製造業で品質管理を行うときのポイント4つ【重要性と構成する要素も解説】
品質管理とは、製品の生産過程において品質を検証し、管理する業務のことです。製造業では製品を顧客の要求に合うように、製造する必要があります。
不良品が多かったり、納期遅れが生じたりすると、顧客からの信頼を失うことになり、企業の発展や存続に関わります。そのため、製造業では顧客の要求に合った製品製造をしながら、不良品が出ないように高い品質を保ち、納期遵守も目指す必要があります。
製造業における品質管理は、そのすべてを満たすことを目標とした重要な業務です。今回は、製造業で品質管理を行うときのポイント4つをご紹介します。
製造業における品質管理の重要性や、構成する要素もご解説するため、参考にしてみてください。
コンテンツ
製造業における品質管理の重要性
製造業において品質管理が重要な理由は、信頼性にあります。製造業では顧客の要求に合った高品質な製品を製造し、決められた納期までに納品することが大切です。
品質管理を怠ると、不良品の発生率が高くなったり、納期に間に合わなくなったりと、顧客からの信頼を失ってしまいます。
顧客からの信頼がなくなれば、企業の発展はなく、存続もできません。品質管理は企業の信頼性を高め、経営を安定させていくために重要です。また、製造業における品質管理には、製品の安全性を保てるメリットもあります。
品質管理が徹底していないと、不良品が生じやすくなりますが、欠陥品の使用によって消費者が思わぬ被害を受けることがあります。
例
- 電気ストーブが発火して火事になった
- おもちゃに鋭いバリが残っており、子どもが怪我をした
- 自動車のエアバッグが異常破裂したことによって、交通事故を引き起こした など
消費者の安全を守ることは、企業の絶対的な役目です。
品質管理を行うと、不良品の発生やトラブルを事前に防げる可能性が高くなります。
製造業の品質管理を構成する要素
製造業の品質管理には、いくつか要素があります。その中でも特に重要なのは「工程管理」「品質検証」「品質改善」です。それぞれについて、詳しくご解説します。
工程管理
工程管理とは、作業の工程や手順を適切な状態にし、維持することです。納期から逆算して各工程のスケジュールを定め、業務プロセスの標準化を目指します。
具体的には、
- 正しい手順を守って作業ができるように作業手順を標準化
- 高品質な製品を製造できる人材を育成するための教育訓練
などを行います。製造現場の設備能力を維持するための、定期的な点検や見直しも工程管理に含まれます。
品質検証
品質検証とは、製品の品質が保たれているかの検査を行い、保証することです。
品質検証の検査として代表的なものには、以下の種類があります。
- 受入検査…外部から購入した原材料や部品などを受け入れ時に検査する
- 工程内検査…未完成品を製造工程の途中で検査する
- 完成品検査…完成品が十分な基準を満たしているか検査する
品質基準として用いられるのは、国内の代表的な規格である日本産業規格(JIS)や電気用品安全法(PSE)、国際規格のISO9000シリーズなどです。
また、品質検証では工程能力の監視も行います。
Cp※という工程能力指数を算出するなどして、工程が高品質な製品を製造できる能力を有しているか、確認と監査を行うのも品質検証の大切な役割です。
※Cpとは、定められた規格内で製品をバラツキ無く生産できる能力を表す指標になります。具体的には製品の寸法などの公差(規格)の幅に対し、どの程度、実測値が公差内でバラツキいているのかを比較した数値です。
品質改善
品質改善とは、不良品の再発防止のために改善を行うことです。不良品を発生させないように、未然に対処を行うことも含まれます。
まず、不良品の再発防止にはQCストーリーと呼ばれる、現状の把握、原因の分析、対策立案などの、問題解決のためのステップを活用することが一般的です。
不良品が発生した原因を突き止め、発生原因を取り除いて、再発防止に努めます。不良品の未然防止に役立つ代表的な手法には、工程FMEAがあります。
工程FMEAとは、FMEA(故障モード影響解析)を適用し、製造プロセスの問題を想定する手法のことです。
製品や製造プロセスの故障モードごとに、与える影響や発生頻度を予想し、不良品発生を未然に防ぎます。
工程FMEAの導入ステップは、以下の手順で行います。
1.工程ごとに作業を分類し、検討対象を動作レベルに細分化する
FMEAフォーマットをエクセルなどで作成し、記入していきます。FMEAフォーマットの基本項目は、工程、作業名目、具体的作業、想定されるミス、故障モード、などです。
2.各動作に対して発生しうるミスを想定し、故障モードを決定する
FMEAフォーマットの項目である、想定されるミス、故障モードを考え記入します。
例
想定されるミス:部品の取り付けが甘い
故障モード:対象部分の接触不良
想定されるミスや故障モードを考えるときのポイントは、設計上のミスではなく、工程上のミスに起因するものを考えることです。
3.故障モードに付随する項目を分析・評価する
FMEAフォーマットの項目に、故障による影響(度合い)、故障の発生原因(発生頻度)、故障の検出方法(度合い)を追加し、埋めていきます。どの項目も10段階で数値評価すると、分析がしやすくなります。
4.改善案を作成し、実行する
FMEAフォーマットの結果や数値をもとに、対処すべき問題に優先度付けを行います。優先度の高いものから改善を作成し、実施しましょう。影響度・発生度・検出度などを下げる取り組みが必要になります。
製造業で品質管理を行うときのポイント4つ
製造業で品質管理を行うのであれば、いくつか意識した方が良い点があります。製造業で品質管理を行うときのポイント4つをご紹介します。
5Sを意識する
5Sとは、職場環境の改善や維持に効果的な以下の5つの要素のことです。
- 整理
- 整頓
- 清掃
- 清潔
- しつけ
この5つの要素を現場で日常的に意識していけば、製造プロセスにおけるヒューマンエラーを抑制でき、品質管理に役立てられます。
自動車製造ラインの現場を例にすると、以下のようになります。
- 整理…使用する工具のみを準備する(未使用工具は準備しない)
- 整頓…使用する工具をきちんと並べておく
- 清掃…使用した工具は最後に汚れなどを取り除く
- 清潔…工具置き場を常に汚れなどがない状態に維持しておく
- しつけ…使用した工具はきちんと元の場所に戻すようにする など
5Sの徹底は品質管理だけでなく、作業員の意識が高まるメリットもあります。
4Mを管理する
4Mとは、品質管理を適切に行うための以下の4つの要素のことです。
- 人(Man)
- 機械(Machine)
- 材料(Material)
- 方法(Method)
この4つの要素を管理すると、製品の不良品が発生した場合に、原因を特定しやすくなります。それぞれの要素の管理方法の例は以下のようになります。
・人…正しい作業のノウハウを身に着けた作業員のみ、製造プロセスに配置する。作業員のスキルの見える化、資格制度の導入なども効果的。
・機械…設備を日常的に点検し、定期的にメンテナンスをする。
・材料…使用する材料が基準や規格を満たしているか、不良品の原因となるものが混ざっていないかを確認する。
・方法…作業標準書などを整備し、マニュアル通りに作業が行われているかを確認する。
4Mを上手に活用すると問題点が明確になり、改善のポイントも判明します。
DX化を進める
DX化(デジタルトランスフォーメーション)とは、データや最新のIT技術を活かして、ビジネスに関わるすべての事象に革新をもたらすことです。近年は製造業においても、DX化が求められ推進されています。理由は、顧客や社会のニーズの変化が、時代の変遷によって加速しているからです。
製造業で新たなニーズに対応していくためには、従来の日本のものづくり現場に多い、属人的かつアナログ的なやり方を改善していく必要があります。製造業でDX化を促進すると、品質管理における品質検査の正確性を、向上できるメリットがあります。
目視での品質検査では、人間の目では検出できないものがあったり、疲労などによる見落としが発生したりと、正確性が不安定なことが問題でした。DX化の一環として、AIやIoTといった最先端テクノロジーを品質検査の現場に導入すれば、正確性は大きく向上します。
AIによるディープラーニングを活用し、品質検査を自動化している製造業の企業も少なくありません。DX化は、品質管理をより効率的かつ安定的に行うために効果的な手段の一つです。
手順書を整備して業務標準化を目指す
製造業の大きな問題や課題に、作業者によって業務にバラつきが生じる点があります。
作業者によって業務にバラつきが生じるデメリットは、工程の停滞を引き起こしたり、属人化が進んでしまったりすることです。品質の低下や、不安定性を招くことにもなります。
作業者によって業務のバラつきが生じる点を改善するためには、手順書を整備して業務標準化を目指すことが有効です。
業務プロセスを言語化してマニュアル化し、ベテラン作業員のスキルやノウハウを形式知に落とし込みます。
結果、属人化しがちな各業務を標準化でき、安定した品質の確保が期待できます。
製造業において品質管理はとても重要(まとめ)
品質管理は、製品の生産過程において品質を検証し管理する業務のことですが、製造業においてとても重要な役割を担っています。
なぜなら、品質管理の徹底は顧客の満足度に直結し、製造業の企業の発展に貢献するからです。品質管理には不良品の発生を防ぎ、製品の安全性を保てるメリットもあります。
製造業の品質管理を構成する主な要素は「工程管理」「品質検証」「品質改善」です。
これらの要素によって、工程の中で高品質が保たれ、確かなものであることを検査で検証し、保証することができます。
製造業で品質管理を行うときは、5Sを意識して職場環境の改善をしたり、4Mを管理して不良品発生の原因を特定したりすることがポイントです。
近年注目されているDX化の促進や、手順書整備による業務標準化でも、品質管理を向上できるためおすすめです。
今日のポイント
- 品質管理とは、製品の生産過程において品質を検証し、管理する業務のこと
- 製造業において品質管理は、顧客からの信頼性を高めるために重要
- 製造業の品質管理を構成する要素は「工程管理」「品質検証」「品質改善」
- 製造業で品質管理を行うときのポイントは、5Sの意識、4Mの管理、DX化の促進、手順書整備による業務標準化の4つ
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