生産管理システムを製造業の中小企業が自作する方法3つとメリット・デメリット
生産管理システムは、製造業の生産管理業務を効率化することが主な目的です。具体的には、システムによって生産工程を「見える化」し、納期・在庫・工程・原価の把握や管理を行います。
製造業の重要な要素である、QCD(品質、コスト、納期)のバランスも取れるようになるため、導入により上手く活用できれば大きな効果が期待できます。
しかし、一般的には生産管理システムは、既存のものを導入するのが主流となっています。製造業の中小企業では主にコストの面で、既存の生産管理システム導入が難しい場合があります。
そこで今回は、中小企業において生産管理システムを自作する方法3つをご紹介します。製造業の中小企業が自作するメリット・デメリットも解説するため、ご参考にしてください。
コンテンツ
生産管理システムは自作できる?
結論、生産管理システムは自作できます。そして、生産管理システムの主な機能には、以下のようなものがあります。
- 生産計画
- 販売管理
- 購買管理
- 工程管理
- 在庫管理
- 原価管理
- 品質管理
各工程に合わせて機能がたくさんありますが、自作する場合はまず必要な機能を洗い出すことが重要です。
例
- 生産計画の可視化をしたいため、生産計画表を作成する
- 正確な売上を把握し共有したいため、売上管理表を作成する など
必要な機能の優先順位を付けて、一つずつ自作できるように取り組んでいきましょう。
生産管理システムを自作する方法3つ
生産管理システムを自作する前に、自社にとって適切な方法を知っておくことが大切です。
生産管理システムを自作する方法3つをご紹介します。
エクセルを活用する
エクセルを活用して、生産管理を行っている中小企業はたくさんあります。扱える人が多く、追加コストがかからないため、最も手軽でメジャーな方法です。
エクセルへのエクスポート機能を使えば、他システムとの連携がかんたんにできるメリットもあります。
エクセルを使って生産管理システムを自作する具体例
- 進捗管理のためにガントチャートを作成する
- 月別の受注データを関数で集計できるようにする
- 生産計画を可視化するために生産計画表を作成する
ただし、エクセルを活用して生産管理システムを自作するには、一部のマクロ処理やVBA処理などのスキルが必要です。
マクロ処理とは、エクセルの作業を自動化することです。
指定した一連の流れをワンクリックで瞬時に実行できるため、生産管理の面倒な入力作業などを省略できます。そして、VBA処理はマクロ処理のためのプログラミング言語のようなものです。
逆にマクロ処理とVBA処理を活用できなければ、エクセルでの作業はアナログ的になり、管理に膨大な時間がかかってしまいます。
エクセルで生産管理システムを自作する場合は、マクロ処理やVBA処理の活用が前提になります。
アクセスで構築する
アクセスとは、マイクロソフト社が開発し提供している、データベース管理ソフトです。
大量のデータを整理し、蓄積できることが特徴で、情報の追加や更新もできるため、膨大なデータ分析に向いています。
アクセスは基本機能も充実しており、データベースのフォーマットやテンプレートが用意されているため、比較的かんたんにシステム構築が可能です。
また、エクセルとの違いとして、アクセスではセルの列ごとに文字列、数値、日付などの型を指定できる点があります。
指定した型以外のデータは入力できないため、入力ミスによる数式エラーを防げることもメリットです。
アクセスを使って生産管理システムを自作する具体例
- 基本機能を組み合わせて販売管理システムや在庫管理システムを作成する
- 顧客の住所データを蓄積して住所管理システムを作成する(ダイレクトメール(DM)送付などに役立つ)
アクセスを利用する費用ですが、法人向けプランでも年間数万円程度しかかかりません。そのためコストパフォーマンスは抜群となります。
ただし、アクセスで生産管理システムを構築する場合は、エクセルと同様にVBA処理のスキルが必要になります。格納されたデータを処理するためのデータベース言語である、SQLのスキルもあった方がいいでしょう。
扱いやすくシステムを構築しやすいソフトではありますが、VBA処理やSQLを使える人でないと、生産管理システムを自作するのは難しいのが現実です。
プログラミングで開発する
自社にプログラミングができる人がいる場合は、生産管理システムを一から開発する手段もあります。
生産管理システムをプログラミングで一から開発するメリットは、自社の業務形態に合わせて細かくカスタマイズができることです。
専門的な知識とスキルは必要ですが、最も自由で柔軟な生産管理システムを構築できます。
プログラミングで生産管理システムを自作する具体例
- 入出力フォームとロジック、データベースを構築して在庫管理アプリを作成する
- 見積り、受注、出荷、売上のデータを一元化して処理できる販売管理システムを作成する など
プログラミングで生産管理システムを開発する場合は、PHPやPythonなどのプログラミング言語を扱うスキルが必要です。
PHPは動的なコンテンツの作成に向いているプログラミング言語で、生産現場における複数の管理要素を処理できます。
Pythonは組み込みアプリからディープラーニングまで開発できる、初心者向けで簡潔な仕様のプログラミング言語です。
生産管理システムを一から開発するのが不安な場合は、アクセスをプログラミングで細かくカスタマイズし、制作する方法もあります。
生産管理システムを製造業の中小企業が自作するメリット
生産管理システムを自作するのは、簡単なことではありません。しかし、自作することで得られるメリットもあります。
生産管理システムを製造業の中小企業が自作するメリットをご紹介します。
導入コストを抑えられる
既存の生産管理システム導入にかかるコストは、月額で数万円程度のものもあれば、買い切りではありますが、数百万円以上するものもあります。
多額の導入コストがかかるため、中小企業にとっては負担が大きく、なかなか踏み込めないケースが多く見受けられます。
生産管理システムをエクセルやアクセス、プログラミングで自作すれば、導入コストは高くても数万円程度で済む場合がほとんどです。
生産管理システムを自作すると、導入にかかるコストを抑えられる大きなメリットがあります。しかし、コストを考えるときは開発工数や、リスク管理などの費用も考慮しなくてはいけません。
生産管理システムを自作する場合は、想像以上に開発工数がかかったり、リスク管理のための追加費用が発生したりする場合があります。
開発工数やリスク管理などの隠れたコストを考えると、自作によるコストの方が結果的に大きくなる可能性があるため注意する必要があります。
自由にカスタマイズできる
生産管理システムを自作すると、自社に合わせてデザインや仕様などを、自由にカスタマイズできることも大きなメリットです。
自社特有の管理項目などを反映させられるため、中小企業にとっては扱いやすく、現場への馴染みやすさも期待できます。
本当に必要な機能だけを搭載できるため、ムダのない生産管理システム運用が可能です。
運用中の変更がいつでもできる
生産管理システムを自作すれば、環境の変化に合わせた機能の削除や拡張など、運用中の変更が柔軟に対応可能となります。
既存の生産管理システムの場合、機能内容の変更には追加費用がかかる場合がありますが、自作なら自社内で対応できることがメリットです。
ただし、運用中の変更を自分たちで行うことには、失敗や長期的なシステム運用停止などのリスクが伴います。
運用中の変更がいつでも適切にできるかどうかは、自社の開発者の力量に左右されることも忘れてはいけません。
生産管理システムを製造業の中小企業が自作するデメリット
生産管理システムを自作すると導入コストを抑えられたり、自由にカスタマイズできたりするメリットがあります。
一方で、生産管理システムの開発は想像以上に難しく、開発後の対応も自分たちでしなくてはいけないことが懸念点です。
生産管理システムを製造業の中小企業が自作するデメリットをご紹介します。
開発が難しい
エクセルやアクセスでの生産管理システム開発は手軽そうですが、実際に活用できるレベルのものを構築することは難しいのが現実です。
自作を試みたものの、途中で挫折してしまったり、開発しても上手く使えなかったりするケースも少なくありません。
生産管理システムを自作するときは、長期的に継続して使えるかどうかや、管理がきちんとできるかどうかにまで、着目する必要があります。
メンテナンスが必要
生産管理システムは、定期的なメンテナンスが必要です。
メンテナンスを怠るとシステムが突然使用できなくなったり、蓄積してきたデータが消えてしまったりするリスクに直面する可能性があります。
既存の生産管理システムであれば、メンテナンスまでしっかり対応してくれるため、安心して日々の業務に集中できます。
自作の場合は定期的なメンテナンスも自社で行う必要があり、常にシステムの不具合を警戒することになります。トラブルが起きた場合の対応も、すべて自社で解決しなくてはいけません。
メンテナンスやトラブルへの対応には時間がかかる場合があり、機会損失が生じる可能性が高いことは大きなデメリットです。既存の生産管理システムでは、運用後のサポートとトラブル対応サービスが充実しています。
生産管理システム開発や運用に工数をかけすぎると、全体の生産性が落ちてしまうこともあり、本末転倒になってしまいます。
開発工数や開発後の管理、メンテナンス、トラブル対応までを考えると、既存の生産管理システム導入の方が、コスト面でも使い勝手でも優れている傾向にあります。
属人化する可能性が高い
生産管理システムを自作すると、自社の開発者しかカスタマイズできないことがデメリットです。
個人が汎用性のあるシステムを作るのは難しく、操作できる人が限られる懸念点もあります。大企業であれば、自社開発でも多額の費用や人材を確保し、行うケースが多く見受けられます。
大きなスケールでマニュアル化なども前提に開発できますが、中小企業では状況が変わってきます。
中小企業で開発者が休職や退職をした場合、システム管理の引き継ぎが難しくなり、運用できなくなる可能性もあります。生産管理システムを中小企業が自作すると、属人化する傾向が強くなり、長期的な運用や管理が難しいこともリスクです。
生産管理システムを自作するかは慎重に決めよう(まとめ)
生産管理システムを自作する大きなメリットは、導入コストを節約できることです。エクセルやアクセス、プログラミングなどで自社開発するため、導入コスト自体は数万円程度で済みます。
しかし、自作する場合の開発工数やリスク管理などを考えると、結果的に自社開発の方がコスト高になってしまうこともあります。
生産管理システムには定期的なメンテナンスやトラブルが付き物ですが、それらもすべて自分たちで対応しなくてはいけないこともデメリットです。
中小企業の場合は開発自体に、思わぬ時間と手間がかかってしまったり、開発後も属人化してしまったりする懸念点もあります。
既存の生産管理システムであれば、導入コストは大きいですが、開発の手間がなく運用中も安心してすべての管理を任せられます。
生産管理システムを自作するかは、自社の開発環境や今後の展望を見据えて、慎重に決めるようにしましょう。
あおい技研では、お客様の予算に合わせて最適な生産管理システムの導入や、業務改善のご提案をしています。既存の生産管理システムのご紹介はもちろん、お客様に合った独自システムの企画や開発も可能です。
製造業の中小企業に寄り添ったご提案を得意としておりますので、ぜひお気軽にご相談ください。
今日のポイント
- 生産管理システムは自作できる
- 生産管理システムを自作する主な方法は「Excel」「アクセス」「プログラミング」を活用すること
- 生産管理システムを自作するメリットは導入コストの節約と自由なカスタマイズ、運用中の変更がいつでもできること
- 生産管理システムを自作するデメリットは、開発が難しくメンテナンスやトラブル対応も自社で行う必要があり、中小企業の場合は属人化する可能性が高いこと
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