製造業のDXに求められるデジタル人材とは?

DX(デジタルトランスフォーメーション)は、製造業において重要な課題の一つとなっています。
生産性や競争力を高めるためには、デジタル技術を使いこなす「デジタル人材」の活躍が企業にとって欠かせません。
しかし、デジタル人材はどのようなスキルや特性を持ち、どのように活かすべきでしょうか?
本記事では、製造業におけるDX推進に必要な人材のスキルと社内にデジタル人材がいない場合でも、DXの推進をするための対応方法を紹介します。

製造業のDXにデジタル人材が必要な理由

製造業の就業者数に若年就業者が少ない

「2023年版 ものづくり白書」によると、製造業における若年就業者(34歳以下)の数は減少傾向にあります。具体的には、2021年には1,045万人、2022年には1,044万人と横ばいで推移しており、34歳以下の若年就業者数も2012年以降ほぼ横ばいの状態が続いています。

また、65歳以上の高齢就業者が増加しており、2002年の58万人(全体の4.7%)から2022年には90万人(全体の8.6%)に達しています。こうした高齢化の進行により、若年層の人材不足がDX推進に大きな課題となっています。

少子高齢化の影響や3K(きつい、汚い、危険)というイメージによって製造業への関心が低下していることが、若年層の就業者数の減少につながっている可能性が考えられます。その結果、現場でデジタル技術を導入するための人材が不足しており、DXの推進が難しくなっています。

デジタル技術の導入には若年層の新しい視点と技術力が求められますが、その確保が難しい現状では、DXによる生産性向上の実現が遅れる可能性があります。この状況を改善するためには、職場環境を改善し、若者が魅力を感じる働きやすい環境作りが必要になります。

参照元:2023年版 ものづくり白書(令和4年度 ものづくり基盤技術の振興施策)

製造業の社員数当たりの生産性を上げる

製造業の競争力を高めるためには、社員数当たりの生産性向上が必要です。「ものづくり産業のデジタル技術活用と人材確保・育成に関する調査」によれば、製造業におけるデジタル技術の活用率は67.2%に達しており、多くの企業が業務工程の効率化を図るためにデジタル化を積極的に活用しています。

デジタル技術の活用後の効果としては、以下表のような成果が確認されています。これらのデータからも、デジタル技術の活用が業務効率の改善につながっていることがわかります。

一方で、社員数当たりの生産性向上は今後も重要な課題になります。そのため、デジタル技術を扱える人材の育成と確保が欠かせません。社員数当たりの生産性向上は製造業にとって、今後大きなテーマになると言えるでしょう。

項目 割合(%)
生産性の向上 55.6
開発・製造等のリードタイムの削減 41.5
作業負担の軽減や作業効率の改善 37.3
在庫管理の効率化 33.9
高品質のものの製造 31.4
過去と同じような作業がやりやすくなる(仕事の再現率向上) 30.0
生産態勢の安定(設備や装置の安定稼働など) 27.5
製造経費の削減 25.7
顧客への細やかな対応や迅速な対応 24.5
不良率の低下 22.5
業績の改善 19.7
人手不足の解消 19.4
取引先など社外コミュニケーションの円滑化 18.9
労働時間の短縮や休暇・休日の増加 18.8
社内コミュニケーションの円滑化 18.0
新製品開発や新技術開発がしやすくなる 17.8
ベテラン技術の見える化・データ化による技能継承円滑化 15.2
安全に仕事・作業ができる環境の整備 13.1
新型コロナウイルス感染症拡大とその後の社会変化への対応 12.2
取引先・販売ルートの拡大 7.7
人材の最適配置 7.1
市場調査能力の向上 4.9
狙いは特にない/効果は特にない 1.2
その他 0.6
無回答 8.3

引用元:ものづくり産業のデジタル技術活用と人材確保・育成に関する調査 | 独立行政法人労働政策研究・研修機構

DX推進に必要な人材とは?

データ分析や活用スキルを持つ人材

製造業でデジタルを活用できる人材が必要な理由は、競争力向上と生産性向上にあります。DXによって、生産プロセスの最適化や品質向上が可能になります。

例えば、センサー技術でリアルタイムに設備の稼働状況を監視し、トラブルの予防保全ができるため、無駄な停止を防ぐことができます。また、データ分析により生産計画をより正確に立てたり、顧客ニーズに合わせた柔軟な対応が可能になります。

システム思考を持つ人材

DXを成功させるためには、システム思考を持つ人材が必要です。「システム思考」とは、個々の工程や要素だけでなく全体最適を考えて、ビジネス全体を俯瞰しながら、最適解を導き出す能力を指します。製造業では、大規模なシステムを設計・運用するケースが多いため、全体を俯瞰するシステム思考が必要になります。

デジタル技術の導入による効果を最大化するには、工程設計や生産管理、品質管理など、多岐にわたる業務のつながりを考慮する必要があります。システム思考を持つことで、俯瞰して業務を見ることができるため、より効果的なDX推進が実現されます。

プロジェクトマネジメントスキルを持つ人材

DXを成功させるためには、プロジェクトマネジメントスキルを持つ人材も欠かせません。デジタル技術の導入は、部門横断的な取り組みが必要な場合もあり、複数のチームやプロジェクトを適切に管理する能力が求められます。

プロジェクトマネジメントスキルを持つ人材は、DXの目的と目標を明確に設定し、各チームとの連携を促進しながら、スケジュールやリソースを管理します。特に製造業においては、スムーズな導入と安全な運用が求められるため、プロジェクト全体を指揮し、成功に導く能力が必要です。

デジタル人材が社内にいない時はどうするべき?

自社でデジタル人材を採用してチームを作る

デジタル人材が不足している場合、新たにデジタル人材を採用してチームを作る方法があります。特に、自社の業務や製品に精通した社員で構成されたチームであれば、より現場に即した形でデジタル変革(DX)を進めることが可能です。

そのためには、ITスキルを持つ人材を新卒や中途採用で確保する必要があります。また、現在の社員にも外部研修やトレーニングを提供し、スキルを高める機会を設けることが効果的です。こうして、自社の状況をよく理解している社員をデジタル人材として育成・確保することで、DX推進がより長期的で成功しやすくなります。

外部のベンダーに委託する

自社でデジタル人材を採用するのが難しい場合、外部のベンダーにDXに必要なツール導入を委託する選択肢もあります。外部ベンダーには、デジタル技術の専門家が多数在籍しており、最新の技術を活用したソリューションを提供してくれます。この方法には、自社にスキルを持った人材がいなくても、自社の課題を伝えた上でシステム導入から運用までをサポートしてもらうことができます。

一方で、自社にノウハウが蓄積されないというリスクもあります。そのため、委託する際には、社内担当者をプロジェクトに積極的に参加させ、知識や経験を共有することが大切です。自社に必要なスキルやノウハウを着実に蓄積していくことが期待できます。

コンサルティング会社とDXを進める

コンサルティング会社と協力してDXを進めることも、有効な手段の一つです。コンサルティング会社は、さまざまな業界での経験を持っているため、各業界の課題に応じた戦略的なアドバイスを提案します。

さらに、コンサルティング会社との契約方法によっては、DXの目的からプロジェクトの進行管理、結果の評価まで一貫した支援が受けられるため、計画的にDXを進めることが可能です。自社だけではどのようにDXを進めれば良いかわからない場合、コンサルタントの知見を活用することで、スムーズにプロジェクトを進めることができます。

コンサルティング会社にDX推進を依頼することにより、社内リソースの負担を軽減しながらもDXを推進できます。

あおい技研のコンサルティングサービス

株式会社あおい技研は、製造業に特化した業務コンサルティングを提供し、以下3つの主要な領域で支援を行っています。

  1. 工場診断・製造業の業務改善
  2. 各種分析技術
  3. システム企画・開発・サポート

工場診断・製造業の業務改善では、製造現場の診断や視察を通じて得たデータを基に、お客様に改善策を提案し、業務の効率化をサポートします。

各種分析技術では、操業データなどの大規模データを活用して、業務革新に寄与する傾向を発見し、シミュレーションを通じた投資判断の支援を行います。

システム企画・開発・サポートでは、業務改善の一環としてITツールやシステムの設計・開発を行い、アナログ作業をデジタル化し、管理業務の効率化を図ります。

お試し工場診断(1日〜3日)も実施しており、どこから手を付けるべきか分からない場合でも、気軽にご相談いただけます。

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本日のポイント

  • デジタル人材の確保と育成が、製造業のDX推進において重要な課題。
  • 製造業のDX推進には、デジタル技術を活用できる若年層の人材を取り込むことが必要。
  • データ分析、システム思考、プロジェクトマネジメントのスキルを持つ人材が、DX推進の鍵となる。
  • 社内でデジタル人材を育成するだけでなく、外部ベンダーの専門知識を活用できる。
  • コンサルティング会社を活用し、戦略的なサポートを受けることで、効率的にDXを推進できる。
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