性能稼働率の求め方を初心者向けに解説【影響するロス3つ】
性能稼働率とは、設備の稼働時間に対して、設備の性能どおりに稼働した時間の割合のことです。製造業において重要な指標の一つで、性能稼働率を上げることは生産性向上に直接影響します。性能稼働率を下げる要因として一般的なのは、「チョコ停ロス」「空転ロス」「速度低下ロス」と言われる3つの阻害ロスです。
性能稼働率を上げるには、この3つの阻害ロスの低減に着目する必要があります。そのため今回は、性能稼働率の求め方を初心者向けに解説します。性能稼働率に影響するロス3つも解説するので、ご参考にしてみてください。
コンテンツ
性能稼働率とは設備の稼働時間に対して性能どおりに稼働した時間の割合
性能稼働率は設備を適切に稼働させ、計画通りの生産活動を行うために重要な指標になります。性能稼働率の求め方は、「正味稼働時間÷稼働時間」の計算式です。
稼働時間…設備が稼働していた時間
正味稼働時間…稼働時間の中で実際に生産を行なった時間
例えば、稼働時間が10時間で正味稼働時間が8時間だった場合、性能稼働率は以下の計算式で80%になります。
正味稼働時間(8時間)÷稼働時間(10時間)=性能稼働率(80%)
なぜ、稼働時間と正味稼働時間に差異が生まれるのかというと、設備稼働中にも阻害ロスが生じるからです。阻害ロスとは、設備の生産効率を阻む損失のことです。
実際に阻害ロスは、製造業において重要な管理項目である設備総合効率の阻害要因のいずれかに分類されます。一般的に「7大設備ロス」と言われ、以下の7つのロスを指します。
- 故障ロス
- 段取り、調整ロス
- 刃具交換ロス
- 立上がりロス
- チョコ停・空転ロス
- 速度低下ロス
- 不良・手直しロス
性能稼働率に影響するロス3つ
性能稼働率に影響する阻害ロス3つは、「チョコ停ロス」「空転ロス」「速度低下ロス」です。設備不良で発生するものもあれば、製品の欠陥で発生するものもあります。性能稼働率に影響するロス3つを紹介します。
チョコ停ロス
チョコ停ロスとは、「ちょこっと停止」を略した、数分から数十分程の短時間において、設備が停止してしまうロスのことで、すぐにリスタート等が可能なものです。
チョコ停の原因はさまざまですが、代表的なのは清掃不足やメンテナンス不足です。原材料の欠陥で生じることもあります。また、チョコ停には以下のような特徴もあります。
- 1日に何回も発生する
- 特別な修理は必要ない(リスタートなどが可能)
- トラブル発生から復活まで数分程度
これらの性質上、チョコ停は見逃されやすいロスでもあります。修理の必要がなく復活までの時間も短いため、あまり問題視されない傾向にあるのです。しかし、チョコ停の頻度の高さは、性能稼働率の低下に大きく影響します。
ロス発生後に修理や部品交換などで解決ができないからこそ、未然に防ぐ取り組みが大切です。チョコ停ロスを未然に防ぐためには、まずは顕在化することが鍵になります。
地道な活動になりますが、チョコ停の時間を明確にし、原因究明と改善に力を入れましょう。設備のこまめな清掃やメンテナンスを業務に取り込むのも、有効な手段です。
空転ロス
空転ロスとは、設備が空回りして、加工していないが設備が動いているロスのことです。チョコ停と同じく短時間だけ発生するロスのことで、すぐに復活する特徴があります。
空転ロスの原因もさまざまですが、代表的なのは設備不良や原材料の欠陥です。チョコ停と同じく、設備のこまめな清掃やメンテナンスで改善されることもあります。
空転ロスは設備の稼働時間中に空回りしてしまうトラブルであるため、性能稼働率低下に大きく影響します。復活が早いからと見逃さず、性能稼働率を上げるための重要な改善事案として、原因究明と対策を行うようにしましょう。
速度低下ロス
速度低下ロスとは、設備で設定されている速度よりも、速度が遅いロスのことです。生産スピードが下がるため、生産性低下の原因になります。
本来の設備の性能が発揮されていない状態であるため、性能稼働率も低くなります。速度低下ロスの主な原因は、設備の劣化です。長期間使っていたりメンテナンス不足であったりすると、設備は劣化してしまいます。
設備の劣化による速度低下ロスは、修理やメンテナンスで改善される可能性があります。ただし、状態が酷く深刻な場合は、買い替えを余儀なくされることもあります。
速度低下ロスは、そのまま放置していて改善することはありません。設備の速度が遅くなったと感じたら、早めに修理やメンテナンスを行うようにしましょう。
性能稼働率が100%を超えている状態は要注意
性能稼働率の理想の目安は、「100%に近い状態」です。ただし、100%を超えると要注意です。性能稼働率が100%を超えている状態というのは、設備が性能以上に力を発揮していることになります。
短い時間で多くの生産ができる=生産性が高い状態ともいえますが、設備には大きな負担がかかっています。場合によっては設備の操作やメンテナンスを行う従業員の負担が大きくなっている可能性もあります。
性能稼働率を上げることは生産性向上につながりますが、どこかにムリが生じていると、その状態は長続きしません。結果的に大きな故障やエラーの、原因になってしまうこともあります。性能稼働率の向上を目指すときは、設備や人にムリが生じていないか気をつけながら、取り組んでいくようにしましょう。
性能稼働率は計画通りの生産活動を行うために重要な指標(まとめ)
性能稼働率は、生産現場の設備が性能を発揮できているかを確認できる重要な指標です。性能稼働率の向上は生産性の高さに直結するため、欠かせない取り組みでもあります。
性能稼働率を上げるには、設備稼働の阻害ロスを低減させることが重要です。性能稼働率の阻害ロスとして代表的なのは、「チョコ停ロス」「空転ロス」「速度低下ロス」です。
阻害ロスの原因は、設備不良・製品の欠陥・設備の劣化など、たくさんあります。大切なのは、チョコ停ロスや空転ロスなどの小さな阻害ロスも、見逃さないことです。事前に防ぐ意識を持って、設備のこまめな清掃やメンテナンスなどに取り組んでいきましょう。
今日のポイント
- 性能稼働率とは設備の稼働時間に対して性能どおりに稼働した時間の割合のこと
- 性能稼働率に影響するロス3つは「チョコ停ロス」「空転ロス」「速度低下ロス」
- 性能稼働率が100%を超えている状態は設備や人に大きな負荷がかかっている可能性があるため要注意
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