KYTに使える工場のヒヤリハット事例30選を紹介

工場の現場で起こるヒヤリハットは、墜落・転倒からはさまれ・巻き込まれ、感電、破裂まで多岐にわたります。
危険予知のためには自社で起きた事例だけでなく、他社の事例から学ぶことも大きな意味があります。

本記事では、実際の労働災害・ヒヤリハット情報をもとに、KYTにも使える工場のヒヤリハット事例を15カテゴリ・30選としてまとめました。ヒヤリハット報告書の書き方や対策も解説していますので、ぜひ現場の安全活動にお役立てください。

ヒヤリハットについておさらい

工場のヒヤリハットとは

ヒヤリハットとは、事故には至らなかったものの「ヒヤリ」としたり「ハッ」としたりした出来事のことです。工場でいえば、機械に手が挟まれそうになった、台車が転倒しそうになった、といった場面が該当します。こうした出来事は結果として大事に至らなかっただけで、一歩間違えば重大な労働災害になっていた可能性があります。

ハインリッヒの法則では、1件の重大事故の背後には29件の軽微な事故があり、さらにその背後には300件のヒヤリハットが存在するとされています。
つまり、日々のヒヤリハットを見過ごさずに拾い上げることが重大事故を防ぐための手段といえるのです。

工場のヒヤリハットの原因3つ

環境要因

工場内の物理的な環境に問題があるケースです。
例えば5Sが徹底されておらず、通路に物が置かれたままになっていると、つまずきや衝突が起こりやすくなります。
また、設備や機械の老朽化、安全装置の不備といった問題も環境要因のヒヤリハットを引き起こす原因です。

人的要因

作業者自身の状態や能力に起因するケースです。
睡眠不足や体調不良など心身の不調があると、注意力が低下し、普段なら避けられるはずの危険を見落としてしまいます。
また、作業者の技能や知識が不足している場合も、危険を予測できずにヒヤリハットにつながりやすくなります。

管理的要因

現場の管理体制に問題があるケースです。
情報共有やコミュニケーションが不足していると、危険箇所や作業ルールの変更が現場に伝わらず、事故のリスクが高まります。
作業手順が守られていない背景には教育や訓練が不十分であることが多く、これも管理的要因のひとつといえます。

製造業・工場のヒヤリハット事例30選

1.墜落・転落

クレーン車の荷台からフレコンバッグとともに転落しそうになった

  • 業種:製造業
  • 作業の種類:荷降ろし作業
  • ヒヤリ・ハットの状況
    トラック積載型クレーン車の荷台に乗ってフレコンバッグを吊り上げようとした際、積み荷の揺り返しで身体がバッグに当たり、荷台から転落しそうになった。
  • 原因
    クレーン操作時の荷台での立ち位置への理解が不足していたこと、フレコンバッグを吊り上げる際にワイヤーが斜めになっていたこと。
  • 対策
    クレーン車での作業時の立ち位置について安全衛生教育を徹底し、フレコンバッグはクレーンの延長線上でフックに掛けるようにする。

※参照元:厚生労働省 職場のあんぜんサイト┃積み荷の揺り返しによりフレコンバッグが当たり、荷台から転落しそうになった

移動式足場から足を踏み外しそうになった

  • 業種:製造業
  • 作業の種類:蛍光灯交換作業
  • ヒヤリ・ハットの状況
    高さ約3.8メートルの移動式足場上で作業中、足場の設置位置がずれていたため柵から身を乗り出してバランスを崩し、足を踏み外しそうになった。
  • 原因
    足場の設置状態の確認不足によるものと考えられる。
  • 対策
    足場の設置位置を作業前に確認し、無理な体勢での作業を避ける。

※参照元:厚生労働省 職場のあんぜんサイト┃蛍光灯を取り付ける作業中、移動式足場から足を踏み外しそうになった

2.転倒

台車がエレベーターの段差に引っ掛かり転倒した

  • 業種:製造業
  • 作業の種類:製品の運搬作業
  • ヒヤリ・ハットの状況
    荷物用エレベーターから台車を引き出す際、床面とかごの間の段差に台車が引っ掛かって転倒し、製品が荷扱者の足の甲を直撃しそうになった。
  • 原因
    段差のある箇所を通過する際、積載物を押さえる担当者がいなかったこと。
  • 対策
    積載荷重を守り、荷を均等に積んだうえで、段差を通過する際は複数人で台車を操作する。

※参照元:厚生労働省 職場のあんぜんサイト┃床面とエレベーターの「かご」の間の段差に引っ掛かり、引き出そうとしていた台車が転倒した

容器を持ち上げた際に台車が動き転倒しそうになった

  • 業種:外衣下着製造業
  • 作業の種類:原材料の移動作業
  • ヒヤリ・ハットの状況
    台車上の容器を持ち上げた際にふらついて自分の足を台車に乗せてしまい、台車が動いて転倒しそうになった。
  • 原因
    台車にストッパーが付いていなかったこと、女性作業員が扱うには容器が重すぎたこと。
  • 対策
    ストッパー付きの台車に切り替え、重量物を扱う際の配慮について教育を行う。

※参照元:厚生労働省 職場のあんぜんサイト┃女性作業員が台車上の容器の移動作業中、容器を持ち上げたときに足を台車上に乗せてしまい、台車が動いて転倒しそうになった

3.激突

トランクの扉に頭を打ちそうになった

  • 業種:製造業
  • 作業の種類:廃棄書類の運搬作業
  • ヒヤリ・ハットの状況
    ライトバンのトランクから廃棄書類をダストシュートへ投げ入れる作業中、勢いよく振り向いた際にトランクの扉に頭を打ちそうになった。
  • 原因
    急な動作による不注意。
  • 対策
    落ち着いて作業を行い、頭部を打つおそれがある場合は保護帽を着用する。

※参照元:厚生労働省 職場のあんぜんサイト┃廃棄書類を捨てようと、車両のトランクから荷を取り出し振り向いたときトランクの扉に頭を打ちそうになった

フォークリフトと通行者が衝突しそうになった

  • 業種:製造業
  • 作業の種類:運搬作業
  • ヒヤリ・ハットの状況
    フォークリフトがシャッター下を一時停止せずに通過した際、シャッター前を横切ろうとした作業者と衝突しそうになった。
  • 原因
    一時停止と安全確認が徹底されていなかったこと。
  • 対策
    シャッター前での一時停止と指差呼称を徹底し、通路とフォークリフトの動線を分ける。

※参照元:厚生労働省 職場のあんぜんサイト┃フォークリフトと通行者が衝突しそうになる

4.飛来・落下

天井クレーンのワイヤーが切れ鋼板が落下した

  • 業種:金属製品製造業
  • 作業の種類:天井クレーン作業
  • ヒヤリ・ハットの状況
    鋼板を吊り上げて巻き上げを行っていた際、停止操作をしても巻き上げが止まらず、ワイヤーロープが切れて鋼板が落下した。
  • 原因
    電磁開閉器の接点固着、巻過防止装置の故障、非常停止操作が行われなかったこと。
  • 対策
    クレーンの定期自主検査を徹底し、巻過防止装置を有効な状態で維持するとともに、非常停止の訓練を定期的に行う。

※参照元:厚生労働省 職場のあんぜんサイト┃天井クレーンで鋼板を吊り上げ中、巻き上げが止まらず、ワイヤーロープが切れて鋼板が落下した

ボール盤の切削くずが眼に入りそうになった

  • 業種:製造業
  • 作業の種類:加工作業
  • ヒヤリ・ハットの状況
    保護メガネを着けずに卓上ボール盤で加工していたところ、切削くずが顔に飛散し眼に入りそうになった。
  • 原因
    短時間の作業だからと保護メガネを省略したこと。
  • 対策
    作業時間の長短にかかわらず、必ず保護メガネを着用する。

※参照元:厚生労働省 職場のあんぜんサイト┃ボール盤で加工中、「キリ粉」が飛散し眼に入りそうになる

5.崩壊・倒壊

フォークリフトの荷が崩壊し下敷きとなった

  • 業種:セメント・同製品製造業
  • 作業の種類:建材ボードの運搬作業
  • ヒヤリ・ハットの状況
    被災者の前でフォークリフトが急ブレーキをかけたところ、運搬していた建材ボードが崩壊し、被災者が下敷きとなった。
  • 原因
    柱付近の安全通路の幅が不足していたこと、マストを十分に後傾させていなかったこと、横断時の安全確認が徹底されていなかったこと。
  • 対策
    安全通路の幅を十分に確保し、荷の積載時はマストを後傾させ、横断時の指差呼称と左右確認を徹底する。

※参照元:厚生労働省 職場のあんぜんサイト┃フォークリフトの荷が崩壊し、下敷きとなり死亡

倉庫で荷の積み重ねが崩れ下敷きとなった

  • 業種:プラスチック製品製造業
  • 作業の種類:原料の荷下ろし作業
  • ヒヤリ・ハットの状況
    倉庫でペレットの入った袋の積み重ねが崩壊し、作業者がその下敷きとなった。
  • 原因
    積み方が不安定だったこと、崩壊防止措置がなかったこと、無資格者がフォークリフトを運転していたこと。
  • 対策
    荷の崩壊防止措置と立入禁止措置を講じ、有資格者に運転させるとともに作業計画を作成する。

※参照元:厚生労働省 職場のあんぜんサイト┃倉庫で「はい」が崩れ下敷きとなる

6.激突され

台車運搬中に作業員と衝突し転倒

  • 業種:製造業(焼き菓子工場)
  • 作業の種類:運搬作業
  • ヒヤリ・ハットの状況
    滑りやすい床を台車で小走りに移動していたところ、柱の角から出てきた作業員と衝突し、ともに転倒した。
  • 原因
    床面に油分が付着し滑りやすくなっていたこと、台車のブレーキが効きにくかったこと。
  • 対策
    床面の清掃・防滑対策を行い、見通しの悪い曲がり角では速度を落とす。

※参照元:厚生労働省 職場のあんぜんサイト┃台車で運搬中作業員と衝突し転倒した

バックしてきたフォークリフトと激突しそうになった

  • 業種:食料品製造業
  • 作業の種類:市場内荷卸し作業
  • ヒヤリ・ハットの状況
    方向転換のためバックしてきたフォークリフトの移動方向にいた人と激突しそうになった。
  • 原因
    誘導員が配置されておらず、作業計画も十分でなかったこと。
  • 対策
    作業場への立ち入りを制限し、誘導員を配置したうえで作業計画を周知徹底する。

※参照元:厚生労働省 職場のあんぜんサイト┃作業場を歩いていたところ、フォークリフトが方向転換のためバックしてきて激突しそうになった

7.はさまれ・巻き込まれ

箱詰機で手が挟まれそうになった

  • 業種:製造業
  • 作業の種類:箱詰機の調整作業
  • ヒヤリ・ハットの状況
    詰まった製品を停止確認せずに取り除こうとしたところ、機械が突然動き出し手が挟まれそうになった。
  • 原因
    停止確認を怠ったこと、カバーを開けると自動停止する安全装置がなかったこと。
  • 対策
    インターロックを設置し、調整・除去作業時は停止確認を徹底する作業手順書を整備する。

※参照元:厚生労働省 職場のあんぜんサイト┃箱詰機を使用中、詰まった製品を取り除こうとしたところ、手が挟まれそうになった

横中ぐり盤に腕が巻き込まれそうになった

  • 業種:機械器具製造業
  • 作業の種類:金属製品の切削加工作業
  • ヒヤリ・ハットの状況
    切粉を刷毛で払っていたところ、着用していた軍手が回転する切削刃に巻き込まれそうになった。
  • 原因
    清掃時に機械を停止させていなかったこと、軍手を着用したまま作業していたこと。
  • 対策
    清掃時は機械を停止させ、巻き込まれるおそれがある作業では軍手を着用しない。

※参照元:厚生労働省 職場のあんぜんサイト┃横中ぐり盤に腕が巻き込まれそうになった

8.切れ・こすれ

ポケットに入れたカッターで手を切りそうになった

  • 業種:製造業
  • 作業の種類:塗工作業
  • ヒヤリ・ハットの状況
    バンドカッターを刃を出したまま防寒着のポケットにしまい、後で手を入れた際に手を切りそうになった。
  • 原因
    刃の収納確認を怠ったこと。
  • 対策
    使用後は毎回、指差呼称で刃の収納を確認する。

※参照元:厚生労働省 職場のあんぜんサイト┃バンドカッターで手を切りそうになった

グラインダー使用中に研削といしが接触

  • 業種:その他の金属製品製造業
  • 作業の種類:鋼板切断面のバリ取り作業
  • ヒヤリ・ハットの状況
    手持ち式グラインダーでバリ取り作業中、グラインダーが跳ね、回転中の研削といしが身体に接触した。
  • 原因
    作業スペースが狭く回避できなかったこと、保護具が不十分だったこと、安全衛生教育が不足していたこと。
  • 対策
    作業場所の整理整頓で十分なスペースを確保し、必要な保護具を定めたうえで安全衛生教育を実施する。

※参照元:厚生労働省 職場のあんぜんサイト┃手持ち式グラインダーで鋼板切断面のバリ取り作業中、回転中の研削といしが当たり死亡

9.高温・低温の物との接触

高温環境下での体調悪化

  • 業種:パン、菓子製造業
  • 作業の種類:焼成室での監視業務
  • ヒヤリ・ハットの状況
    室温40度を超える焼成室での監視業務中に体調が悪化し、トンネルオーブン付近で倒れているところを発見された。
  • 原因
    高温環境下での作業であったこと、冷房が有効に機能していなかったこと、水分・塩分補給の確認が不十分だったこと。
  • 対策
    冷房設備の見直しと室温管理を行い、水分・塩分補給の呼びかけ体制を整え、体調確認を徹底する。

※参照元:厚生労働省 職場のあんぜんサイト┃焼成室内にて、パンの焼き具合等の監視業務に就いていた被災者は、トンネルオーブンの出口付近で倒れた状態で発見された

冷媒アンモニアの漏洩により中毒が発生

  • 業種:肉製品、乳製品製造業
  • 作業の種類:食肉加工作業
  • ヒヤリ・ハットの状況
    冷凍機から漏洩したアンモニアが工場内に流入し、換気が不十分なまま作業を開始したため複数の作業者が中毒を発症した。
  • 原因
    ガス濃度測定による安全確認をせずに作業を再開したこと、有害性に関する知識が不足していたこと。
  • 対策
    ガス漏洩時の退避・救護訓練を実施し、濃度測定による客観的な確認をもとに作業再開を判断する。

※参照元:厚生労働省 職場のあんぜんサイト┃冷凍機から漏洩した冷媒用アンモニアが食肉処理工場に流入し、アンモニア中毒

10.感電・火災

設備解体作業中に火炎が噴出

  • 業種:解体工事業
  • 作業の種類:設備解体作業
  • ヒヤリ・ハットの状況
    樹脂膜製造設備の解体作業中、箱内に残留していた有機溶剤に溶断バーナーの火が引火し、火が噴出した。
  • 原因
    引火性物質が残留する可能性への確認が不足していたこと。
  • 対策
    引火性・可燃性物質のおそれがある場所では火気の使用を避け、事前に濃度測定を行う。

※参照元:厚生労働省 職場のあんぜんサイト┃樹脂膜製造工場で、設備解体作業中に火炎が噴出した

電源ケーブルの漏電で感電

  • 業種:紙加工品製造業
  • 作業の種類:機械の調整作業
  • ヒヤリ・ハットの状況
    機械の調整のためコンベヤ部にまたがろうとした際、電源ケーブルの絶縁被覆の破損箇所から漏電し感電した。
  • 原因
    絶縁被覆の破損、漏電対策が講じられていなかったこと。
  • 対策
    電気機械器具の定期点検を実施し、漏電遮断器を設置する。

※参照元:厚生労働省 職場のあんぜんサイト┃調整作業のため機械にまたがろうとした際、電源ケーブルの絶縁被覆が破損していた箇所からの漏電によって感電した

11.有害物との接触

閉塞したバルブを突いた際にアルカリ液が噴出しそうになった

  • 業種:医薬品製造業
  • 作業の種類:排出弁の閉塞物除去作業
  • ヒヤリ・ハットの状況
    閉塞したバルブを棒で突いたところ、高温のアルカリ液が急に流出し火傷しそうになった。
  • 原因
    内圧の確認を行わずに閉塞物を突いたこと。
  • 対策
    やむを得ず突く場合は内圧がないことを確認し、保護具を着用したうえで慎重に作業する。

※参照元:厚生労働省 職場のあんぜんサイト┃閉塞したバルブを下から棒で突っついていたとき、閉塞が取れて内液が急に流出し、熱いアルカリ液で火傷しそうになった

反応釜から有害物が噴出し近隣に拡散した事例

  • 業種:無機・有機化学工業製品製造業
  • 作業の種類:中間体の製造作業
  • ヒヤリ・ハットの状況
    反応釜内で突沸が起こり、原料供給用ノズルのゴム栓が吹き飛んで蒸気と薬品の混合物が工場外まで拡散した。
  • 原因
    攪拌が不十分で突沸が起きたこと、テスト操業を行わず本操業に入ったこと、安全衛生教育が不足していたこと。
  • 対策
    リスクアセスメントに基づく作業マニュアルを整備し、新規製造時は予備テストを行う。

※参照元:厚生労働省 職場のあんぜんサイト┃中間体を製造中、反応釜から噴出した有害物が近隣まで拡散

12.交通事故

送迎バスが雪道でスリップし横転

  • 業種:肉製品、乳製品製造業
  • 作業の種類:従業員の送迎運転
  • ヒヤリ・ハットの状況
    凍結した路面でマイクロバスの後輪がスリップし、道路わきに横転して同乗者が負傷した。
  • 原因
    カーブ手前での減速が不十分だったこと、交通安全教育が実施されていなかったこと。
  • 対策
    凍結・積雪箇所を示した危険マップを作成し、運転者への交通安全教育を定期的に実施する。

※参照元:厚生労働省 職場のあんぜんサイト┃送迎用マイクロバスで走行中、雪道でスリップし、道路わきに横転

冬道での自損事故

  • 業種:製造業
  • 作業の種類:社有車での移動
  • ヒヤリ・ハットの状況
    凍結したT字路で右折時にブレーキを掛けたが車が止まらず、雪山に突っ込んだ。
  • 原因
    アイスバーンでの制動距離を見誤ったこと。
  • 対策
    凍結路では急ハンドル・急ブレーキを避け、カーブ手前で十分に減速する。

※参照元:厚生労働省 職場のあんぜんサイト┃冬道での交通事故

13.動作の反動・無理な動作

ダクト内での作業中に切創を受けた

  • 業種:製造業
  • 作業の種類:エアーダクトの清掃作業
  • ヒヤリ・ハットの状況
    狭いダクト内でターンできず後ろ向きで戻る際、ネジの先端がひじに当たり切創を受けた。
  • 原因
    狭小空間での無理な体勢作業。
  • 対策
    狭小空間での作業は事前に動線を確認し、無理な体勢を避けられる方法を検討する。

※参照元:厚生労働省 職場のあんぜんサイト┃エアーダクト内を移動して切創を受けた

ダクト上での清掃中に滑り落ちそうになった

  • 業種:製造業
  • 作業の種類:原材料ホッパー周囲の清掃作業
  • ヒヤリ・ハットの状況
    高所の円筒ダクトの上に乗って清掃していたところ、ブラシが届かず爪先立ちになり、足元が不安定になって滑り落ちそうになった。
  • 原因
    作業に適した足場や道具が用意されていなかったこと。
  • 対策
    高所作業では適切な足場を設置し、無理な姿勢を要する作業方法を避ける。

※参照元:厚生労働省 職場のあんぜんサイト┃円筒横引きダクトの上に乗って清掃中滑り落ちそうになった

14.破裂

加温庫内でドラム缶が破裂

  • 業種:無機・有機化学工業製品製造業
  • 作業の種類:アクリル酸の融解作業
  • ヒヤリ・ハットの状況
    固化したアクリル酸の入ったドラム缶を加温庫で融解中、缶内の圧力が異常上昇して破裂した。
  • 原因
    重合防止剤が局所的に不足し重合反応が発生したこと、加温庫内の温度分布が不均一だったこと。
  • 対策
    均一な温度で融解できる設備・手順を整備し、搬入時の検収マニュアルを作成する。

※参照元:厚生労働省 職場のあんぜんサイト┃加温庫内で融解中の固化したアクリル酸が入ったドラム缶が破裂

ソルトバスクーラーの伝熱管が破裂

  • 業種:無機・有機化学工業製品製造業
  • 作業の種類:反応器の清掃作業
  • ヒヤリ・ハットの状況
    反応器のソルトバスクーラーの伝熱管が破裂し、高温の水蒸気と熱媒体が噴き出して付近の清掃作業者が火傷を負った。
  • 原因
    伝熱管の腐食・摩耗が進んでいたこと、補修履歴が性能検査時に報告されていなかったこと。
  • 対策
    耐蝕性の高い配管を使用し、補修記録を保存して検査時に明示する。

※参照元:厚生労働省 職場のあんぜんサイト┃ソルトバスクーラーの伝熱管の破裂により火傷

15.その他のヒヤリハット

脱パン機の故障による騒音で急性難聴となった

  • 業種:水産食料品製造業
  • 作業の種類:冷凍魚の脱パン作業
  • ヒヤリ・ハットの状況
    脱パン機の支持脚部が破損して強烈な騒音が発生したが、作業を1時間続けた結果、複数の作業者が急性の騒音性難聴を発症した。
  • 原因
    異音発生後も作業を継続したこと、防音保護具を使用していなかったこと、機械の定期点検体制が不十分だったこと。
  • 対策
    異音発生時は直ちに作業を中断し、防音保護具の着用と定期点検体制を整備する。

※参照元:厚生労働省 職場のあんぜんサイト┃冷凍鯖をステンレス製の皿から抜きとる機械が故障して発生した騒音により作業者が急性難聴

移動式クレーンの過負荷でジブが折損

  • 業種:自動車整備業
  • 作業の種類:ブルドーザの引き出し作業
  • ヒヤリ・ハットの状況
    過負荷防止装置の自動停止機能を解除して巻き上げを続けたところ、クレーンのジブと起伏シリンダーが折損した。
  • 原因
    安全装置を解除して作業を行ったこと、関係会社間で安全に関する情報共有が不足していたこと。
  • 対策
    過負荷防止装置を解除しない運用を徹底し、共同作業に関わる企業間で安全衛生管理体制を整備する。

※参照元:厚生労働省 職場のあんぜんサイト┃ブルドーザを移動式のクレーンで引き出した際、過負荷でジブ及び起伏シリンダが折損

ヒヤリハット報告書の書き方

5W1Hで情報を整理する

ヒヤリハット報告書は、5W1Hの型で整理すると状況が伝わりやすくなります。

  • いつ(When):いつ発生したか
  • どこで(Where):どこで発生したか
  • 誰が(Who):当事者、関係者は誰か
  • 何をした(What):何が起こったのか
  • なぜ起きた(Why):なぜ発生したのか(背景や原因、当時の状況)
  • どうするか(How):再発防止のために今後どう対処するのか

特に「原因」は、環境要因・人的要因・管理的要因のどれに当てはまるかを意識して書くと、その後の対策検討につなげやすくなります。「不注意だった」で終わらせるのではなく、「なぜ不注意になったのか」まで一歩踏み込んで記録しましょう。作業手順が守られていなかったのであれば、手順自体に無理がなかったか、教育が行き届いていたかまで掘り下げます。

また、報告書はできるだけ詳しく書くことも大事ですが、次に同じ場面に遭遇した人が危険を予測できる内容になっているかどうかがより重要です。報告のタイミングが遅くなるほど状況の再現性は下がっていくため、できるだけその日のうちに記録する運用をルール化しておくとよいでしょう。

工場のヒヤリハット対策

危険予知トレーニング(KYT)を実施する

KYTとは、作業前に「どこにどんな危険が潜んでいるか」をチームで話し合い、対策を確認するトレーニングです。
一人で危険を予測するには限界がありますが、複数人で意見を出し合うことで自分では気づかなかった視点からの危険にも気づけるようになります。

KYTは一度実施して終わりにするのではなく、朝礼や作業開始前のタイミングで短時間でも継続的に行うことで、危険に対する感度を現場に根付かせます。新人だけでなくベテランの作業者にとっても、慣れによる油断を見直すきっかけになります。

ヒヤリハット事例を読み合わせる

先述したKYTの一環として、本記事で紹介したような事例を定期的に読み合わせしましょう。
自社の現場では起きていない事故でも、似た作業工程があれば同じリスクが潜んでいる可能性があります。
読み合わせの際は、ただ事例を読み上げるだけでなく、「自社の設備に置き換えるとどうなるか」「同じ状況になったら自分ならどう対応するか」を参加者に問いかけると、当事者意識が生まれやすくなります。

過去に自社で発生したヒヤリハットの蓄積があれば、それらもあわせて共有し、時間の経過とともに風化させないようにすることも大切。月次の安全会議や朝礼の時間を使って少しずつでも継続的に取り上げていくことで、現場全体の安全意識を底上げしていくことができます。

ヒヤリハットの報告者を責めない

ヒヤリハットを報告した社員を問い詰めてしまうと、ヒヤリハットが報告されなくなり、危険の芽を見逃すことになってしまいます。「危ない目に遭った」と正直に言い出せない現場では、同じ場所で同じ失敗が繰り返され、いずれ重大な事故につながりかねません。
むしろ報告してくれたことを評価する姿勢を示すことで、現場からの情報が集まりやすくなり、対策を先回りして講じられるようになるのです。

報告のハードルを下げるためには、口頭だけでなく、簡単な様式や専用のフォームを用意して、誰でも短時間で提出できる仕組みを整えることが効果的。
また、報告があった際には管理者が必ず反応し、改善に向けて動いている姿を見せることが次の報告につながる好循環を生みます。
逆に、報告しても何も変わらないという状態が続くと、現場は「言っても無駄」と感じてしまい、報告そのものが形骸化してしまいます。

作業環境自体を整備する

本記事で紹介した事例を振り返ると、老朽化した安全装置、狭い作業スペース、油分で滑りやすくなった床など環境側に原因があるケースが数多く含まれていました。

こうした環境要因は、作業者がどれだけ注意していても本人の努力だけでは解消できません。
まずは設備の点検周期を見直し、安全装置の作動確認や配管・電源ケーブルの劣化チェックを定期的に行う体制を整えることが基本です。

そのうえで、危険予知トレーニングや読み合わせで挙がったヒヤリハットポイントを一覧化し、優先度をつけて設備投資や配置変更を計画的に進めていくと、対策が場当たり的にならずに済みます。小さな改善を重ねていく姿勢が、結果として重大事故の芽を摘むことにつながります。

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