コスト削減の事例10選!製造業でのネタ出しにもおすすめ
製造業においてコスト削減は、企業が利益追求をするうえで、欠かせない重要な取り組みです。一般的にコスト削減=リストラなどによる人件費削減、というマイナスなイメージを持っている人は多いのではないでしょうか。確かに、コスト削減の一環として、人件費に着目するケースはあります。
しかし、本来コスト削減は「必要のないムダな経費を削減する」取り組みのことです。企業利益は「売上-コスト」であるため、売上を増加させるのと同様に、コスト削減は重要な取り組みになります。今回は、コスト削減の製造業における事例10選を紹介します。製造業の改善ネタ出しに困ったときに、ぜひご参考にしてみてください。
コスト削減の事例10選【製造業】
コスト削減の大前提として、品質と顧客満足度は、必ず維持しなくてはいけません。経費を抑えられても、品質が落ちたり顧客満足度が低下したりしては、本末転倒です、コスト削減に取り組む際は「QCD(品質、コスト、納期)」のバランスを維持しながら行いましょう。
仕入先を変更して材料や部品費のコスト削減
材料や部品費は、製造業において重要なコストです。製造原価である材料や部品費は、「直接原価」と「間接原価」に分けられます。
直接原価…製品を製造するためにかかった原価のうち、直接つかめるもの
間接原価…製品を製造するためにかかった原価のうち、どれだけかかったかの区分が難しいもの
コスト削減の対象としやすいのは、直接原価になります。材料や部品などは、必要に応じて仕入れ先の変更や購入単位の見直しすることで、購入費用の削減ができる可能性があります。
さらに製造装置の定期交換部品や消耗部品などについても、各装置に汎用的に使用出来るように共通化を実施する。また製造装置に使用しているボルトやナットなどの交換・消耗部品の規格やサイズなどを標準化することにより、より少ない種類での管理運用を行うことで、交換および消耗部品の過剰在庫の防止や在庫管理の簡素化によるコスト削減も見込めます。
現場の節約徹底で水道光熱費のコスト削減
製造業では、多額の水道光熱費が固定費として発生しています。水道光熱費は、従業員の意識改革ひとつで、コスト削減できる項目の一つです。一般的には電気の付けっぱなしや水の出しっぱなしなど、各個人が節約の姿勢を徹底すれば、結果的にコストは削減できます。
また、稼働していない設備などを停止させたり、省電力モードなどへ移行したりすることにより水道光熱費のコストを削減することも可能です。節約徹底を求めることは大切ですが、従業員が快適に作業できる環境を維持した上で、空調の極端な温度設定を求めるなど、従業員に負担がかからないよう注意しましょう。
生産現場の設備管理を徹底してメンテナンス費をコスト削減
機械設備は、定期的にメンテナンスをする必要があります。基本的なことですが、機械設備を雑に扱ったり清掃を怠ったりすると、当然、故障やトラブルのリスクが上昇し、突発的なメンテナンス費用が発生します。
メンテナンス費用自体を無くすことはできませんが、設備管理を徹底することで、設備故障や事故リスクを防ぎ、結果としてコスト削減が可能となります。
また、事前に機械設備の異常を発見し、対策することで機械設備の故障を防ぐだけではなく、安定した生産を維持することが出来る為、結果的にコスト削減につながります。
機械設備の稼働状況を改善して燃料費をコスト削減
機械設備を稼働させるには、燃料が必要な場合があります。燃料の消費は、機械設備の老朽化や稼働バランスを見直すことで大きく変わります。
燃料費を削減するために、思い切って消費効率の良い機械設備を導入するのも手段の一つです。機械設備の新規導入による費用対効果を比較、検討することで、結果的にコスト削減に繫がる場合もあります。
新設備の導入検討を慎重に行い減価償却費のコスト削減
すでに減価償却としている経費のコスト削減はできませんが、今後、減価償却費をなるべく抑える取り組みは大切です。
新規の設備導入により、減価償却費が経費を圧迫しているのであれば、新設備の導入検討はより慎重に行う必要があります。既存の設備にて生産量などを確保出来る環境を整え、メンテナンスにより既存設備を維持することで、減価償却費を抑える可能性があります。
不要な業務や残業を無くして労務費のコスト削減
労務費は、経費の中でも大きな割合を占めるコストの一つです。しかし製造業においては、製品の製造に欠かせないコストでもあります。
労務費を削減する方法は、3M(ムリ・ムダ・ムラ)と言われる項目に着眼し、現状の作業などを見直し、業務の効率化やIT化を行い、結果的に労働時間を減らせるよう努力することです。しかし、コスト削減の成果が大きいからといって、ただ人件費を削減するための取り組みにならないよう細心の注意を払う必要があります。
従業員があまり活用していない福利厚生を無くしてコスト削減
福利厚生は、従業員の満足度に関わる大切な制度です。一般的に福利厚生には法定福利厚生といわれる法律で義務付けされている健康保険や雇用保険、労災保険など、更には法定外福利厚生といわれる企業独自で提供する住宅手当や交通費、家族手当などがあります。
しかし、近年では働き方改革の推進やQOL(クオリティオブライフ)といわれる「人生の質」や「生活の質」に重点をおいた働き方もあり、時代の変化とともに、従業員が会社に求めるものも変化してきています。
そのため、現状の福利厚生が本当に必要かどうかを従業員目線で判断し、その費用を抑えることによってコスト削減する方法もあります。
プランを見直して通信費のコスト削減
社内のタブレットや従業員に配っている業務用のスマホなど、通信費も工夫をすればコスト削減できる可能性があります。現在の契約内容が目的や使用量に合っているのかを見直してみると、利用料金の安いプランに変更しても問題ないことがあります。定期的に比較、検討を行うことでコスト削減が出来る場合もあります。
優先順位を見極めて研究開発費のコスト削減
研究開発費は、新たな製品開発や付加価値の創造などに欠かせない大切な経費です。しかし、自社の経営状況が悪化していて企業存続に関わるような事態である場合は、優先順位を一度、見極めることも大切です。
そのため研究開発の進捗スピードを調整し、必要に応じて費用を削減することにより、コスト削減を一時的に実施することが可能です。企業利益確保を目指す上で重要な取り組みですが、状況に応じて優先順位を考えてみましょう。
自社内でITツールを導入し自動化することで外注費を削減
定型業務や経理などを外注化している場合は、自社内で担当することで外注費をコスト削減できます。しかし、自社内で担当する場合に結果的に管理費用や労務費が大きくなっては、意味がありません。
外注していた業務を自社内に切り替える場合は、自社の負担が増えないように、ITツールを導入、検討などを行い自動化出来る仕組み作りを目指す必要があります。その上で外注費と自社内で担当する場合のコストについてしっかり比較検討することが重要です。
コスト削減の言い換えには「経費削減」や「合理化」などがある
コスト削減の言い換えとして、「経費削減」や「合理化」などが使われることがあります。どちらも同じ意味で使って問題ありませんが、少し意味にニュアンスに違いがあるのはポイントです。
コスト削減と経費削減の違いは、「コスト」と「経費」の言葉の違いにあります。コストは費用というよりは見積もりに近い用語で、発生する前の算段で使われます。経費は経営目的に費やす費用のことで、発生した後の用語として使うのが正しい意味です。
ただし、これらは言葉の定義上の違いであり、実際にビジネスシーンで使う場合は、コスト削減も経費削減も同じ意味として使って問題ありません。コスト削減と合理化の違いは、対象となる範囲にあります。コスト削減は経費だけを対象に、どうすれば削減できるかを考えて実行する取り組みです。
合理化は経費削減に限らず、より良い状態にするためにさまざまな施策を行います。つまり、コスト削減は合理化に含まれる概念でもあります。経費削減も合理化も、細かなニュアンスとしての違いはありますが、コスト削減と同義で使っても支障はありません。
コスト削減は目的を明確にして本末転倒にならないように(まとめ)
コスト削減は、企業の利益を追求して生産性を向上するために、欠かせない取り組みです。
コスト削減の対象となるものは、大きく分けて固定費と変動費の2種類があります。
固定費と変動費にはさらに内訳となる項目が多数あり、どこをどう削減するか、慎重に判断することが大切です。
また、注意したいのは、コスト削減によって品質が下がったり顧客満足度が低下したり、新たな問題を誘発しないかどうかです。
コスト削減の目的は、ムダを排除して生産性を向上させ、企業の利益を追求することです。
つまり、コスト削減によって品質や顧客満足度が低下してしまっては、意味がありません。
コスト削減に取り組むときはQCDを意識して、本末転倒にならないように気をつけましょう。
今日のポイント
- コスト削減は企業が利益追求をするうえで欠かせない重要な取り組み
- コスト削減の大前提として品質と顧客満足度は必ず維持しなくてはいけない
- コスト削減の言い換えの言葉には「経費削減」や「合理化」などがある
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