの技術を駆使してできるよう、自律制御を目指します。スマートファクトリーは、製造業の歴史を変える技術革新として現在、多くの企業で試みが始まっています。
スマートファクトリー化で解決できる課題5つ【メリット】
スマートファクトリーが実現すると、日本の製造業は大きく変化します。現在抱えている数々の課題解決が見込めるため、新たな付加価値を提供できる余裕も生まれるかもしれません。まずはスマートファクトリー化で解決できる課題5つをご解説します。
現場の人手不足
スマートファクトリー化すると、一部業務を自動化できるため、現場の人手不足を解消できます。例えば、一般的な工場では機械設備の点検は作業員が巡回しながら手作業で記録しますが、機械設備のIoT化により、点検や記録作業の必要はなくなります。
結果的にヒューマンエラーによる、点検不備や入力ミスなどがなくなることもメリットです。また、業務が自動化すれば、属人的な業務の解消もできるようになります。
働き方改革と適切な人員配置
日本の製造業の現場では、長時間労働や過酷な労働作業などが、度々問題視されています。スマートファクトリー化すると、業務の自動化で人手不足を解消でき、働き方改革の実現が見込めることがメリットです。
また、製造業の現場では、人員配置が生産性に大きく関わります。工場にIoTを導入すると、正確なデータ収集によって適切な人員配置ができるようになるため、生産性向上に直結します。
機械設備の突然の故障やエラー
機械設備をIoT化すると、24時間365日、無人で管理ができるようになります。
機械設備の異変や不調を早めに察知して知らせてくれるため、突然の故障やエラーを防げることがメリットです。機械設備の遠隔管理も可能になり、省人化と効率化が格段に進むようになります。
トラブルによる生産ラインの停止
スマートファクトリーでは、工場内の全ての要素をIoT化して管理するため、トラブル発生時も状況に合わせて計画変更しやすくなります。生産ラインの停止を最小限に抑えられるのは、製造業としては大きなメリットです。
不良品が発生したときの原因特定も早く、迅速な返品交換やリコール対応が可能になります。
生産能力以上の受注があった場合の対応
生産能力以上の受注があった場合、一般的な工場では対応が難しく、納期を遅らせなければならなくなります。しかし、スマートファクトリーでは、他の工場へ受託生産するなど、柔軟に対応しやすくなることがメリットです。納期遵守は、企業の信頼と利益に関わる重要なものです。
スマートファクトリー化によって工場全体に余裕が生まれ、柔軟な対応ができるようになると、企業は大きく発展します。
工場にIoT導入してスマートファクトリー化した成功事例
工場にIoTを導入するメリットは、成功事例を見ればわかります。ここからご紹介するものは、すべて日本国内の製造業の成功事例です。工場にIoT導入してスマートファクトリー化した成功事例をご紹介します。
画像解析システムで品質の安定化を実現
自動車エアバッグ用インフレータを製造している会社が、工場に画像解析システムを導入し、品質の安定化を実現しました。カメラとAIを活用して、人・設備・材料の3点を解析できるように実用化。
作業員や機械設備の動きに異常があると、監督者にアラーム通知が届き、迅速な対応や原因解明ができる仕組みです。
参考出典:https://www.softbank.jp/biz/blog/business/articles/202103/smart-factory/
稼働状況の見える化で365日24時間の自動生産を実現
プラスチック製品の製造会社が、スマートファクトリー化による稼働状況の見える化で、365日24時間の自動生産を実現しました。工場内に設置されたカメラとタブレット端末にて、稼働状況をいつでもどこからでも確認可能に。作業員による、夜間や休日の見回り点検の必要がなくなりました。
生産実績の記録をデータ化してサーバで管理したり、成形時の圧力に異常があればアラームが鳴ったりする仕組みも開発中のようです。
参考出典:https://www.softbank.jp/biz/blog/business/articles/202103/smart-factory/
製造・出荷のリアルタイム把握でリードタイムを短縮
パイプ部品の加工を主とする会社では、生産管理システムを導入し、製造・出荷のリアルタイム把握で、リードタイムを短縮しました。いつ、だれが、どの材料で、製造・出荷を行なったのかを把握できるようになったため、追加注文やキャンセルなどの要求に対応するリードタイムが、72時間から48時間まで短縮されました。
参考出典:https://www.softbank.jp/biz/blog/business/articles/202103/smart-factory/
スマートファクトリー化を失敗に招く要因
スマートファクトリー化は、全社で一丸となって取り組むべき重大な試みです。
進め方が間違っていたり、準備不足が深刻であったりすると、失敗を招いてしまうリスクもあります。ここではスマートファクトリー化を失敗に招く要因をご解説します。
工場内のIoT導入を一度に全て取り組もうとする
スマートファクトリー化は、徐々にIoTを導入しながら実現していくものです。一度に多くのIoT導入を進めると、現場の混乱を招いてしまう恐れがあります。
そのためスマートファクトリー化を完全に実現するには、段階を踏んでいく必要があります。最終段階である「自律制御」ができる状態を最初から求めてしまうと、達成できるまでの期間を長いと感じてしまい、途中でスマートファクトリー化を諦めてしまうことになるかもしれません。
工場にIoT導入してスマートファクトリー化するポイントは、小さな問題や課題解決から取り組むことです。スモールスタートで成功体験を積み、効果を実感しながら進めていくことで、経営側も現場も反発を抱くことなく、スマートファクトリー化を実現できます。
IoT導入の目的が定まっていない
IoT導入によって、どんな課題を解決したいのか、一つ一つ明確にすることも大切です。流行しているからという理由だけで、IoTを導入してスマートファクトリー化を目指すと、目的が不明瞭になり途中で滞ってしまいます。まずは、現場の課題の洗い出しから始めて、IoT導入をする目的を明確化するようにしましょう。
自社内にIoTを扱える技術者がいない
IoT導入で成果をあげるためには、操作や管理、データ分析ができる人材が必要です。自社内にIoTを扱える技術者がいないと、上手く活用できずに逆効果になってしまうこともあります。作業員の負担が増えないように気をつけながら、IoT導入と運用を効果的にできるような、人材導入・育成も重要です。
工場にIoT導入すると日本の製造業の課題を解決できる(まとめ)
工場にIoT導入をしてスマートファクトリー化する世界中の動きは、一過性の流行ではありません。凄まじいスピードで技術革新が進み、消費者のニーズが細かく多様化している現代では、従来のようなアナログ的管理の工場体制では、対応することが難しくなっています。
日本では労働人口不足や技術者の高齢化も深刻で、働き方改革が迫られていることも問題です。工場にIoTを導入してスマートファクトリー化すると、生産性が向上して、製造業のあらゆる問題が改善・解消されるようになります。
IoT導入をするときの注意点は、導入自体が目的化しないようにすることです。
まずは現場の小さな問題や課題解決を目標にIoT導入を実行し、徐々にスマートファクトリー化を進めるようにしましょう。
今日のポイント
- スマートファクトリーとは、工場全体にIoTを導入して生産性を最適化する先進的な工場のこと
- スマートファクトリー化で解決できる課題5つは、「現場の人手不足」「働き方改革と適切な人員配置」「機械設備の突然の故障やエラー」「トラブルによる生産ラインの停止」「生産能力以上の受注があった場合の対応」
- スマートファクトリー化を失敗に招かないように、IoT導入は目的を明確にして徐々に進めながら、管理できる技術者を育成すること
関連記事
-
生産性の式5つを紹介【製造業における生産性分析の重要性と注意点】
2024年8月15日
-
コスト削減の事例10選!製造業でのネタ出しにもおすすめ
2023年6月30日
-
業務改革(BPR)の進め方と成功のポイント3つ【業務改善との違い】
2024年1月15日
-
設備管理が製造業において重要な理由3つ|工場での仕事内容や保全管理の基本
2022年7月15日
-
在庫管理とは?初心者向けに基礎と効率化する方法6つを解説!エクセルでのやり方も
2023年10月16日
-
業務改善で原因分析をする手法4つ|役立つフレームワークも紹介
2024年1月15日
-
生産性が製造業で最も重要である理由5つ|工場の生産性向上の事例も掲載
2023年8月4日
-
性能稼働率の求め方を初心者向けに解説【影響するロス3つ】
2023年10月13日
-
効率化とは?4つのポイントで初心者向けに基本を徹底解説!
2023年2月27日
カテゴリー
- IT化
- QCD
- QCサークル
- コスト削減
- コンサルタント
- スマートファクトリー
- ボトルネック工程
- 中小企業
- 労働生産性
- 合理化
- 品質担保
- 品質管理
- 在庫管理
- 工場IoT
- 工場効率化
- 工程管理
- 工程管理システム
- 投入資源
- 業務効率
- 業務改善
- 生産ライン
- 生産性向上
- 生産管理
- 生産管理システム
- 経費削減
- 製造業
- 製造業 DX
- 製造業IoT
- 見える化
- 設備管理
新着コラム
-
2024年10月25日
製造業のDX事例を10個ご紹介!各企業に分けて徹底解説
-
2024年10月25日
製造業のDX推進に役立つツールを徹底解説!DXツールを導入するメリットとは?
-
2024年10月25日
製造業におけるDXの課題とは?DXの取組事例や進めるための手順をご紹介!
-
2024年10月3日
個別最適と全体最適とは?両方のバランスを上手くとる方法4つとそれぞれの特徴を解説!
-
2024年10月3日
製造業の利益率の目安とは?計算方法5つや向上させる方法を解説!
-
2024年10月3日
部分最適とは?メリット3つとデメリットを徹底解説!進めるポイントも
-
2024年9月2日
製造業における教育計画を立案するときの手順6ステップ!重要性と具体例
-
2024年9月2日
業務標準化の事例5選!目的・進め方・メリット・デメリットを徹底解説
-
2024年9月2日
業務の見直しの具体例7つ|基本・手順・アイデア出しの方法を解説
-
2024年8月15日
労働生産性の計算式2つを初心者向けにわかりやすく解説|製造業が低い理由と向上させる方法